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日本鳥類目録
1991年レッドデータブック掲載種
和名索引


鳥類概説

鳥類は爬虫類を祖先として進化したと考えられている動物群で、脚に鱗をもっていたり卵を産むなど爬虫類と共通する特徴をもっているが、 進化の過程で前肢は翼となって飛ぶようになり、体は羽毛で覆われるようになった。 1億5000万年前には、このような特徴をもった始祖鳥が出現した。 その後一部の鳥類の翼は二次的に退化したり鰭状になったりしたが、多くは翼を使って飛翔や遊泳をする生活に適した形態になった。 そのような特徴として顕著なのは、流線型の体形や体の軽量化である。 体を軽くするため、消化管が短くなる、全体に骨が薄くなる、翼や肢の骨は含気化したり中空になるといった形態を獲得した。 ただし、骨が薄くなっても癒合が進むなどして強度を保っている。

鳥類は新生代に入ると、哺乳類とともに繁栄し、ほぼ世界中に分布するようになり、現生の鳥類は約8,500種といわれている。 日本鳥類目録改訂第6版によると、これらのうち、わが国で記録されているのは542種である。


●日本の鳥類相の特徴と現状

日本列島は動物地理学上では旧北区(トカラ列島以北)と東洋区(奄美諸島以南)に属し、これらの動物地理区との共通種が多い。 しかし、 日本は島国であること、 南北に長く、植生帯も南からマングローブ林、常緑広葉樹林、落葉広葉樹林、常緑針葉樹林と多様であること、 山地地形が多く国土面積の約60%が森林である といった地理的条件により、鳥類相はいくつのかの特徴をもっている。

まず、島として隔離したため日本固有の種・亜種がおり、とくに琉球列島や小笠原諸島にはこれらの島にしかいない種がいる。 日本が南北に長いことを反映し、南方系・北方系両方の種が生息しており、主に温帯に位置するために、留鳥より冬鳥、夏鳥、旅鳥といった渡り鳥が多い。 また、森林面積が多いため森林性鳥類が多く、 日本で繁殖する陸の鳥類約150種のうち約100種は森林性または樹木に営巣するものであり、灌木草原性の鳥は30種前後である。

これまでに鳥類の生息環境の変化や乱獲などにより、種・亜種によっては生息数が減少してきた。 1991年に初めて日本版レッドデータブックが発表されたが、それ以降も生息状況が変化した種・亜種が増えており、 一部のものについては生息状況などに関する新しい知見も追加された。 このような状況の変化に応じて絶滅のおそれのある鳥類の見直しが行われ、まとめられたのが今回の改訂版レッドデータブックである。


●選定の基本的考え方と選定結果

選定の基本方針は、 1)種のレベル、または亜種がある場合には原則として亜種のレベルで評価する、 2)移入種は対象外とする、 3)迷鳥は対象外とし、迷鳥かどうかの判断が困難なものについては「情報不足」とする、 4)評価にあたっては国内の生息状況に基づき、国際的な希少性は考慮しない、 5)陸上で繁殖または越冬する個体を対象とし、海洋上だけで観察されるものは対象外とする、の5点である。 評価は原則としてIUCNの新基準を考慮した新たな基準に基づき、各種・亜種ごとにチェックシートを作成し、 できるかぎり定量的な評価をするとともに評価の根拠がわかるようにした。

改訂版レッドデータブックにあげられた鳥類は、 絶滅(EX)13種・亜種、 野生絶滅(EW)1種、 絶滅危惧IA類(CR)17種・亜種、 絶滅危惧IB類(EN)25種・亜種、 絶滅危惧類粁燹VU)47種・亜種、 準絶滅危惧(NT)16種・亜種、 情報不足(DD)16種・亜種、 絶滅のおそれのある地域個体群(LP)2種の計137(情報不足を除くと121)種・亜種である。

絶滅は13種・亜種で、全体の数は旧版と同じである。 野生絶滅に1種があげられた。 絶滅危惧砧爐砲狼貳任寮簗粘轅種(E)が多いが、旧版の危急種(V)と希少種(R)のうち18種・亜種がこのランクに上がり、 旧版にあがっていなかった2種・亜種が新たに加わった。 絶滅危惧類粁爐梁臧分は旧版の危急種と希少種で、新たに6種・亜種加わった。 一方、このカテゴリーに旧版の絶滅危惧種(E)の4種・亜種が移行した。 これは、環境省をはじめとする保護増殖事業実施の成果であって、事業を停止した場合には生息数は急激に減少すると考えられる。 ライチョウなどの場合は、定量的に評価するようになったために評価が変更になったもので、とくに生息状況が好転したわけではない。 準絶滅危惧は大部分が旧版の希少種と一部危急種であるが、新たに4種・亜種が加わった。 また、新版では絶滅のおそれのある地域個体群が2種ある。 このように、旧版とは評価基準にやや異なる点はあるが、 旧版の絶滅危惧種と危急種の数、改訂版の絶滅危惧類砧爐鉢粁爐凌瑤糧羈咾任蓮54から89へと約65%も増えている。

改訂版で評価に変更のあった種・亜種の多くは危険度がより高くなっており、全般に野生動物に対する圧迫要因が強まっていることを示している。 その主な理由としては、 1)生息数が減少し続けている、 2)分布域が限定されており、 生息地の面積が非常に狭い、 3)生息地が減少したり、分断化により悪化している、といった生息状況に基づくもののほかに、 4)情報が増えて、現状が明らかになってきた、 5)旧版では危急度が過小評価されていたものが、定量的な評価により評価が高くなった、ことなどがある。

掲載された鳥類を非スズメ目とスズメ目に分けると、前者が108、後者が29で、非スズメ目の方が多い。 系統上、非スズメ目鳥類の起源は古く、人類による圧迫要因がなくても、現在多くのグループは衰退の過程にあると考えられている。 これに対しスズメ目は鳥類の進化の過程では比較的新しく出現したグループで、現在でも種が分化しつつあったり、発展しているものもある。 両者にはこのような違いがあり、非スズメ目鳥類は生息環境などの悪化に対してスズメ目鳥類より敏感である。

非スズメ目鳥類はスズメ目鳥類に比べて大型で、一般に行動圏としても広い地域を必要とする。 また、非スズメ目鳥類には、生息環境が水域と関係のあるものが多い。 アビ、カイツブリ、ミズナギドリ、ペリカン、コウノトリ、カモ、ツル、チドリの各目である。 これらの鳥類は生活するうえで、大きな面積の水域を必要とする。 ラムサール条約で、とくに水鳥の生息環境を保護しようという意義も、非スズメ目鳥類のこのような生物学上の特徴によるところが大きい。

また、掲載された鳥類の多くは島嶼性で、改訂版の種・亜種137のうち、島嶼性のものは58種・亜種である。 島に生息する種は、もともと個体数が少なく、特殊化していることが多い。 したがって、もともと狭い生息地がさらに縮小したりすると、その影響を強く受けることになる。 また多くの場合、人間が持ち込む外来の捕食者に対しても非常に弱い。 このように、島に生息する種の場合は、そこでの生息数の減少がその種そのものの衰退につながる。 とくにその島で留鳥である場合に、このような事態が起こると致命的である。 因みに、現在IUCNによって絶滅危惧のリストにあげられている種の約60%は島嶼性である。


藤巻裕蔵(帯広畜産大学名誉教授)


■レッドデータブック掲載種 鳥類

絶滅(EX) ハシブトゴイ Nycticorax caledonicus crassirostris
カンムリツクシガモ Tadorna cristata
マミジロクイナ Poliolimnas cinereus brevipes
リュウキュウカラスバト Columba jouyi
オガサワラカラスバト Columba versicolor
ミヤコショウビン Halcyon miyakoensis
キタタキ Dryocopus javensis richardsi
ダイトウミソサザイ Troglodytes troglodytes orii
オガサワラガビチョウ Cichlopasser terrestris
ダイトウウグイス Cettia diphone restricta
ダイトウヤマガラ Parus varius orii
ムコジマメグロ Apalopteron familiare familiare
オガサワラマシコ Chaunoproctus ferreorostris
野生絶滅(EW) トキ Nipponia nippon
絶滅危惧IA類(CR) チシマウガラス Phalacrocorax urile
コウノトリ Ciconia boyciana
クロツラヘラサギ Platalea minor
シジュウカラガン Branta canadensis leucopareia
ダイトウノスリ Buteo buteo oshiroi
カンムリワシ Spilornis cheela perplexus
カラフトアオアシシギ Tringa guttifer
コシャクシギ Numenius minutus
ウミガラス Uria aalge inornata
ウミスズメ Synthliboramphus antiquus
エトピリカ Lunda cirrhata
ワシミミズク Bubo bubo
シマフクロウ Ketupa blakistoni blakistoni
ノグチゲラ Sapheopipo noguchii
ミユビゲラ Picoides tridactylus inouyei
ウスアカヒゲ Erithacus komadori subrufus
オオトラツグミ Zoothera dauma major
絶滅危惧IB類(EN) コアホウドリ Diomedea immutabilis
アカオネッタイチョウ Phaethon rubricauda rothschildi
アカアシカツオドリ Sula sula rubripes
サンカノゴイ Botaurus stellaris stellaris
オオヨシゴイ Ixobrychus eurhythmus
ツクシガモ Tadorna tadorna
オジロワシ Haliaeetus albicilla albicilla
オガサワラノスリ Buteo buteo toyoshimai
クマタカ Spizaetus nipalensis orientalis
イヌワシ Aquila chrysaetos japonica
シマハヤブサ Falco peregrinus furuitii
ヤンバルクイナ Gallirallus okinawae
チシマシギ Calidris ptilocnemis kurilensis
ヘラシギ Eurynorhynchus pygmeus
アマミヤマシギ Scolopax mira
セイタカシギ Himantopus himantopus himantopus
アカガシラカラスバト Columba janthina nitens
ヨナクニカラスバト Columba janthina stejnegeri
キンバト Chalcophaps indica yamashinai
キンメフクロウ Aegolius funereus magnus
オーストンオオアカゲラ Dendrocopos leucotos owstoni
ヤイロチョウ Pitta brachyura nympha
モスケミソサザイ Troglodytes troglodytes mosukei
オオセッカ Locustella pryeri pryeri
オガサワラカワラヒワ Carduelis sinica kittlitzi
絶滅危惧II類(VU) アホウドリ Diomedea albatrus
ヒメクロウミツバメ Oceanodroma monorhis
クロコシジロウミツバメ Oceanodroma castro
オーストンウミツバメ Oceanodroma tristrami
クロウミツバメ Oceanodroma matsudairae
アオツラカツオドリ Sula dactylatra personata
コクガン Branta bernicla orientalis
ヒシクイ Anser fabalis serrirostris
トモエガモ Anas formosa
オオワシ Haliaeetus pelagicus pelagicus
オオタカ Accipiter gentilis fujiyamae
リュウキュウツミ Accipiter gularis iwasakii
チュウヒ Circus spilonotus spilonotus
ハヤブサ Falco peregrinus japonensis
ライチョウ Lagopus mutus japonicus
タンチョウ Grus japonensis
ナベヅル Grus monacha
マナヅル Grus vipio
オオクイナ Rallina eurizonoides sepiaria
シマクイナ Coturnicops noveboracensis exquisitus
アカアシシギ Tringa totanus ussuriensis
ホウロクシギ Numenius madagascariensis
ツバメチドリ Glareola maldivarum
ズグロカモメ Larus saundersi
オオアジサシ Thalasseus bergii cristatus
コアジサシ Sterna albifrons sinensis
ケイマフリ Cepphus carbo
カンムリウミスズメ Synthliboramphus wumizusume
シラコバト Streptopelia decaocto decaocto
リュウキュウオオコノハズク Otus lempiji pryeri
ブッポウソウ Eurystomus orientalis calonyx
クマゲラ Dryocopus martius martius
アマミコゲラ Dendrocopos kizuki amamii
サンショウクイ Pericrocotus divaricatus divaricatus
チゴモズ Lanius tigrinus
タネコマドリ Erithacus akahige tanensis
アカヒゲ Erithacus komadori komadori
ホントウアカヒゲ Erithacus komadori namiyei
アカコッコ Turdus celaenops
ウチヤマセンニュウ Locustella pleskei
イイジマムシクイ Phylloscopus ijimae
ナミエヤマガラ Parus varius namiyei
オーストンヤマガラ Parus varius owstoni
オリイヤマガラ Parus varius olivaceus
ハハジマメグロ Apalopteron familiare hahasima
コジュリン Emberiza yessoensis yessoensis
ルリカケス Garrulus lidthi
準絶滅危惧(NT) ミゾゴイ Gorsachius goisagi
ズグロミゾゴイ Gorsachius melanolophus
チュウサギ Egretta intermedia intermedia
マガン Anser albifrons frontalis
オオヒシクイ Anser fabalis middendorffii
ミサゴ Pandion haliaetus haliaetus
ハチクマ Pernis apivorus orientalis
ハイタカ Accipiter nisus nisosimilis
コシジロヤマドリ Syrmaticus soemmerringii ijimae
オオジシギ Gallinago hardwickii
ベニアジサシ Sterna dougallii bangsi
エリグロアジサシ Sterna sumatrana
カラスバト Columba janthina janthina
アカモズ Lanius cristatus superciliosus
シマアオジ Emberiza aureola ornata
ノジコ Emberiza sulphurata
情報不足(DD) シロハラミズナギドリ Pterodroma hypoleuca
セグロミズナギドリ Puffinus lherminieri bannermani
カラシラサギ Egretta eulophotes
ヘラサギ Platalea leucorodia major
クロトキ Threskiornis melanocephalus
ハクガン Anser caerulescens caerulescens
サカツラガン Anser cygnoides
アカツクシガモ Tadorna ferruginea
アカハジロ Aythya baeri
コウライアイサ Mergus squamatus
オオハヤブサ Falco peregrinus pealei
エゾライチョウ Tetrastes bonasia vicinitas
ウズラ Coturnix japonica
クロヅル Grus grus lilfordi
シベリアオオハシシギ Limnodromus semipalmatus
マダラウミスズメ Brachyramphus marmoratus perdix
絶滅のおそれのある地域個体群(LP) 青森県のカンムリカイツブリ繁殖個体群Podiceps cristatus cristatus (Breeding population in Aomori Prefecture)
東北地方以北のシノリガモ繁殖個体群 Histrionicus histrionicus pacificus (Breeding population in Tohoku District and Hokkaido)

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