カルタヘナ議定書第2回締約国会議(COP-MOP2)の結果について

 2005年5月30日(月)から6月3日(金)にかけて、カルタヘナ議定書第2回締約国会議(COP-MOP2)がカナダのモントリオールで開催されました。会議には、議定書締約国101ヵ国の他、非締約国16ヵ国、国連機関、IGO(Intergovernmental Organization、政府間組織)、NGO、学術研究機関、産業界などから、647名が参加しました。会議では、合計14の決議を採択しました。主要な決議の概要は以下の通りです。

遵守委員会の手続規則(決議BS-II/1)
 バイオセーフティに関するカルタヘナ議定書に基づく遵守委員会の手続規則を決議した。規則は、括弧書きで残された投票に関する規則第18番を除き、決議BS-II/1に附属書として添付されている。本規則は特に、会合の日程、通知、議題、情報の配布と検討、文書及び情報の公表、メンバー、役員、委員会決議への参加、業務の遂行、投票、言語、修正、議定書に基づく無効決議権、といった事項を網羅したものとなっている。

バイオセーフティ情報交換センター(BCH)の運営と活動(決議BS-II/2)
 以下の5つの主要な戦略目標を有するバイオセーフティ情報交換センター(BHC)の運営についての複数年にわたる作業計画を決議した。主要な戦略目標とは次の通りである。
(1) BCHにおける情報の報告及び情報へのアクセスの容易性を改善する。
(2) BCHに現在報告されている情報量を増やすとともに、それらの情報が時宜を得て提供されることを確実とする。
(3) BCHのユーザーが、より広範なバイオセーフティ関連情報にアクセスできるように図る。
(4) インターネットによるBCHを通じた情報にアクセスする各国の能力を強化し、インターネットへのアクセスの良くないユーザーについては、BCHを通じてタイムリーに情報を受け取れることを確実とする。
(5) BCHの目標が効果的に達成されることを確実とするために、作業計画の見直しを行う。更に、事務局に対し、各国がBCHに積極的に参画できるようにするための能力開発の努力を引き続き支援するよう要請した。

能力開発活動の状況(決議BS-II/3)
 調整メカニズム(Coordination Mechanism)、各国のニーズと優先順位及び能力開発のための行動計画の見直しに関する包括的な決議を行った。締約国、その他諸国の政府及び組織に対し、調整メカニズム及びBCHを通じた情報の共有、自らのニーズのBCHへの連絡、BCHにおいて利用可能なバイオセーフティ訓練コースの一覧表の利用及びバイオセーフティ関連の訓練・教育に対する財政的支援の提供を要請した。更に、バイオセーフティ関連の訓練を提案している機関に対し、各国の特定のニーズを考慮したニーズ駆動型の計画 (demand-driven program) の策定及び特に先進国と開発途上国の諸機関の間における協力関係の構築を要請した。能力開発のニーズと優先順位に関し、先進国及び国際機関に対し、開発途上国締約国及び移行経済締約国に対してこれら諸国のニーズに応じた支援を提供するよう要請した。各国に対しバイオセーフティにおける能力開発について優先順位付けした国家戦略を策定し、共通のニーズに則した地域的及び小地域的イニシアチブ及び取り組みを促進するよう奨励した。最後に、能力開発のための行動計画の包括的見直しについての負託事項を採択した。各国政府及び関係機関は、行動計画の履行の進捗状況及び同計画の有効性並びに欠陥と弱点に関する情報、望ましい変更及び改善についての提言を提出するよう要請された。事務局は、受領した提出文書を基に、第3回締約国会議における行動計画の改定の可能性を考慮に入れた戦略的提言を含む統合的文書を作成する予定である。
 専門家登録制度(ROE)(決議BS-II/4)に関し、締約国及び各国政府に対して再度、ROEへの登録の要請と、その有効的利用を呼びかけた。更に、各国政府及びその他の資金提供者に対し、ROEに対する自主的基金のパイロットフェーズへの寄与を要請した。また、事務局に対し、ROEについての認識を促進し、任意基金のパイロットフェーズでの資金利用の可能性について宣伝するよう要請した。

資金供与の制度に関連する事項(決議BS-II/5)
 本決議は、地球環境ファシリティー(Global Environment Facility-GEF)及びその他の資金提供者がプロジェクト・サイクル要件を簡素化することを奨励し、GEFに対してバイオセーフティ関連の検討報告書を第3回締約国会議に提出することを要請し、更に事務局に対してバイオセーフティ・プロジェクト活動の策定・監視・評価について関係者と協力することを要請している。

他の組織、団体及びイニシアチブとの協力(決議BS-II/6)
 本決議は、事務局に対し、WTOの衛生植物検疫(SPS)委員会及び貿易の技術的障害(TBT)に関する委員会においてオブザーバーの地位を確保する努力を払い、WTOの貿易と環境に関する委員会における関与を継続し、国際食品規格委員会(CODEX)、国際獣疫事務局(OIE)、国際植物防疫条約(IPPC) 及びオーフス条約(Aarhus Convention)事務局との協力関係を強化し、国際標準化機構(ISO)及びその他の関連する通関・輸送組織との協力関係を構築し、オーフス条約事務局との協力関係を深めることを要請している。

第8条の実施に関する選択肢(決議BS-II/8)
 通告の要件に関し、可能な場合には第4回締約国会議において、通告要件の実施方法を詳細に検討・策定するために、検討を継続することを決議した。このプロセスでは、2005年9月11日までに各国から提出される国別中間報告書に含まれる各国の実施状況及び経験に関する情報を考慮に入れる。また、締約国に対し、輸出者に対して輸入締約国が決定した言語を通告書において使用することを求めた通告要件を守らせるための必要な措置を講じること、通過締約国の規制が要求している場合は通過締約国の管轄当局に対して書面で通告することを要請することを含め、通過締約国が同国の領域を通過する遺伝子組換え生物(LMO)の輸送を規制する権利を認めることを決議している。

危険性の評価及び危険の管理(決議BS-II/9)
 危険性の評価に対する現行の取り組み方法の性格と範囲を更に検討し、かかる取り組み方法を検討して問題点を見付け出し、さらに能力開発のニーズを特定するために、危険性の評価に関するアドホック技術専門家グループを設置することを決議した。第3回締約国会議において、事務局がセッションに先立ち作成した、専門家グループの見解、議定書に基づき各国より提出された中間報告書から得た情報、及び第2回締約国会議より前に受領した提出文書と指針文書、等を取りまとめた文書を基に、危険性の評価と危険の管理についてさらに検討する予定である。事務局は、第4回締約国会議に先立ち、また資金のあることを条件として、能力開発及びLMOの危険性の評価及び危険の管理に関する経験の交流に関する地域的ワークショップを開催することが要請された。

取扱い、輸送、包装及び表示(第18条)
 本会合では、第18条2項(a)において規定されている食品若しくは飼料として直接利用し又は加工することを目的とするLMOに添付される書類の詳細な表示要件に関する決議を採択することができなかった。しかしながら、拡散防止措置の下での利用又は環境への意図的な導入を目的とするLMO(第18条第2項(b)及び(c))に添付する書類の要件については決議(BS-II/10)を行った。この決議で、締約国に対し、決議BS-I/6によって詳細が定められた議定書第18条第2項(b)及び第2項(c)の要件が完全に遵守されることを確実とするために必要な措置を講じることを要求するとともに、それをその他諸国の政府にも要請している。さらに、本決議は、輸入締約国に対し、拡散防止措置の下での利用及び環境への意図的な導入を目的とするLMOに関し、輸入及び添付書類の要件に関する情報をBCHに提供することを要求している。

社会経済上の配慮(決議BS-II/12)
 LMOの影響から派生する社会経済上の配慮に関係する研究活動を行っている政府及び関連機関に対し、生物多様性条約第8条(j)に基づく影響評価に関するAkwe:Kon自主ガイドラインの実施を含め、社会経済上の影響を考慮するに当たり、それぞれの政府又は機関の研究方法及び研究結果(肯定的、否定的を問わない)並びに経験をBCHを通じて共有することを要請した。 また、締約国に対し、第4回締約国会議における検討のために、LMOの社会経済的影響に関する各国の見解及びケーススタディーを事務局に提供するよう要請した。

公衆の啓発及び参加(決議BS-II/13)
 各国に対し、メディアを有効に活用し、LMOの安全な移送・取扱い及び利用に係る公衆の啓発、教育及び参加を促進する機会を増やすための国家計画を策定・実施することを奨励した。各国に対し、小地域的及び地域的イニシアチブを支援し、BCHを通じ、それぞれの国のイニシアチブに関する情報、啓発用資料及びケーススタディーを共有するよう要請した。この問題は、第5回締約国会議において再度検討される予定である。

第3回締約国会議の期日及び場所
 ブラジル政府からの提案を受け、第3回締約国会議は、生物の多様性に関する条約第8回締約国会議とともに、2006年3月13日から17日まで、ブラジルのクリチバにおいて開催することが決議された。