414 キ  ビ  タ  キ

 スズメよりやや小さい。日本ではオオルリと並んで、姿・声ともに大変美しい鳥である。♂と♀では色彩が異り、♂は上面黒く翼には背面から見て逆八の字形に白斑がある。眉斑と腰は黄色で、喉から胸はオレンジ色がかった黄色で腰は白い。♀は♂に比べ地味で、全身ほぼ一様に緑褐色で、腹部は汚白色であり、腰から尾の上面にかけてやや赤味がある。屋久島から琉球諸島にかけて繁殖する亜種はリュウキュウキビタキと呼ばれ、♂の上面の黒い部分が淡色で、♀に似たオリーブ褐色となっている。また、普通のキビタキの♂でも生れた翌春の個体では、上面の色彩の淡い幼鳥羽を残している場合がある。ピッピッ・クルルッと地鳴きし、囀りはピッコロ・ピルルッ・オーシツクツクなどを繰り返す美しい声である。日本には夏鳥として4〜5月頃渡来し、よく繁った広葉樹林に多い。低山帯から亜高山帯下部にかけて生息するが、北海道では平地の林にも生息する。薄暗い場所を好み、♂は囀る場合でもオオルリのように目立つ場所にはあまり出て来ない。昆虫類を主食とするが、秋には植物の種子なども食べる。5〜7月に樹洞や、時には巣箱などに枯葉やコケなどで巣を作り、褐色斑のある卵を4〜6個産卵する。春・秋の渡りの時期には、市街地の林でも普通に観察される。アジアの東北部で繁殖し、冬期にはマレー半島などの東南アジア方面に渡る。

 今回の調査では、北海道から八重山諸島までほぼ日本全国で生息が確認された。北海道では平地から山地・内陸部・海岸部と様々なメッシュに生息し、個体数も多く、環境選択の幅が広いようである。利尻島でも繁殖の可能性がある。本州以南では各地の山地で普通に生息するが、平野部では出現メッシュが極めて少くなる。また、本州北部・中部では生息メッシュの分布密度が関東平野では低いのに比べて全般にやや高い。関西から九州にかけては、四国東部でやや高い他は概して低く、特に関西と九州地方では分布域が限られ、局地的な鳥のようである。島嶼部では、佐渡・隠岐で繁殖の可能性があり、対馬では繁殖が確認されている。薩南諸島以南では、屋久島でBランク、西表島でB・Cランクがそれぞれあるが、その間の島々では生息が確認されたメッシュが全くなく、南西諸島では予想外に少なかった。リュウキュウキビタキについては、生息状況のさらに詳しい調査が今後必要であろう。

 

Aランク

Bランク

Cランク

合 計

サブメッシュ数

68

970

72

1,110

構 成 比(%)

6.1

87.4

6.5

100.0

 

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