164 バ      ン

 北海道、本州、四国、九州の全土に夏期生息する。従来の図鑑、文献等では夏鳥又は本州以北では夏鳥となっているが、関東地方以南では周年生息している。従って北海道、本州北部では夏鳥である。冬期大部分のものは台湾、中国南部、インドシナ、インド東部等に渡る。大きさはクイナより大きく、キジバト大であるが太っているので大きく見える。全体黒っぽく見え、足が大きい。額と嘴は赤色で嘴の先は黄色、体側の白色斑と下尾筒の三角形をした白斑が遠方からでもよく見える。幼鳥は全体的に褐色である。水田、アシ原、湖沼畔等にいて、草かげにかくれる性質はあるが、クイナ類に比べるとアシ原や草むらからずっとはなれた見通しのきく場所で餌を取っている事があり、よく見られる。尚、本種は湿地ばかりでなく干潟に出ている場合もある。又水面に出て頭を前後に振りながら泳いでいたり、水にもぐる事もある。水面より飛び上る時は、足をばたばた水面をけってから飛び立ち、足をだらりと下げて低空を飛び、すぐ近くにおりる事が多い。河川、湖沼、蓮田、アシ原、ガマ等の生えている湿地を好み、アシ、マコモ、イ、ガマ等の草むらや水田に営巣する。巣は枯れ葉や青葉を積み重ねた巣とガマ等の株間やイネ株の間等に巣を作る場合がある。繁殖期に多分♂と思われる個体同士が足を使ってけり合いをしているのを何回か見たことがある。産卵期は5〜8月であるが中には、11月になっても産まれたばかりの雛をつれている個体を見る事がある。従って、繁殖は1回だけでなく、2回以上の個体があるものと思われる。卵の数は普通5〜10個程度である。卵の色は淡黄褐色、灰緑色で濃淡の褐色等の小斑が全面にあり、♂♀共に抱卵する。餌は植物質が主でタデ、イネ科の植物の種子や若芽等を食べ、動物質では昆虫類等を食物としている。

 従来より、全国から繁殖の記録はあったが、今回の調査でも全国から繁殖が確認された。繁殖の確認が100ケ所以上もあり、個体数が多い事もあるが、独特のクルルッとなく鋭い声がしばしば聞こえるので、繁殖の確認には都合の良い鳥の一つである。又幼鳥と成鳥とで明らかに体色が異なる事も、繁殖確認には都合が良い。本土より南の沖縄本島、先島諸島の宮古島等でも繁殖が確認された。又徳之島では繁殖の確認は出来なかったが、繁殖の可能性のあるBランクとなった。屋久島、奄美大島等では生息を確認したにとどまった。

 

Aランク

Bランク

Cランク

合 計

サブメッシュ数

171

100

77

348

構 成 比(%)

49.1

28.7

22.1

100.0

 

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