31. 高知県

 

(1) 分布及び消滅状況の概要
 現存藻場
 高知県下は太平洋に面した土佐湾海域だけであり、中央部は長く砂浜地帯が続き、岩礁域の面積が少ない。黒潮分流の影響は足摺半島と室戸岬に強く、湾中央部の手結や横浪半島の沿岸海域にもサンゴ類がみられるほどである。
 土佐湾にみられる藻場のなかで海草の繁茂するところ、アマモ場はきわめて少なく、1か所でヘクタールに達するところはなかったが、浦ノ内湾、四万十川河口、宿毛湾にかなりのアマモ群落が点在している。土佐湾の藻場の多くはガラモ場であり、土佐湾中央部では、ヨレモクモドキやヤツマタモクなど温海域に多くみられる種類から構成される群落が多く、足摺半島など黒潮の影響の強いところはフタエモクやコブクロモクなど暖海域に多くみられる種類からなる群落となっていた。トゲモクは、土佐湾全域に広く分布していた。潮間帯下部から水深2mほどの浅いところには、ヒラネジモクが多くみられた。なお前回の報告で、ヨレモクと書かれたものはヨレモクモドキ、ネジモクと書かれたものはヒラネジモクと和名を変更された。報告書を比較するときに注意されたい。
 コンブ場は、土佐湾が温暖域のためにない。アラメ場として、カジメとアントクメ群落がみられる。なお現在カジメとされている土佐湾産のものは、典型的な形態と少し異なり、目下この仲間について検討されている。将来クロメと和名が変更される可能性もある。また前回の調査以後、水産試験場が中心となってカジメ場造成が行われ、成功したところが4箇所ある。そのなかでヘクタール以上の藻場となったところは、土佐湾中央部の横浪半島沿岸海域にある。
 ワカメは、以前土佐湾に自生していなかったが、10年ほど前から須崎湾奥部にみられるようになった。これは石灰運搬船により運ばれてきたものと思われるが、大きな群落を形成するには至っていない。
 テングサ場は、足摺半島以西(土佐清水・大月町・宿毛)と室戸岬周辺に多くみられ、以前は良く採取されていたが、近年ほとんど採取されなくなった。ただし最近は再び採取されはじめた。
 アオサ場は浦戸湾、浦ノ内湾、宿毛湾にみられ、アオノリ場は四万十川河口域に多く見られた。
 土佐湾の藻場の繁茂状態は、前回の調査時と比較して全域にわたって回復傾向にある。この原因は、前回調査時には黒潮の接岸が続き、高い水温が持続され、海藻の生育には悪い条件となっていた。そのために、「磯焼け」傾向が多くのところで起こった。今回の調査で、「藻場が減少」という話しは殆どの地域で聞かなかった。また前回の調査の時には、多くのところで堤防や港湾工事が行われていた。最近これらの工事も少なくなり、沿岸域が安定してきて海藻の繁茂に適してきたと思われる。
 室戸岬東部域は、ガラモ場とともに、広い面積にわたって良く繁茂しているテングサ場(高岡を中心として)とカジメ場が見られるのが特長である。前回の調査のときには、カジメが一旦消滅し再び見え始めたころであったが、その後も分布域は拡大し、繁茂状態も増大傾向にある。
 室戸岬西部域は、砂浜域が広くガラモ場の少ないところである。大きな川も入江もないので、栄養潮の補給も少ないと思われ、海藻の繁茂状態の他の区域と比較して良くない。
 土佐湾中央部域は、砂浜域に突出した半島の岩礁にガラモ場がみられる。夜須町地先 には広いカジメ群落があり、安定した群落を形成している。浦ノ内湾にはアオサ場がみ られ、須崎湾には、ワカメ群落が出現し、移植により、新たにカジメ場が形成されたり、 最も藻場の変化の激しいところである。
  足摺半島東部は、ガラモ場が主であるが、前回磯焼けの著しいところであった。今回の調査で、最も海藻の繁茂の回復傾向がみられたところである。特にアワビの餌料として、有用なアントクメ(アラメ場)の回復が著しかった。磯焼けの回復の原因は、海峡の変化も考えられるが、ウニの採取が絶えず行われ、食害が押さえられたと思われる。
 豊後水道・宿毛湾域は、ガラモ場とテングサ場の多い所である。やはり以前磯焼けの 傾向がみられたところであるが、今回回復傾向がみられた。その原因の一つとして、養 殖が盛んになり適度の栄養潮の補給がなされたためと思われた。
 
 消滅藻場
 今回の調査で、消滅した藻場はない。

 

 

現存・消滅藻場総括表

 

海 域 名

現 存 藻 場 消 滅 藻 場
調査区数 面 積(ha) 調査区数 面 積(ha)
土 佐 湾 74 1,799 0 0
         
合   計 74 1,799 0 0

 

<調査方法>
 調査方法は、主に貝類やウニを採取している漁業者の船を使用し、潜水し、現地確認調査を行った。また各地の漁業組合を訪れ、藻場の状況を聞くとともに打ち上げ海藻などを採取し種類の確認を行った

 

 

(2)現存、消滅藻場一覧表

現存・消滅藻場一覧表

 

調査区
番 号
地図
番号
海 域 名 市町村名 地     名 タイプ
番 号
面 積(ha)
現存藻場 消滅藻場
1 1 土佐湾 東洋町 甲     浦 2 3  
2 1 4 40  
3 1 東 洋 町 地 先 8 11  
4 1 生 見 地 先 2 4  
5 1 松  下  鼻 6 4  
6 1 相 間 地 先 2 5  
7 4 野  根  川 6 10  
8 4 野 根 地 先 2 5  
9 4 御     崎 2 10  
10 4 室戸市 佐喜浜町都呂 2・4 25  
11 4 鹿  岡  鼻 6 100  
12 5 椎     名 4 30  
13 5 高     岡 6 300  
14 5 坂     本 2 15  
15 5 津     呂 2 15  
16 5 行  当  岬 2・4 8  
17 9 安芸市 河     野 2 5  
18 8 八     流 4 10  
19 8 夜須町 手 結・住 吉 4 180  
20 17 須崎市 浦 の 内 湾 7 65  
21 17 久     通 4 200  
22 17 神     島 2 12  
23 17 中  の  島 2・4 16  
24 17 戸     島 2・4 10  
25 17 コ ウ ギ ノ 鼻 4 3  
26 17 角  谷  岬 4 9  
27 17 久保宇津地先 2・4 7  
28 17 中土佐町 青  木  鼻 8 7  
29 18 双  名  品 2・4 36  
30 18 大  津  崎 4 10  
31 18 上 の 加 江 2 14  
32 18・22 窪川町 志     和 2・4 5  
33 22 冠     崎 2 10  
34 23 興津(島 戸) 2 8  
35 23 佐賀町 熊  ノ  浦 2 9  
36 23 明     神 2 10  
37 23 白  浜(北) 4 5  
38 23  〃  (南) 2・4 5  
39 23 大方町 伊  の  岬 2・4 7  

 

調査区
番 号
地図
番号
海 域 名 市町村名 地     名 タイプ
番 号
面 積(ha)
現存藻場 消滅藻場
40 23 土佐湾 大方町 伊    田 4 5  
41 23 上川口(東) 2・4 15  
42 23  〃 (西) 2・4 20  
43 27 田  野  浦 2・4・7 30  
44 27 出     口 4 12  
45 27 中村市 平 野 の 浜 4 32  
46 27 竹  島  川 7 31  
47 27 四 万 十 川 7 130  
48 27 初     崎 7 20  
49 27 清水市 米     浦 2 3  
50 27 2 3  
51 28 伊 予 駄 馬 2 16  
52 28 大 谷 地 先 4 15  
53 28 赤  碆  東 4 20  
54 28 足  摺  岬 8 2  
55 28 ス ス キ 碆 2・4 7  
56 28 松 尾 地 先 2 16  
57 28 臼     碆 2 15  
58 28 長     崎 2 3  
59 28 遠  見  崎 2 10  
60 28 歯  朶  浦 6 5  
61 28 貝 の 川 浦 2 2  
62 28 叶     崎 2 20  
63 28 大月町 小  才  角 2・6 10  
64 32 大 堂 海 岸 6 4  
65 32 浅  碆  崎 6 12  
66 32 柏     島 6 14  
67 32 柏  島  東 2・6 6  
68 32 一  切  塔 2 6  
69 32 安 満 地 地 先 2 10  
70 31 泊     浦 6 5  
71 31 泊 浦・白 壱 6 2  
72 31 宿毛市 内 外 の 浦 2・6 5  
73 31 小     浦 2 30  
74 31 松 田 川 河 口 7 35  
               
               
               
          1,799  

 

 

(3)現存、消滅藻場分布図

 

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