調査結果5

繁殖に

失敗するのは

どんな場合?

 ツバメ類にとって、ヒナを育て上げるのは、子孫を残すことにつながるもっとも大切な仕事です。しかし、それはいつも順調に進むとは限らず、さまざまな原因で途中でうまくいかなくなることがあります。今回は観察とインタビューの両方で、繁殖に失敗する原因にはどんなものがあり、どれが大きい割合を占めているのかを探ってみました。

1 ツバメ

 ツバメの場合、途中で失敗したことがはっきりしたのは、全体の約15%でした。全部の巣について、巣立ちまで確認していただいた訳ではないので、これは少なくとも15%の巣では、途中でうまくいかなくなったということを示しています。その中で、失敗の原因を答えてくださったのは約600例でした。もっとも多かったのはカラスによるという回答で、全体の約4分の1を占めていました。インタビューでも、同じような傾向でした。

 カラスの場合、外から見えやすい巣の方が襲われやすいのではないかと推定されます。そこで、外から見えやすい巣と、見えにくい巣に分けて、集計をしてみました。結果的には、わずかに見えにくい巣の方がカラスに襲われることが少なく、ヘビが襲う割合は高いという結果でした。しかし、この結果は、統計的には意味のない差なので、見える、見えないなどの記録を厳密にして、再度、調査をしてみる必要があるでしょう。

 また、ヘビやカラスが巣を襲うことは、ツバメの立場から見れば困ったことですが、冷静に考えると、食べ食べられる生きもの同士の食物連鎖の一場面ととらえることもできます。都市部と農村部に分けて、原因の集計をしてみたところ、都市部ではカラス、農村部ではヘビが多いことが分かりました。生態系のしくみも、都市と農村では変化してきているのです。

 

2 コシアカツバメ

 コシアカツバメの場合には、観察でもインタビューでも、スズメが失敗の原因に多くあげられており、全体の6〜7割に達していました。先に述べた通り、スズメはしばしばコシアカツバメの巣を利用しますが、その習性が、この種の繁殖に影響を与えている可能性が大きいと言えるでしょう。

 

3 イワツバメ

 イワツバメの場合には、1ヵ所で見られる巣の数が多くて、特定の巣に注目しての観察が難しいためか、回答数が多くありませんでした。そのため、あくまで参考ですが、観察ではスズメ、インタビューでは巣の落下が最大の原因としてあげられていました。先に述べた通り、スズメはしばしばイワツバメの巣も利用しますが、その習性が、この種の繁殖にも影響を与えている可能性が大きいと考えられます。

 

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