1.調査結果の概要


1各標本区の選定理由

沖縄島海域

5.松田

 名護市松田の北にひろがる河口干潟で,国道329号線沿いで人々の目につきやすく,カタバル(潟原)という地名にもなっている,よく知られた場所である。また,農地改良事業など近年の陸域開発に伴う赤土流出が問題となったため,この干潟の現況評価として精度の高い生物調査が行われた(沖縄総合事務局,昭和62年)。以上の理由から標本区の1つに選び,資料調査でデータを得た。


19.兼久

 わが国のトカゲハゼ分布域は沖縄本島の泡瀬地先と兼久地先の2カ所だけが知られているが,いずれの干潟も埋め立て計画の対象区域に含まれているのでなんらかの保護対策が望まれている。しかしながら,トカゲハゼの分布について記述した文献がないばかりか,兼久地先では基礎的な調査さえ行われていない。それゆえ今回の調査で標本区としてとりあげた。


30.屋嘉田潟原

 恩納村の国道58号線沿いにあって,先の松田と同じくよく知られた干潟である。沖合いの礁原上にはウニ礁が,また藻場内にはモズク養殖場が設けられており,干潟を含めた湾全域が水産的に重要な場所であるので標本区とした。


宮古列島海域


62.上地之浜

 この干潟沖合いの与那覇湾口はクチベニツキガイのよい漁場であるばかりでなく,湾内で1986年からクビレヅタ養殖が行われているなど,やはり水産的に重要である。今回は干潮時に調査できなかつたため,沖合いのアマモ場も含めて潜水調査を行った。


八重山列島海域


69.アンパル

 石垣島で観察される野鳥はすべてアンパルでみられ,その多くの種がアンパルで繁殖するなど,河口干潟としてのアンパルは八重山列島の鳥類相を代表しえる重要な場所である。また,底生生物相は南西諸島のマングローブ域を代表するものと思われる。1988年にアンパル野鳥研究会により自然環境全般にわたって精査が行われたので,現地調査のデータを十分に補うことができた。

2調査結果の概要

 沖縄県は陸域こそ亜熱帯域に属するが,海域は熱帯のサンゴ礁域とみなすことができる。底生生物調査表が南西諸島用として別に設けられているように,生物相は温帯域とは異なる独特なものである。

 今回選定した標本区はタイプ別ではすべて河口干潟であった。しかし,沖縄本島の3つの標本区では河口域にはあまりみられないカノコガイ類やタカラガイ類,カンギク,ホウシュノタマガイなどが出現し,干潟内で測線を設定した場所が前浜型的な特徴を合わせ持っていたか,もしくはこれらの干潟が厳密な意味での河口干潟ではないとも考えられる。

 

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