（１）分布状況について

　今回の調査では、ツバメ類の種類を正確に同定するため、調査票に写真を貼って送付する形をとりました。寄せられた調査票のほとんどには同定可能な鮮明な写真が貼られており、一般の参加者の協力を得て行われる調査において写真が有効な記録手段として使用できることが判明しました。

　北海道から鹿児島県に至る広い範囲で繁殖していました。関東甲信越地方以西と比較すると東北・北海道地方は密度が低いことが改めて確認され、特に今回の調査で従来記録のなかった紋別市と根室市で巣が見つかったことは貴重な記録でした。

　関東地方以西に多く分布し、また太平洋側に比べ日本海側は、より北まで分布するという傾向が改めて裏付けられました。

　中部地方よりも東に多く分布しているという傾向が改めて裏付けられました。今まで記録が乏しかった和歌山県、長崎県での繁殖の報告が得られたことは貴重な結果でした。

  沖縄本島のみで記録され、報告が４件と少なく、分布状況の把握としては不十分でした。

　関東地方以西で合計37地点の繁殖が確認されました。愛知県、三重県、徳島県では従来報告がなかったので、やや分布が広がっていることが明らかになりました。

　日本では、従来からツバメ類の分布調査は行われてきたが、営巣場所についての広域的で詳しい調査は行われたことがありませんでした。今回、それぞれの種がどのような営巣場所を選んでいるかについて、興味深い結果が得られました。

  居住用などの建物の中で営巣した位置はひさしの下が約７割と最も多くなっていました(図２)。室内に巣を作った例は、住宅地のような都市部では４％、農村部では３０％を占めていました。

  居住用などの建物に営巣した例が約９割を占めました。居住用などの建物では、集合住宅の利用が多い点に特色が見られました(図３)。

○「イワツバメ」の営巣場所

  住居用などの建物に営巣した例と、橋などの建造物に営巣した例がほぼ同数報告されました(図４)。居住用などの建物の場合には、大きな建物を営巣場所に選ぶ傾向が見られました。

  また、「イワツバメ」は全体としてコンクリート製の大規模な建造物を好んで営巣していることがわかりました。

  抱卵期や育雛期に、ヒナや親鳥が死んだり巣が壊れたりして繁殖が失敗することがあります。

  「ツバメ」では、特定された原因の中でもっとも多かったのはカラスで、次いで巣の落下の順でした。「コシアカツバメ」、「イワツバメ」では、スズメによる巣の横取りが最も多く観察されました(図５)。