ニイニイゼミ / Platypleura kaempferi

[分布と生態] 北海道から沖縄本島以北の南西諸島に分布し、6月から9月に発生する小型のセミ。平地から丘陵地に見られ、サクラ類やケヤキ、マツ類などの樹林に生息します。ぬけがらは、地上1m以下についていることが多いようです。
[今回の調査結果] 3,714個のぬけがらが寄せられました。このデータは従来から知られている分布域と重なるものですが、関東以西に多いこと、東北地方では点状であること、北海道では稀であることがわかりました。また、対馬や奄美大島から沖縄本島の南西諸島にも分布しますが、今回は報告がありませんでした。この地方では、数がすくなく分布も局地的となるため、収集からもれたと考えられます。今後、日本の北端と南端の分布域の情報を集める必要があります。また、市街地では、ヒヨドリが本種を食べるために減っているという情報もあり、この点についても動向を見る必要があります。


コエゾゼミ / Tibicen bihamatus

[分布と生態] 北海道、本州、四国に分布し、7月から8月に発生する中型のセミ。北海道や東北地方では平地から低山地に見られますが、関東地方以西では標高1,000m前後の山地にみられます。ブナやアカマツなどの林に生息し、その数はあまり多くありません。
[今回の調査結果] 323個のぬけがらが寄せられました。このデータは、従来知られていた分布域を裏付けるものですが、北海道は本州中部などで産地が多いこと、東北地方の平地にはあまり分布しないことがわかりました。また、数がきわめて少なくなる中国、四国地方から記録されたことも成果といえます。今後、北日本の平地での発生の様子や、公園などの人工的な環境での発生を繰り返すかなどを調べる必要があります。


エゾゼミ / Tibicen japonicus

[分布と生態] 北海道から九州に分布し、7月から9月に発生する大型のセミ。北海道や東北地方ではおもに平地にみられますが、関東地方以西では標高500mから1,000m前後の山地にみられます。ブナなどの広葉樹にも生息しますが、むしろアカマツ、モミなどの針葉樹林に多く、スギ・ヒノキの植林地でも見ることができます。
[今回の調査結果] 671個のぬけがらが寄せられ、予想よりも多くの記録が集まりました。このデータを見ると、本州中部での記録が目立つことや東北地方で産地が連続するなど、従来知られていたよりも広範囲に分布することがわかりました。また、本州中部以西では点々と記録がありますが、より山間部に集中しています。なお、東京都文京区、大阪府大阪市などの記録は、植栽などによる人為的な移入と考えられます。


アカエゾゼミ / Tibicen flammatus

[分布と生態] 北海道から九州に分布し、7月から9月に発生する大型のセミ。エゾゼミとほぼ同様の地域で見られますが、より局地的で数も少なくなります。北海道や東北地方では平地にも見られますが、関東地方以西では標高1,000m前後の山地が中心です。広葉樹林に生息し、関東地方以西ではブナ林を好みます。
[今回の調査結果] 14個のぬけがらが寄せられました。データを見ると、関東地方以西では山地に点々と記録され、その発生は少ないながらも健在です。しかし、平地にも分布する北海道や東北地方でほとんど集まらなかったのは予想外でした。今後、これらの地方の平地での分布をさらに詳しく調べる必要があります。


キュウシュウエゾゼミ / Tibecen kyushyuensis

[分布と生態] 本州(広島県)、四国(愛媛・高知県)、九州に分布し、7月から9月に発生する中型のセミ。1,000m以上の山地のミズナラやブナなどの林に見られますが、きわめて局地的に生息しています。
[今回の調査結果] 四国と九州から3個のぬけがらが寄せられました。いずれも従来から知られている産地からの報告でしたが、本種の産地は限られていて、その発見すら難しいセミの一つですから、3個だけでも貴重な情報となりました。


クマゼミ / Cryptotympana facialis

[分布と生態] 本州から南西諸島に分布し、7月から9月に発生する大型のセミ。いろいろな広葉樹林に生息し、平地を中心に見られます。
[今回の調査結果] 4,345個のぬけがらが寄せられました。このデータからは、海岸線に沿った平地に分布し、内陸にはほとんど見られないことが読み取れます。また、太平洋側では千葉県、日本海側では京都府まで分布する様子もわかります。分布を北に広げていると言われ、東京都、千葉県、神奈川県、鳥取県、島根県などの海岸線沿いの都府県で、従来の分布域から広がっていることを裏付ける資料が得られました。このセミは、植木についた幼虫が運ばれた先で発生し、意外な所でぬけがらが見つかることがあります。今回も、たとえば山梨県御坂町や神奈川県厚木市のような、従来は知られていなかった地域からも報告がありました。今後も、このセミの北進の状況に注目する必要があります。


アブラゼミ / Graptopsaltria nigrofuscata

[分布と生態] 北海道から九州に分布し、7月から10月に発生する大型のセミ。平地から山麓に見られ、その数も少なくありません。発生場所は、人家の庭先から雑木林など広い範囲にわたっており、私たちにもっとも身近なセミと言えます。
[今回の調査結果] もっとも多い17,992個のぬけがらが寄せられました。このデータを見ると、広く各地で見られることがわかりますが、本州、四国、九州の山岳地帯を含む地域では空白が目立ちます。また、東北地方では記録される場所が減っていますが、これは調査員の偏りによるものかもしれません。今後の詳細な調査が必要です。北海道では点状となり、札幌付近まで分布することが読み取れますが、これは従来から知られている分布域と合致するものでした。



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