ハルゼミ / Terpnosia vacua

[分布と生態] 本州から九州に分布し、4月から6月に発生する中型のセミ。おもに丘陵地のマツ林に生息していますが、近年、大都市圏では産地が激減しています。ぬけがらは地上から2m以上の高いところにつくので、収集が難しいセミの一つです。
[今回の調査結果] 149個のぬけがらが寄せられました。このデータでは、関東以西から九州まで、点々と産地があることがわかります。これは、従来から知られていた分布域を裏付けるものですが、産地が多い東海や近畿地方からの報告が少なくなっています。今一度、成虫の鳴き声を手がかりに、マツ林を歩いて探してみてください。


エゾハルゼミ / Terpnosia nigricosta

[分布と生態] 北海道から九州に分布し、5月から7月に発生する中型のセミ。北海道や東北地方では平地から低山地、関東以西では1,000m前後の山地に見られ、ブナ、ミズナラ、コナラなどの林に生息します。
[今回の調査結果] 325個のぬけがらが寄せられました。このデータを見ると、北海道から本州中部にかけて分布が連続していること、平地にも分布していることなどがわかります。一方、近畿地方以西では分布は点状であり、より山地性のセミとなっています。この結果は、従来から知られている分布域と変わりありませんが、記録自体が少ない種類だけに、全国分布を論じる上では貴重な資料となります。


ヒメハルゼミ / Euterpnosia chibensis

[分布と生態] 関東地方以西の本州から徳之島以北の南西諸島に分布し、7月から8月に発生する小型のセミ。シイ類、カシ類などの照葉樹林に生息し、分布北限となる茨城県笠間市八幡神社などの産地は国の天然記念物として保護されています。
[今回の調査結果] 117個のぬけがらが寄せられました。このデータは、従来から知られている分布域を裏付けるものです。分布北限産地を含め、関東、東海地方の産地の多くが、手厚い保護のもとに健在であることが読み取れます。


ヒグラシ / Tanna japonensis

[分布と生態] 日本全国に分布し、7月から9月に発生する中型のセミ。北海道から九州では平地から丘陵地に普通に見られますが、南西諸島では山間部のみに見られ数も少なくなります。いろりろな広葉樹やスギ、ヒノキなどの林に生息します。
[今回の調査結果] 2,462個のぬけがらが寄せられました。このデータは、従来から知られている分布域を裏付けるものですが、北海道や南西諸島では稀となること、本州から九州にかけては広域で普通に見られることなど、分布概況がより明確になりました。今後、数の少ない北海道や南西諸島での分布の状況をつかむ必要があるでしょう。


ミンミンゼミ / Oncotympana maculaticollis

[分布と生態] 北海道から九州まで分布し、7月から10月に発生する大型のセミ。東日本ではおもに平地から丘陵地に、西日本では低山地から山地に見られます。いろいろな広葉樹に生息しますが、特にサクラ類やケヤキを好みます。
[今回の調査結果] 1,832個のぬけがらが寄せられました。このデータは、従来から知られている分布域を裏付けるものですが、東北地方では予想よりも産地が少ないこと、関東地方に多くの産地があること、西日本では産地が少なくなることなど、その分布概況がより明確になりました。今後、日本北端と西日本における分布の状況についての情報を集める必要があります。


ツクツクボウシ / Meimuna opalifera

[分布と生態] 北海道からトカラ列島以北の南西諸島に分布し、7月から11月に発生する中型のセミ。平地から低山地に見られ、サクラ類やカキなど、多くの樹林に生息します。
[今回の調査結果] 2,211個のぬけがらが寄せられました。このデータでは、関東以西に産地が多く見られること、東北地方では点々と見られることなど、従来の分布域を裏付けるものでした。北海道からの報告がありませんが、数がきわめて少ないので、収集からもれたものと考えられます。今後の課題としては、発生数の少ない北海道から東北地方の詳細な分布をつかむと同時に、どのような環境で発生しているのかを調べる必要があります。


チッチゼミ / Cicadetta radiator

[分布と生態] 北海道から九州まで分布し、7月から10月に発生する小型のセミ。低山地から山地に見られますが、西日本の産地は平地であることが多いようです。マツ林に生息し、ぬけがらは地上20cmから1mという低い位置で見つかることがほとんどです。
[今回の調査結果] 21個のぬけがらが寄せられました。このデータには、北海道や九州からの記録がありません。これらの地方ではもともと産地が局地的であるため、現在も発生しているか心配です。本州、四国では点々と記録がありますが、実際の産地はもう少し多いと考えられます。それは、ぬけがらが小さく、低い位置についていることなど、見つけにくい条件があるからです。全国の分布の状況をつかむために、成虫の鳴き声を手がかりに、情報をふたたび収集してみてください。



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