33. 佐賀県

 

(1) 分布及び消滅状況の概要
 今回の調査結果は、前回の調査結果(佐賀県1978)と比較し藻場の数が増え、特に藻場面積が相当多くなっている。
 前回の報告書を作成するにあたり、それ以前の藻場に関する報告例は本県には全くなかったし、藻場調査を目的とした航空写真もなかった。そこですべて現地調査により横断面略図を作成し、対象藻場について、海岸線と横断面略図上の水平距離を掛け合わせて藻場面積を推計していた。すなわち、現地調査で記録した点や線の調査結果を基に無理して藻場面積を算出していたことになる。
 1977年度、1978年度に水産庁の委託により、佐賀県の海岸総延長254km対し、航空写真285枚が撮られた。そしてそれをもとに現地調査、聞き取り調査を加味した報告書が出された(西海区水産研究所、1981)。
 今回は、西海区水産研究所(1981)を基礎知識とし、再確認のためほとんどの地点を現地調査した。その結果、前回の調査で確認できていなかった藻場(1ha以上)が13カ所見つかり、また推計していた藻場面積が相当過小評価していたことが判明した。 今回の現地調査は、1989年10・11月と1990年3月に大半を行った。前回の調査は、7・8月に集中的に調査していた。そのため季節的変化の大きな海藻類にとって、一様に分布の状態を比較することに無理があった。
 前回の報告書では、藻場のタイプをアマモ場、ガラモ場、コンブ場、その他に類型することになっていた。今回は上記類型に加え、アラメ場、ワカメ場、テングサ場、アオサ・アオノリ場が付加されている。 前回調査結果のガラモ場の中には当然アラメ場も含まれていた。佐賀県北西部の海岸は、岸近くはガラモ場が発達し、水深5m位からはアラメの優占地帯になることが多い。 実際問題としてアラメ場とガラモ場を明確に類型することが困難であった。
 1980年〜1989年の10年間に造成された埋立地に関する調書によると、今回対象の1ha以上の埋立て地は12カ所あった。しかし、該当する地域の藻場の分布と照らし合わせてみると、消滅した藻場は浦の崎の1カ所のみであった。ただし、西海区水産研究所(1981)には、伊万里湾の久原近くのアマモ(6ha程)が記載されている。現在この地域は埋立てられている。おそらく該当のアマモ場が消滅したものと思われるが、確認できないので消滅藻場としては取り扱っていない。 
 次に佐賀県藻場の特徴について簡単に述べてみる。佐賀県藻場概略分布図からわかる とおり、1ha以上の藻場となると玄海灘に浮ぶ島々を中心に県北西部に集中している。しかも、ほとんどが藻場のタイプとしてはガラモ場とアラメ場を形成している。これは、この地域がいずれも玄武岩性の転石地帯であるためであり、有明海や伊万里湾・仮屋湾等のような砂泥地帯にはガラモ場やアラメ場は全く見られない。
 このような場所でも点在的にアマモのごく小さな群落はかなり見られたものの、本調査対象の1ha以上となると9カ所を確認できたに過ぎない。
  藻場を形成する種類について、垂直的、季節的変化の面からおおざっぱに述べてみる。 高潮線付近と潮間帯上部では、ヒトエグサ、アオノリ類、アマノリ類が冬期〜春季に大きな群落を形成する。しかし、これらは夏季にほぼ完全に消失してしまう。潮間帯中部に優占するものとしては、イワヒゲ、イシゲ、イロロがあげられる。これらは夏場には量的に少なくなるもののほぼ通年群落を形成しており、冬期にはこの帯位にカヤモノリとバノリがよく発達した群落を形成する。潮間帯下部には、ウミトラノオ、ビリヒバ、ヒジキ、フクロノリ等が優占する。これらのうちヒジキやフクロノリは、夏期にほぼ消失してしまう。低潮線以下の群落は、通年ほぼ安定した様相を呈する。低潮線以下4mぐらいまではナラサモ、アカモク、トゲモク、ノコギリモク、オオバモク、ヨレモク、ヤツマタモク、マメタワラ、アラメ等のホンダワラ科を中心に混生林を形成している。 この帯位ではその他、緑藻のアサミドリシオグサ、ミル、ウチワサボテングサ、紅藻のユカリ、ホソユカリ、ホソバナミノハナ等が場所によっては群落を形成している。5〜8mにかけてはアラメのほぼ単一な海中林が見られ、さらに8〜20mにかけては、クロメ(前回カジメと記載)のよく発達した海中林が見られる。

 

現存・消滅藻場総括表

海 域 名

現 存 藻 場 消 滅 藻 場
調査区数 面 積(ha) 調査区数 面 積(ha)
唐津・伊万里 58 1,268 1 1
         
合   計 58 1,268 1 1

 

 

(2)現存、消滅藻場一覧表

現存・消滅藻場一覧表

 

調査区
番 号
地図
番号
海 域 名 市町村名 地     名 タイプ
番 号
面 積(ha)
現存藻場 消滅藻場
 16唐津・伊万里浜玉町浜崎24120
 211唐津・伊万里唐津市高島24150
 311唐津・伊万里唐津市鳥島24130
 411唐津・伊万里唐津市大島24100
 511唐津・伊万里唐津市唐房2430
 611唐津・伊万里唐津市鳩川2450
 711唐津・伊万里唐津市相賀1 20
 810唐津・伊万里唐津市神集島24700
 910唐津・伊万里唐津市神集島24120
1010唐津・伊万里唐津市相賀24160
1110唐津・伊万里唐津市24180
1210唐襖・伊万里唐津市先部2460
1310唐津・伊万里唐津市横野24280
1410唐津・伊万里唐津市゜小友24120
1510唐津・伊万里呼子町平瀬24140
1610唐津・伊万里呼子町小川島241210
1710唐津・伊万里呼子町川島24160
1810唐津・伊万里呼子町鷹島24180
1910唐津・伊万里呼子町尾ノ下鼻24120
2010唐津・伊万里呼子町加部島24480

 

調査区
番 号
地図
番号
海 域 名 市町村名 地     名 タイプ
番 号
面 積(ha)
現存藻場 消滅藻場
2110唐津・伊万里呼子町加部島2480
2210唐津・伊万里呼子町加部島2450
2310唐津・伊万里呼子町加部島24350
2410唐津・伊万里呼子町2 30
2510唐津・伊万里呼子町弁天島24300
2610唐津・伊万里呼子町ワタリ2420
2710唐津・伊万里鎮西町加唐島241480
2810唐津・伊万里鎮西町松島24620
2910唐津・伊万里鎮西町先部24150
3010唐津・伊万里鎮西町波戸24700
3110唐津・伊方里鎮西町米納戸24120
3210唐津・伊万里鎮西町不明2450
3310唐津・伊万里鎮西町串崎24320
3410唐津・伊万里鎮西町馬渡島241300
3510唐津・伊万里玄海町値賀崎24120
3610唐津・伊万里玄海町値賀崎2470
3710唐津・伊万里玄海町リカ崎2450
3811唐津・伊万里玄海町本村24200
3911唐津・伊万里玄海町戸崎24180
4011唐津・伊万里玄海町平瀬24120

 

調査区
番 号
地図
番号
海 域 名 市町村名 地     名 タイプ
番 号
面 積(ha)
現存藻場 消滅藻場
4111唐津・伊万里玄海町高岩鼻24200
4211唐津・伊万里玄海町松ケ崎2 670
4311唐津・伊万里玄海町金ノ手1 30
4411唐津・伊万里肥前町寺浦1 50
4511唐津・伊万里肥前町大崎24360
4611唐津・伊万里肥前町向島24450
4711唐津・伊万里肥前町向島24150
4811唐津・伊万里肥前町綾崎2450
4911唐津・伊万里肥前町不明24100
5011唐津・伊万里肥前町星賀24100
5111唐津・伊万里肥前町大ケ崎2 30
5211唐津・伊万里肥前町不明1 20
5312唐津・伊万里伊万里市塩屋1 60
5412唐津・伊万里伊万里市漁港1 60
5512唐津・伊万里伊万里市不明1 30
5612唐津・伊万里伊万里市牧島1 60
5712唐津・伊万里伊万里市越島1 50
5812唐津・伊万里伊万里市浦の崎1 0.51
     12681

 

 

(3)現存、消滅藻場分布図

 

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