147 ヤ マ ド リ

 全長は♂1,250mm、♀は550mm。キジとほぼ同じ大きさであるが、♂では尾が長い。全身、赤銅色あるいは赤褐色。下面はやや淡色。体中に褐色の縦斑があり、肩、胸、脇に白色の羽縁を持つ。腰は白っぽい。目の周囲は赤く、尾は非常に長く、体の二倍近くあり、黄褐色の地に褐色、黒色、白色の縞模様がある。♀は体がやや小さく、尾は楔形で短かい。色は♂に似ているが、キジの♀よりも赤味が強く、灰黒色がかっている。また目のまわりが赤く、飛ぶと尾の先端に白色部がある。

 九州、四国、本州に分布するが、繁殖する地域によって色彩が異なり、5亜種から成っている。主として、標高1,500m以下の山地に留鳥として生息し、東北地方では、平地の人家付近にもいる。積雪の多い地方にも留鳥として生息する。薮、雑木林、植林地などに棲むが、渓流畔のスギ、ヒノキ林やシダの密生する低木林に多い。夏は、山地のブナ、ナラなど落葉広葉樹林の下草の間で餌を探すことが多く、秋から冬には、朝夕に、木の梢で、木の実をついばむこともある。また、冬は、山麓、山腹の渓流畔にあるスギ、ヒノキの暗い林の薮などで群をなし、地上で採餌する。普通は、地面にさわらない程度に尾を下げて歩くが、走る時は尾を斜め上に持ちあげる。草むらにうずくまって潜んだ時は、人などが近くを通るまで飛び立たない。飛行は短い翼を激しくはばたき、一気に谷沿を飛ぶ事が多い。普通はあまり鳴かないが、繁殖期に♂は、ククククと鳴く。この他、両翼を打振ってドドドドド、とドラミングをする。一夫多妻で四季を通じて群生する。餌は、植物質が多く、種子、芽、花穂、花、などいろいろな部位を食べる。動物質としては、各種昆虫類、クモ類、マイマイ、ナメクジなどを食べる。

 林の内で、木の根元や石の陰、草むらなど地上に窪みを作って巣とし、産座には、針葉樹、広葉樹の葉や枯草を敷き、直径20cm、深さ9cmぐらいである。産卵期は4月上旬〜6月頃。卵は淡黄褐色無斑、46×35mm、一腹卵数は7〜13個。早だけが抱卵し、孵化日数は24日(飼育例)。

 今回の調査では、本州、四国、九州のほぼ全都府県で生息が確認されたが、このうち、確実に繁殖の記録は92サブメッシュあった。5亜種のうち、九州南部に生息するコシジロヤマドリ、九州北部に生息するアカヤマドリなどは、特に減少が著しいという。種と種分化の問題を研究する上で貴重な実例である本種の各亜種を、野生の個体群として保護して行く事は大切な事である。本種の繁殖習性、生産性等の問題を解決して行く事が、かつて、歌に詠まれ、日本人に親しまれていた、ヤマドリの保護にとって基本であることを忘れてはならない。

 

Aランク

Bランク

Cランク

合 計

サブメッシュ数

92

236

102

430

構 成 比(%)

21.4

54.9

23.7

100.0

 

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