生息・生育地サービス

生息・生育環境の提供

生息・生育環境の提供のイメージ(遡上するサケ)

様々な生態系を利用する移動性の生物に生息・生育環境を提供しそのライフサイクルを維持するサービス

いかなる種のライフサイクルも、他の多くの生産物及び非生物的環境によって、その全部または一部が支えられています。さらに養分や種子など生態系の生産物は、風、水、または動物(人間を含む)によって持ち出され、別の場所のライフサイクルを支える場合があります。ある地域の生態的または経済的重要性を評価する際は、これらの生態系間の相互作用を考慮に入れる必要があります。たとえば、商業的価値のある移動性の生物に繁殖環境を提供する生態系は、それ自体が経済的に価値のあるものと考えられます。

遺伝的多様性の維持

遺伝的多様性の維持のイメージ(生物多様性豊かなマングローブ林)

生物多様性のうち、遺伝的多様性を維持するサービス

遺伝的多様性は全ての生態系に見られ、自然淘汰を通じて特定の生息・生育環境に適応していきます。固有種が集中し、特に高いレベルの生物多様性を示す生態系(生物多様性ホットスポット)は、種の多様性や種内の遺伝的多様性が高いだけでなく、進化が起こり得る自然の実験場ともなることからこれらの遺伝的多様性を保全していくことが重要です。

遺伝的多様性が失われると、野生種・野生化種・栽培種間の継続的進化が妨げられます。

文化的サービス

自然景観の保全、レクリエーションや観光の場と機会、
文化のインスピレーション、芸術とデザイン、
神秘体験、科学や教育に関する知識

文化的サービスのイメージ(エコツーリズム)

人間が自然にふれることで得られる文化的なサービス

人間は自然や生き物にふれることで、審美的、精神的、心理的な面で様々な影響を受けています。書籍や映画、テレビを通じて間接的にふれることもあります。都市地域では、窓からの緑の眺めで仕事の満足度が高まりストレスが減少するなど、人間の心理的利益が増大することを示した研究例があります。

また、審美的価値や精神的価値のほか、エコツーリズムのように観光を通じて利益になる活動もあります。エコツーリズムや教育的な活動では、生物多様性が高いほど、そのサービスも向上する可能性が高くなります。

※出典
TEEB報告書 D0 生態学と経済学の基礎