283 カ ラ ス バ ト

 全身石板黒色をし、頭部から胸、背にかけて紫や緑などの金属光沢を帯びた大型のハト類である。本州、四国、佐渡、隠岐、九州、対馬、五島列島、男女群島、屋久島、種子島、伊豆諸島、琉球列島の奄美大島、沖縄、座間味島、宮古島、石垣島、西表島、与那国島、小笠原諸島などに分布する。このうち、本州では紀伊半島東部の島嶼や神奈川、千葉、静岡の各県、四国では香川県、九州では福岡県の玄海灘の島嶼や宮崎県大島など主に太平洋岸の温暖地域に生息するが、最近ではみられなくなった地域が多い。現在のところ、主要な生息地はすべて島嶼である。シイ、タブ、バリバリノキ、クスノキ、ヤブツバキなどからなるよく繁茂した常緑広葉樹林に生息する。ツバキ、シイ、タブノキ、クロガネモチなどの植物の実を主食とし、樹上のほか、地上でもよく採餌し、繁殖期には番で生活しているようであるが、植物の結実期などには数羽から数十羽の小群を形成することもある。常緑広葉樹林中のうっそうと茂ったシイ、タブなどの大木の樹枝上や樹洞内に、枝を組みあわせた浅い皿型のかなり大きな粗雑な巣をつくるが、稀れには地上の叢中の岩石上に営巣した例もあるという。福岡県沖島ではカラスバトの優占度は高く、19巣の調査では、営巣樹種はツバキ、マサキ、アオキであって、岩の隙間の1例があり、巣の高さは2〜5mで、2〜3mの高さに多い傾向がある(環境庁 1975)。産卵期は2〜9月で、5〜6月に多いといわれ、1腹の卵数は1卵である。繁殖生活の詳しいことは不明である。

 今回の調査では、本州南部から琉球列島にかけて生息が記録された。日本海側では九州北部の1サブメッシュで繁殖が確認されたほか、隠岐を主とする山陰中部沖と対馬を主とする九州北部沖で繁殖の可能性が示唆された。一方、太平洋側では記録が多く、四国南西部、九州南東部、奄美諸島で繁殖の可能性が示され、琉球列島北・中部の7サブメッシュで生息が確認された。また、八重山諸島の1サブメッシュでは繁殖が確認された。これからみると、本種の繁殖分布は局地的であり、日本海側では山陰沖以西、太平洋側では四国南部以南ということになる。しかし、本種の生息地は島嶼が主であり、今回の調査は島嶼についての調査を特に行なっていないので、既知の生息地について全ては調査しておらず、また繁殖の確認の困難な面が多いところから、実際の繁殖分布とはやや異なった分布結果を示していると思われる。とはいえ、繁殖分布が西日本以西であることは疑いないだろう。

 

Aランク

Bランク

Cランク

合 計

サブメッシュ数

2

8

7

17

構 成 比(%)

11.8

47.1

41.2

100.0

 

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