〔6〕 植生及び植生自然度の集計手法について

 

1.メッシュ・データ化の手法

 植生のデータ化については、行政管理庁所管統計審議会標準メッシュを使用して行った。各作業の詳細は次のとおりである。

(1)メッシュの規格

経度45秒、緯度30秒の経緯線で区画された方眼とした。この方眼を作成するにあたっては、国土地理院発行の5万分の1の地形図の1図幅を縦横それぞれ20等分して得られた。各ユニットは、その面積が緯度によって異なるものであるが、ほぼ約1平方キロメートルである。なお、5万分の1地形図、1図幅あたりのユニット数は、400をもって構成し、図幅の作図上の都合で集成されているもの等については、所定の位置におけるメッシュとして、よみとりを行った。

(2)メッシュ化作業

(1)によるメッシュの規格に基づき、5万分の1の各地形図が属する各緯度毎(各緯度によって,ユニットの形が変化する。つまり北へ向うほど、北半球では梯形の幅がせばまり、面積が小さくなる。例えば宗谷岬付近では5万分の1の地図1図幅分が約360平方キロメートルに対して与論島付近では約460平方キロメートルに及ぶ。すなわち、宗谷岬付近においては5万分の1図幅はたてが37.031cm、よこが38.945cmとなり、各ユニットではたてが1.852cm、よこが1.947cmとなる。それに比べて与論島では、それぞれ36.919cmと49.605cm、1.846cmと2.480cmになる。つまりたての辺長では,図上誤差がわずか0.112cmであるのに比べ、よこの辺長では10.660cmのひらきを生ずる。)にその緯度を代表するメッシュよみとり用マスクを作成する必要があり、東京、大阪等を含む北緯36°前後にかかる地域は、関係する5万分の1図幅が多いので、よみとり用マスクを作業人員に応じて多く作成した。よみとり用マスクはあらかじめ選定した約160種の5万分の1地形図にメッシュを整図しておき、できあがった地図に伸縮の少ないポリエステル・フイルムをオーバレイして、インキング・トレースを行った。

(3)メッシュのコード番号

メッシュのコード番号は次のとおりである。

○ 全体を8桁の数で表示する。

○ 初めの4桁は20万分の1地勢図の位置表示番号とする。

(そのうち左2桁は各図の南端緯度を1.5倍にした数字であり、右2桁は各図の西端経度から100を引いた数字である。)

○ 次の2桁は20万分の1地勢図による該当2.5万分の1地形図の位置表示番号とする。

○ 最後の2桁は2.5万分の1地形図による位置表示番号とする。

○ メッシュの原点は、メッシュの左下端(西南端)とする。

(4)植物群落のコード番号

各位にあたる数字ないしは記号が群落の性格を表わすこと、新たに作業中に植物群落が追加される場合、その群落のコード番号が、関連した性格の部位に配列されることが可能であることなどを考慮して、コード番号の決定を行った。植物の群落型とコード番号(ローマ字を含む)の配列の考え方は次のとおりである。

ア コード番号の配列は、3つの数字及び英文字の組合せとした。

イ 左端の数値は、植物地理学上の気候帯、土壌的要因、人為的攪乱の有無及び程度などの区分を示すものである。

ウ 中位の数値は、群落の相観的な優占種を中心とする群落単位を示すものである。

エ 右端の数値は、ウのうちで群落組成の異なるものないしは、性格の違いが区分しうるものである。

オ 以上の3つの区分上、各位の性格が10以上に細区分される場合には、10以上の数字については、英文字に変換するものとし、コード番号は常に3つの数記号で表示するものとした。(これはコード番号の桁数が多くなると、メッシュ解析作業に際して、読み取り及び表記上煩雑で誤差を生じ易い事、さらにコンピューター操作上のディメリットなどを是正する為である。)

なお、アルファベットは数字や各文字間のミスを生じないよう特に気をつけ、次のように表示した。

(5)メッシュ読取の手法についての検討

植生図における群落型の分布を、メッシュ表示に変換するに当って、いく通りかの読み取り法について検討し、その精度等について考察した。

ア 各手法及びその特徴

(ア)多面積群落選択法

メッシュ内において、最も面積の大きい群落型で代表する。同面積の場合には自然度の高い群落型で代表する。この場合、同ランクの時には、コード番号の若い群落型で代表する。

特徴; 一定以上のまとまった面積を持たない群落型は欠落する。

(イ)植生群落選択法

メッシュ内において、最も自然度の高い群落型で代表する。同ランクの場合には、面積の多い方を取り、さらに同面積の場合には、コード番号の若いもので代表する。

(径3mm以下の群落は無視する)

特徴; 局地的な、特殊群落も拾われる半面が必要以上に大きくなる。

(ウ)交点選択法

メッシュ内の中心点に位置する群落型で代表する。

特徴; 偶然性が最も強い。

(エ)小円選択法

メッシュ内の中央に直径5mmの円(約5ha)を設定し、その円内において多面積を占める群落型で、そのメッシュ全体を代表する。同面積の場合は自然度の高いものを取り,さらに同ランクの場合には、コード番号の若い群落型で代表する。

特徴; 3の偶然性を是正し、1における欠落を防止するものである。

イ ケース・スタディ

以上の4手法について、平地から山岳地に至る植生の性格の異る次の3図幅を用い作業を行った。

○ 古川

(宮城県)

古川市の市街地や大小の集落地を中心に水田地帯が広がり、周辺に丘陵性の里山が位置している。

○ 岩ケ崎

( 〃 )

面積の多くが、100〜300mの低山地によって占められており、これらの谷あい及び開口部に、水田、集落が立地している。

○ 栗駒山

( 〃 )

栗駒山(1,627m)をはじめとして、面積の多くが、400〜500m以上の山地によって占められており、谷あいに小規模の水田と集落が立地する。

植生図に透明メッシュ・マスクをかけ、以上の4方法での群落型の読み取りを行い各々について各群落型ごとのメッシュ数を集計し、これに各図幅の1メッシュ当りの面積を乗じたものと測定による当該群落の面積とを比較した。

なお面積の測定は、日本林業技術協会発行の点格子によった。

その結果、(ア)、(イ)については当初から予想されたとおりいちぢるしい片よりをみせ、(ウ)、(エ)については、ほぼ同様の結果であった。これらの結果を自然度判定委員会にはかったところ、(ア)と(ウ)の長所をあわせもった(エ)、すなわち小円選択法によって、若干の修正を加え作業を行うこととなった。

ウ 小円選択法によるメッシュ変換の基準

(ア)あらかじめ、ポリエステル・フイルム上の各メッシュ中心に直径5mmの円を整図しておき、その円内において多面積を占める群落型で、そのメッシュ全体を代表するものとする。

(イ)小円内において、2つ以上の群落型がほぼ等面積を占める場合は円心に位置する群落型で代表するものとする。

(ウ)さらに(イ)において、円心上に群落の境界が位置する場合は、当該ユニット全体で、最大面積を占める群落型で代表するものとする。

(エ)水面についても群落型と同様に取り扱うが、以上の手法で、水面と評価されたユニットは空白として線でかこみ、チェックをできるようにした。

なお、読み取りのミスをふせぐため内水面には・印を記入することとした。また地図上水面であっても、水辺植物群落及び沈水植物群落などの表示のあるものは、その群落で読み取ることとした。

(6)都道府県境の調整

都道府県境はメッシュの各ユニットにおいてどこに属するかをあらかじめ、ポリエステル・フイルムのメッシュ(マスクという)をオーバーレイして面積の多い方を読み取って、台帳に色鉛筆でその境界が明らかになるよう表示した。

 

2.集計図表の作成方法

 各集計図表の作成方法、作成内容の概要は次のとおりである。

(1)植物群落集計表

植生図から読取られた各メッシュ別の代表群落は、コード化されたのち都道府県別に植物群落メッシュ・データ・ファイルへ収録されている。このファイルから都道府県別・植物群落別に該当メッシュ数を集計したものが植物群落集計表である。都道府県別に集計したのち、さらに、これらを全国10地域別に集計した。

(2)植生自然度集計表

植物群落メッシュ・データ・ファイル上に収録されている植物群落コード、及びその自然度への対応表(植物群落から植生自然度への変換基準)によって、各メッシュ別に自然度を判定した。この結果を、自然度の段階別、都道府県別に該当メッシュ数を集計し、植生自然度集計表とした。さらに、これを全国10地域別に集計し、併せて自然度別の構成比を算出した。

(3)植生自然度メッシュ・マップ

植生自然度メッシュ・マップは、各都道府県における自然度の分布を地図形式でメッシュ毎に表示した図である。ここで採用した基準メッシュは行政管理庁所管の統計審議会で1969年に答申された方法に基づいている。

各メッシュは、約1km×1kmの矩形で、これに1つの自然度が定義され、このメッシュが地図状に東西南北方向へ配置されている。また、都道府県別のメッシュ・マップ上には、各メッシュの地形図上での位置を把握するために、北端及び西端に座標の目盛りを付している。植生自然度メッシュ・マップは、植物群落メッシュ・データ・ファイル上に記録されている植物群落コードから変換基準表を介して直接植生自然度に読み替えられ、また、植物群落コードの記録位置からそのメッシュ・コード(8桁)を決定することにより座標を求め、これらのプロセスによって直接地形図状に展開されて作成される。メッシュ・マップでは、基準メッシュ(約1km×1km)に1つの自然度値が対応し、これは数字で次のようにマップ上に表示されている。

(自然度の値)

1

2

3

4

5

6

7

8

9

10

(マップ上の表示)

1

2

3

4

5

6

7

8

9

0

マップ上では、各メッシュが実際の相互の位置関係を保持するように配置され、その自然度を表わす数字によって表現されている。また、マップ上に表示された自然度の値をもつようなメッシュの実際の位置は、そのメッシュ・コードにより定義されるが、このメッシュ・コードの値は、マップ上から次のようにして識別することが可能である。

上記の図で、自然度6の値をもつメッシュの位置はメッシュ・コードで決定し、このメッシュ・コードはこの場合、

によって定められる。

 

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