418 サ メ ビ タ キ

 灰褐色の小型の鳥。黄褐色の目立たない翼帯がある。下面は胸より下は暗褐色で、腹の中央と下尾筒は白色である。日本には夏鳥として5月上旬から中旬ごろ渡来し、標高1,500mぐらいから森林限界までの亜高山帯の針葉樹林に生息する。主に秋期(9月上旬から10月下旬ごろ)に渡去する際、平地の林に旅鳥として飛来することがある。単独あるいは番で生活し、樹梢近くにいて、飛来した昆虫を飛び上がって捕えては、またもといた枝にもどるという習性がある。5月から6月ごろまでのあいだ、囀りを聞くことができるが、このほかの時期に鳴くことはない。亜高山帯の林で営巣し、巣は主にシラビソ・カラマツなどの針葉樹の梢近く、地上2〜20mぐらいの高さの水平な枯れ枝の上に造られる。サルオガセを主材とし、内部に少量のシラビソの枯葉などを敷いた、巣の外径10cmぐらいの浅い巣である。産卵期は6〜8月で、1巣の卵数は3〜5個である。卵は青白色または淡青緑色で、淡紫褐色の不明瞭な小斑が散在する。

 これまで本種の繁殖地は本州中部以北の亜高山帯と一部北海道の平野とされている。北海道における繁殖地は、大雪山系、日高山脈を中心に散在し、平野部のものも数ケ所見られる。本州における繁殖地は、中部山岳地帯と富士山に集中している。他の地域でほとんど繁殖が見られないのは、亜高山帯の植生など本種の繁殖環境の条件を満たす高山がないためであろう。このことは紀伊山地にBランクが示され、これまで定説となっていた地域より南でも、高山においては繁殖の可能性があることが明らかになっていることからも裏付けられよう。一方、福島県内にCランクが1ケ所示されているが、阿武隈山地の北端にあたるこの地域には、標高800m程度の山しかなく、本種の本州における繁殖地の標高としては余りに低いことから、実際には繁殖の可能性は薄いと思われる。今回の調査により新たに四国における繁殖が確認されたことは注目される。今回繁殖が確認された地域は、剣山国定公園付近の標高1,700m以上の山々が連なるところである。これまで本種は、旅鳥として四国に渡来することが知られており、新たに繁殖地を広げたものか、以前から繁殖していたのが今回の調査によって発見されたのかは明らかではない。いずれにしても、繁殖に適した環境があれば、これまでの定説によらず繁殖地が広がっている可能性があることを示唆するものとして注目される。

 

Aランク

Bランク

Cランク

合 計

サブメッシュ数

17

31

11

59

構 成 比(%)

28.8

52.6

18.6

100.0

 

繁殖分布地図索引へ