306 ヨ   タ   カ

 上面は、頭から背面、腰、上尾筒にかけ褐色をおびた灰色で、黒色の斑紋がある。さらに背面から上尾筒においては、各羽の中央にある黒色の軸斑の左右にところどころ橙色をおびている部分がある。下面は、胸は黒褐色、腹、脇は淡赤褐色で黒褐色の細い横しまが多数ある。尾は黒褐色で8〜9条の灰褐色の横しまがあり、♂の外側には三角形の白色斑がある。また翼の初列風切には白色の斑紋があり、飛翔時に現われる。♀ではこの白斑が少ない。嘴は小さいが扁平で、開けると大きく、色はほぼ黒色。脚は短く褐色。翼および尾の白斑部以外は♂♀同色、同大。鳴き声はキョ、キョ、キョ……と単調な連続音。夕方から夜にかけてと、明け方によく鳴く。夏鳥として、全国のおもに標高2,000m以下の山地帯へ渡来する。本州中部の北アルプス地方では標高500〜1,500mくらいの所に多く、富士山などでもほぼ同標高に生息している。東京では標高150mぐらいの岳陵部から標高2,000mぐらいの亜高山帯まで生息しているが、やはり標高500m以上の山地に多い。東北地方では低山帯、北海道では平地から山麓部に多い。生息環境は、いずれも草原や灌木の散在するような落葉広葉樹や針葉樹の森林である。通常単独で行動することが多く、日中は樹間で休止するが、その止まり方は普通の鳥と異なり、枝に平行に、胸を枝に密着させるため、一見、木のこぶのように見える。採餌は夕方から夜にかけて行ない、おもに飛翔中の昆虫類(ガ、ゴミムシ、コガネムシ、ゲンゴロウ、カ、トビケラ、カメムシ)などを捕食する。

 営巣は草原や疎林中の地上で行ない、特に巣らしい形は造らず、地上に直接産卵し、抱卵する。その際、体色の褐色、黒、灰色、燈色などが複雑に入り組んだ模様は、地上の枯葉に酷似し、保護色となる。そのため親鳥は人などが近づいても、なかなか逃げないことが多い。産卵期は5〜8月で、6月ごろがその最盛期である。灰白色の地に灰褐色などの斑点のある卵を2個産む。19日ぐらいで孵化し、その後6日ぐらい同所にとどまる。

 本種の繁殖分布は、九州以北の全土にわたる。北海道では、やや個体数が少なく、分布もまばらである。本州では、低山部以上の山地に普通に生息しているが、亜高山〜高山帯にはいない。四国、九州でも山地に普通の鳥である。各地の島でも渡来記録はあるが、現在のところ繁殖記録は報告されていない。

 

Aランク

Bランク

Cランク

合 計

サブメッシュ数

65

391

60

516

構 成 比(%)

12.6

75.8

11.6

100.0

 

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