086 マ  ガ  モ

 ♂の冬羽では、頭は緑黒色、首に白い輪、胸は栗色、背は淡黒色で、体は灰色。尻の部分は黒く、先端の小羽は巻上がっている。嘴は黄色。♀は、全体黄褐色で黒褐色の斑点がある。尻は白く、嘴は橙色である。♂のエクリプスでは、全体として♀に似るが、黄色の嘴が目立ち、頭部が暗色で、顔や首が灰色がかっているなどで、見分けられる。全長590mm。

 生息地は、非常に広い範囲にわたっており、淡水域から、塩水の入る河口、湾、海にも出る。主に淡水を好み、広々としたアシなどの茂っている場所に集まる。人間に対して、警戒心が強く、給餌を受入れることは、稀である。

 採餌法は、その場所の環境と餌の多募により、水面をペチャペチャしたり、逆立したり、潜ったりする。成鳥は、めったに潜らないが、雛は、4〜7週目位の期間には良く、潜って餌を採る。基本的には、雑食性であり、種子を多く採る。春先には、種子や、越冬した緑色植物、夏にかけては、昆虫の幼虫など、動物質を多くとり、秋から冬にかけては、種子が大部分を占める。夜間、水田で採餌することが多い。

 繁殖期は、緯度と標高によって異るが、大体は4〜7月。営巣地は、海抜の高い所を好み、2,000m以上の所にも多い。巣は、水辺あるいは水からかなり離れた地上に、小枝や枯葉などで作り、産座には多くの綿毛をしく。卵は、鈍楕円形。淡緑褐色で、57×41mm、51g。一腹卵数は、9〜13個(4〜19個)である。普通は、毎朝一卵を産む。孵化日数は、27〜28日。抱卵は、♀が行い、初期には、♂がそばにいる。♀が巣を離れる時には、綿毛で卵を覆う。孵化は同時性で、24時間以内のずれで、一腹の卵が孵化する。卵殻は、巣に残される。雛は、早成性。

 今回の調査では、新たに広島県、山口県、福岡県から、繁殖又はその可能性の記録が報告された。以前、関東以西の平地で繁殖するものは、ナキアヒルとされていた。しかし、ナキアヒルとマガモの視認のみによる識別は、困難であり、かつ、ナキアヒルの定義として確立したものはない。従って同一種として扱ってさしつかえないと考えられる。

 今回の調査で報告のなかった、対馬、南大東島では、過去に繁殖が記録されているので、西日本各地のマガモとナキアヒルの問題と合せ、これらの離島に於ける、マガモの繁殖生態の解明が急がれる。

 

Aランク

Bランク

Cランク

合 計

サブメッシュ数

25

26

47

98

構 成 比(%)

25.5

26.5

48.0

100.0

 

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