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両生類概説
爬虫類概説



両生類概説

両生類は、硬骨魚類の中から分化して生涯の一部を陸上で過ごすようになった変温脊椎動物群である。ふつうは淡水中に産卵し、かえった幼生(いわゆるオタマジャクシ)は水生で、成体とはまったく異なった体形をしているが、成長すると変態して親と同じ形の子になり、原則として陸上生活を送るようになる。しかし、成体の皮膚は裸で、体の内部を保護する鱗などがなく、多数の腺から分泌される液体によって湿らされているだけなので、水域や林床の多湿な場所などを遠く離れては生きていくことができない。

両生類の中には、オオサンショウウオのように一生涯を水中で送るものもある。しかし、その多くは幼形生殖をする祖先から進化して水生生活を固定化したものと考えられ、幼生的な形質を多く保有するけれども、進化の早い段階にあるもの、つまり原始的なものとはかならずしもいえない。

両生類の起源は古生代に遡るが、爬虫類との分化は早く、その後はあまり大きい発展をせずに現代にいたった。現生の両生類は、体がミミズ型のアシナシイモリ類、トカゲ型のサンショウウオ類、尾がなくて後肢の大きいカエル類の3群に大別されるが、もっとも繁栄しているのはカエル類で、全世界に広く分布している。サンショウウオ類はおもに北半球に分布し、アシナシイモリ類は主として熱帯地方の産で日本にはいない。


●日本の両生類相の特徴と現状

日本列島からこれまでに記録された両生類は、2目8科15属64種・亜種に分類されている。このうちの22種・亜種はサンショウウオ類で、残りの42種・亜種はカエル類である。サンショウウオ類はおもに日本本土とその属島に分布し、とくにサンショウウオ科のものがいちじるしく分化している。島嶼の場合を除いて、これほどいちじるしい地域的分化を示す両生・爬虫類はほかにない。琉球列島にもサンショウウオ類は分布しているが、奄美・沖縄の島じまに固有のイモリ2種だけで、サンショウウオ科のものはいない。爬虫類の場合とちがって、日本本土に分布するサンショウウオ類の多くは、朝鮮半島経由で西日本に侵入した祖先に由来するものと考えられる。この考えを強く示唆するのが環日本海型に近い分布模様で、分化のようすも本州の日本海側で太平洋側よりもいちじるしい。

これに対して、カエル類の分化はトカラ海峡以南の琉球列島でいちじるしく、とくに奄美諸島と沖縄諸島には多くの固有種が生息している。そのなかには、八重山諸島などに近縁種の見られないものがいくつもあり、琉球中央部の特異な事情を示している。日本本土にもかなり多くのカエル類が分布しているが、アカガエル類など北方起源のものが主体で、本州の北端近くまでアオガエルの仲間が拡がっていることなどはむしろ例外的である。

多くのサンショウウオ類が低湿地に生息することが災いして、日本本土の両生類はこの半世紀のあいだに壊滅的な打撃を受けた。とくに大都会の周縁部などでは、サンショウウオ類やカエル類の多くが絶滅に追いこまれた。その主因は、開発にともなう低湿地の消滅と農地改革にともなう小川などのU字溝化で、すでに回復不能な状態に立ちいたっている地域も多い。しかもこのような破壊は現在も続いていて、全国的にみてもさらなる減少が憂慮される。

一方、琉球列島では、開発にともなう森林の伐採が多くの両生類の生活環境を奪った。さらにペットブームにともなう密猟が個体数の減少に拍車をかけ、学術上貴重な種ほど絶滅が憂慮される事態になっている。


●選定の基本的考え方と選定結果

1991年版レッドデータブックで選定された両生類は、絶滅危惧種が2、危急種が4であったが、今回の選定では前者相当の絶滅危惧砧爐5、後者相当の粁爐9に増加し、逆に希少種相当の準絶滅危惧種は8から5に減少した。爬虫類の場合と同様に、選定作業は定性的な資料に基づいて進められたが、将来は卵数などによる、より定量的な手法の導入が望まれる。ただし、そのような調査には、比較的短い繁殖期に広汎な地域にわたる観察が要求されるので、理論的には可能だとしても実施することは容易でない。

いずれにしても、前回の選定時に比べて資料が飛躍的に増加し、選定者の知見も大幅に拡がっているので、定性的に判定されたとはいうものの、今回の絶滅危惧種選定は、現状で望みうる最良の結論だといえるだろう。


上野俊一(国立科学博物館名誉研究員)


■レッドデータブック掲載種 両生類

絶滅危惧A類(CR) アベサンショウウオ Hynobius abei
絶滅危惧B類(EN) ホクリクサンショウウオ Hynobius takedai
ハクバサンショウウオ Hynobius hidamontanus
イシカワガエル Rana ishikawae
コガタハナサキガエル Rana utsunomiyaorum
絶滅危惧粁(VU) オオイタサンショウウオ Hynobius dunni
オキサンショウウオ Hynobius okiensis
イボイモリ Tylototriton andersoni
ダルマガエル Rana porosa brevipoda
ハナサキガエル Rana narina
アマミハナサキガエル Rana amamiensis
ナミエガエル Rana namiyei
オットンガエル Babina subaspera
ホルストガエル Babina holsti
準絶滅危惧(NT) ベッコウサンショウウオ Hynobius stejnegeri
キタサンショウウオ Salamandrella keyserlingii
オオサンショウウオ Andrias japonicus
シリケンイモリ Cynops ensicauda
オオハナサキガエル Rana supranarina
絶滅のおそれのある地域個体群(LP) 京都・大阪地域のカスミサンショウウオ Hynobius nebulosus nebulosus
東京都のトウキョウサンショウウオ Hynobius nebulosus tokyoensis
愛知県のトウキョウサンショウウオ Hynobius nebulosus tokyoensis
本州・九州地域のオオダイガハラサンショウウオ Hynobius boulengeri

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爬虫類概説

脊椎動物のうちで、それまでの水生生活から離れて完全な陸生になったのは、爬虫類が最初である。この新しい生活型を可能にしたのは、体の表面をおおう皮膚が全体に角質の鱗でおおわれ、空気中でも内部を保護できるようになったことと、卵が石灰質の殻で包まれて、陸上に産み落とされても乾燥に耐えられるようになったことである。また、すでに中生代の白亜紀ごろまでには温血の種類がいくつもの系統に出現し、そのなかから温血性の鳥類や哺乳類が分かれて進化した。

現生の爬虫類はすべて変温動物であり、そのまとまりは、脊椎動物のほかの群(綱)の場合に比べて異常なほど悪い。これは、現生種を構成する3つの亜群(亜綱)、つまりカメ類、トカゲ類、ワニ類の間に直接的な関係がなく、それぞれ別個の祖先から長い地質時代を経て進化してきた、あるいは生き残ってきたからだろうと考えられる。初期の爬虫類と両生類との間にはそれほど大きい差異がなかったが、爬虫類の方は中生代を通じていちじるしい多様化を遂げ、さらに進んだ体制をもつ動物群を生み出す母体になった。

現生の爬虫類は原則として卵生で、幼時に変態せず、親と同じ形の子が生まれる。卵が母親の体内でかえり、子になってから生まれてくる胎生の種も、トカゲ類やヘビ類に少なからず見られるが、おもに水中で生活するカメ類やワニ類にはこのような胎生のものがなく、つねに陸上で産卵が行われる。これらの動物が本来は陸生であったことは、この一事からもよくわかる。


●日本の爬虫類相の特徴と現状

日本列島からは、これまでに2目14科47属97種・亜種の爬虫類が知られている。この数は、最初の日本版レッドデータブックが公刊された1991年の時点(87種・亜種)に比べてかなり増えているが、全体の構成にかかわるほど大きい変化はない。また、属の数が増えたり名称が変わったりしているのは、近年、爬虫類の属を細分しようという傾向が強いためで、細分化された属のなかにはせいぜい亜属程度の価値しか認められないものも少なくないが、現時点ではいちおう世界の趨勢に従っておいた。

生物地理学的にみると、日本産の爬虫類は大きく2群に分けられる。その一つは、中国大陸の母体から直接、九州などの西日本に渡来したものを祖先とし、本州を北上して北海道から場合によっては南千島の国後島あたりまで広域分布をするもので、たいていは日本の固有種に分化している。種数はそれほど多くないが、日本本土を特徴づける要素である。これに加えて、朝鮮半島から対馬を経て西日本へ渡来したと考えられるものがいくつかあり、その一部は対馬までで止まっている(たとえばアムールカナヘビ)。また、サハリン方面から侵入して、北海道の一部のみに定着しているものもある(たとえばコモチカナヘビ)。

もう一つの群は、中国中南部あるいはそれ以南の地域から琉球列島に拡がり、おもにトカラ海峡以南の島じまに分布するもので、種数も属数も圧倒的に多い。とくに重要なのは、奄美諸島と沖縄諸島を含む中部琉球地域で、日本固有の爬虫類の多くがこの地域に局在するだけでなく、学術上重要なものが多い。琉球列島に分布する爬虫類は、一般に台湾方面から拡がってきたものだろうと考えられているが、奄美・沖縄の固有種のうちには、中国大陸から直接に渡来したものの子孫ではないかと思われるものが含まれている。

両生類の場合ほどではないが、日本の爬虫類もここ半世紀の間に個体数がいちじるしく減少した。その原因は多様でとてもここには挙げきれないが、なんといっても人間による環境破壊の影響が大きい。多くの爬虫類は肉食性であり食物連鎖の上部に位置するので、餌食となる小動物の減少が直接その衰退につながる。さらに困ったことに、近年では国外ないしは他の地方から移入された肉食動物が、在来種の存続に対する大きい脅威になり、とくに島嶼の場合にその傾向がいちじるしい。また一方で、移入された爬虫類が、他の小動物の生存を脅している場合もある(小笠原父島のミドリアノールなど)。以前にはそれほど問題にならなかったのに、現在は放置できないほど深刻な事態に立ちいたっているのが、人間による採集圧である。いわゆるペットブームのために個体数の少ないものほど珍重される傾向があり、密猟が盛んに行われている。こういうさまざまなマイナス要因のほとんどすべてをもろに背負いこんでいるのが、もっとも貴重な奄美・沖縄の島じまであることは、特筆するに値するだろう。


●選定の基本的考え方と選定結果

1991年版レッドデータブックの掲載種選定にあたっては、基礎資料となる生存状況や生態などによくわかっていなかった事項が多く、いきおい抽出作業が控えめにならざるをえなかった。しかし、ここ10年足らずの間に多くの知見が蓄積され、確度の高い情報に基づいて衰退のようすを判定できるようになった。もちろん、定量的な解析ができるほど十分なデータがあるわけではないので、選定作業はおもに定性的な資料に基づいて進められたが、その結果は模範的な形に結実したといっても決して言い過ぎではないだろう。対象となる動物についてその生活状況まで知悉した研究者が、いったん白紙に戻した状態から選定し直した今回の結果は、現状で想定できる最良のものである。

今回の選定結果でもっとも重要なことは、前回に比べて絶滅危惧種が大幅に増えたことである。前回の絶滅危惧種に相当する絶滅危惧砧爐錬韻ら7に増加し、前回の危急種に相当する絶滅危惧粁爐蓮■欧ら11に増加した。これはかならずしも、危機的な状態がこの10年ほどの間にいちじるしく進行したことを意味するものではない。前回の調査時点ですでに危機的な状態であったものが、情報不足のために選定からもれていたと考えてよかろう。もちろん例外もあって、絶滅危惧粁爐冒定されたカメ類は、近年になってから急速に状況が悪化したものといえるだろう。採集圧が大きく前面に出てきたのも前回には考えられなかったことで、クロイワトカゲモドキの5亜種全部が絶滅危惧砧爐△襪い廊粁爐冒定されたのは象徴的である。


上野俊一(国立科学博物館名誉研究員)


■レッドデータブック掲載種 爬虫類

絶滅危惧A類(CR) イヘヤトカゲモドキ Goniurosaurus kuroiwae toyamai
キクザトサワヘビ Opisthotropis kikuzatoi
絶滅危惧B類(EN) タイマイ Eretmochelys imbricata
マダラトカゲモドキ Goniurosaurus kuroiwae orientalis
オビトカゲモドキ Goniurosaurus kuroiwae splendens
ヤマシナトカゲモドキ Goniurosaurus kuroiwae yamashinae
ヒメヘビ Calamaria pfefferi
絶滅危惧粁(VU) アオウミガメ Chelonia mydas
アカウミガメ Caretta caretta
セマルハコガメ Cuora flavomarginata evelynae
リュウキュウヤマガメ Geoemyda japonica
クロイワトカゲモドキ Goniurosaurus kuroiwae kuroiwae
キノボリトカゲ Japalura polygonata polygonata
バーバートカゲ Eumeces barbouri
ミヤコトカゲ Emoia atrocostata atrocostata
ミヤコヒバァ Amphiesma concelarum
ヨナグニシュウダ Elaphe carinata yonaguniensis
ミヤラヒメヘビ Calamaria pavimentata miyarai
準絶滅危惧(NT) キシノウエトカゲ Eumeces kishinouyei
イワサキセダカヘビ Pareas iwasakii
アマミタカチホヘビ Achalinus werneri
ヤエヤマタカチホヘビ Achalinus formosanus chigirai
サキシマアオヘビ Cyclophiops herminae
サキシマバイカダ Lycodon ruhstrati multifasciatus
イワサキワモンベニヘビ Hemibungarus macclellandi iwasakii
ヒャン Hemibungarus japonicus japonicus
ハイ Hemibungarus japonicus boettgeri
情報不足(DD) スッポン Trionyx sinensis
絶滅のおそれのある地域個体群(LP) 悪石島以北のトカラ諸島のニホントカゲ Eumeces latiscutatus
三宅島、八丈島、青ヶ島のオカダトカゲ Eumeces okadae

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