102 キンクロハジロ

 全長約400mmの小型の潜水ガモ。♂♀とも冠毛がある。♂の冬羽は、全体に黒っぽく、脇腹だけが白い。背中の黒と脇腹の白のコントラストが明瞭。嘴は、灰青色。虹彩は金色。♀は、全体に黒褐色で、上面で濃く、下面で淡いがその区別は不明瞭。短かい冠毛があり、虹彩は金色。嘴は、灰青色で基部に白斑のあるものもいるが、ふつうは無い。

 飛行は、飛び立ちに助走を必要とするが、直線的に飛び、早い翼動により、翼からきしみ音を発する。人には割合に良く馴れ、ヨーロッパの公園では、餌をもらいにくる。ユーラシア大陸の北部、北緯50度以北の地域に繁殖するものが多く、西部ヨーロッパ、アフリカ、チベットから東南アジア、日本で越冬する。日本付近においては、東北シベリア、カラフト、カムチャッカ半島、千島列島、および北海道で繁殖する。

 普通は淡水を好み、湖や川などの深い所で巧みに潜水して採餌するが、多くは、75cm〜1.1cmの水深であるという。雑食性で、水底にあるものを潜って捕ることが多く、水面や地上の植物をとることはめったにない。主として、軟体類、甲殻類、双翅目の昆虫とその幼虫、小魚、魚卵、カエル、貝などの動物質を多く食べる。また、植物質としては、エビモ、ギシギシ、アオウキクサなどを食べる。

 繁殖は、6〜7月頃に、水辺の草むらに、アシやイグサの葉や茎を使って窪みを作り、綿毛を敷く。水面に島がある場合は、その島に巣を作ることが多い。巣の直径は20〜25cmで深さは7〜10cm。巣作りは♀が行ない、巣場所近くの巣材を集め、体をゆすって窪みを作る。卵は、緑灰色。59×41mm、53g。一腹の卵数は8〜11個。14個を越えるものは、♀二羽が産卵したものと思われる。孵化日数は25日。抱卵は♀が行い、巣を離れる時は、綿毛で卵を覆う。雛は早成性。独立に45〜50日を要する。

 本種の繁殖については、北海道塘路湖及びサロベツ原野が知られていた。今回の調査では、十勝川流域とサロベツ原野で、それぞれ繁殖の確認と、その可能性ありが記録された。また、石川県を含む15のサブメッシュで繁殖期の生息が確認された。北海道のものは、本種の繁殖地としては、南の方に属するものであり、さらに多くの場所で繁殖が記録される可能性がある。石川県と兵庫県のものは越夏個体と思われる。

 

Aランク

Bランク

Cランク

合 計

サブメッシュ数

1

1

15

17

構 成 比(%)

5.9

5.9

88.2

100.0

 

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