23. 鳥取県
(1) | 分布及び消滅状況の概要 |
1 | 現存藻場 |
鳥取県の漁場環境については、鳥取県水産試験場による、各種の調査がある。1960年の「沿岸漁業集約経営調査報告書」は、鳥取県中部海域の水深100mでの底質、底棲生物の最初の総合的調査であった。それ以後、県の東部や西部の調査をして、鳥取県沖の全体的な底質や生物の分布の調査が一応終った。この時の300点以上の採泥によって、水深20mから40mの付近に礫が存在すること、褐色の被覆におおわれた石英の砂粒が、水深20m以上の沿岸帯の底質中に含まれていることが確認された。 | |
鳥取県水産試験場では、1977年の「大規模増殖開発事業調査報告書」、1981年の「大規模増殖場開発事業調査報告書(中部地区、中山地区)」などの調査を行った。1977年の調査は、長尾鼻付近の底質、漂砂、海流及びヒラメ資源の動向などを研究している。1981年の調査は、海底地質構造の推定をし、生物(底棲生物や藻類)の詳しい報告を行っている。 | |
地質調査所による、「鳥取沖海底地質図」「鳥取沖表層堆積図」同説明書1990年も最近の成果である。この調査では、鳥取県沿岸を採泥器で102点のサンプルを採取している。そして、鳥取県沿岸では石英と岩片の含有が多く、堆積速度は海底における火山灰を基準とすると、10〜25cm/1000年であるとされた。また、大山火山の沖合いに火山岩の堆積、水深60m以深にも礫、粗砂があること、酸化鉄の被覆のある石英砂の粒子が認められると報告している。 | |
底質の地質を岩質からみると、主に4種類が認められる。東部の国立公園の海域は、花崗岩が底質の岩盤を形成している。また、白兎から酒ノ津、船磯には第三紀礫岩がみられ、長尾鼻から宇野にかけては安山岩である。そして、藻場が最も発達するのは大山北麓の逢束から淀江の海岸域であり、火山岩の転石や礫の底質である。これらの地質は、海底地形の影響をあたえ、藻場面積の広さにもかかわってくる。 | |
鳥取県における海藻は、アカモク、オオバモク、イソモク、スジモク、トゲモク、ノコギリモク、ヨレモク、ホンダワラ、などのガラモ場が主体である。 | |
緑藻の占める種類の割合はC/P値で示され、鳥取では0.5となっている。潮間帯やそれより若干下部では、アナアオサやミルなどが認められる。褐藻は、長尾鼻で70%、小浜で80%、泊で75%、赤碕で80%である。紅藻はマクサ、ソゾ、テングサ、サンゴモなどがある。3月、4月、5月にはワカメをはじめとする海藻がとられており、鳥取県中部にはワカメ場を設定している。 | |
海藻の経年変化については、漁業者、水産関係者の話ではやや減少傾向にあるようであるが、大きな変化とは考えられない。しかし、土木工事などによる陸地の地形変化が、河川によって土砂が藻場を広くおおう結果となり、影響があらわれているところがある。したがって、藻場造成の研究を今後も進めるとともに、陸地の土木工事、自然環境対策も必要であろう。 | |
2 | 消滅藻場 |
県内においては、消滅藻場はない。 |
現存・消滅藻場総括表
海 域 名 |
現 存 藻 場 | 消 滅 藻 場 | ||
調査区数 | 面 積(ha) | 調査区数 | 面 積(ha) | |
鳥 取 | 23 | 1,168 | 0 | 0 |
合 計 | 23 | 1,168 | 0 | 0 |
<調査実施方法>
本調査は、既存の報告資料からリストアップし、これに1990年の夏に調査した浦富海岸、網代・田後海域(調査区番号13)、酒ノ津(調査区番号7)、赤碕海域(調査区番号18)の観察も加えて報告する。
鳥取県水産試験場作製の5万分の1海図、および6万5千分の1海図、8千分の1空中写真(カラー)、および各種地形図を利用した。
藻場の分布については、基本的には鳥取県水産試験場によって確認された藻場の分布図をそのまま利用した。しかし、空中写真によって若干改変した部分もある。
調査区は1978年度と同じ23区で、面積も1,168haと変わらない。大部分の藻場は陸岸に接しているが、海士島(調査区番号6)は島の周囲に発達している。
また、既存資料調査では前述した以外に、佐野・小林氏の「砂浜海岸の生産I、II、III、IV」1976、1977や古田・櫻井の「磯場増殖試験」1983などを参考とした。
ヒヤリング調査は、古田晋平が担当した。
現地確認調査は、8月23日赤碕で潜水調査によって底棲生物の調査をした。また、9月6日酒ノ津で音響測深機による海底地形調査を行った。また、9月9日に浦津海岸の鴨ケ磯から菜種島西にかけてと、黒島から南にかけての海底地形および生物調査を行った。
(2)現存、消滅藻場一覧表
現存・消滅藻場一覧表
調査区 番 号 |
地図 番号 |
海 域 名 | 市町村名 | 地 名 | タイプ 番 号 |
面 積(ha) | |
現存藻場 | 消滅藻場 | ||||||
1 | 3 | 鳥 取 | 岩 美 町 | 陸 上 | 2 | 4 | |
2 | 3 | 〃 | 〃 | 羽 尾 | 2 | 19 | |
3 | 3 | 〃 | 〃 | 網 代・田 後 | 2 | 73 | |
4 | 3 | 〃 | 〃 | 大 谷 | 2 | 5 | |
5 | 3 | 〃 | 福 部 村 | 岩 戸 | 2 | 7 | |
6 | 6 | 〃 | 〃 | 海 士 島 | 2 | 27 | |
7 | 6 | 〃 | 気 高 町 | 酒 ノ 津 | 2 | 116 | |
8 | 6 | 〃 | 〃 | 長 尾 鼻 | 2 | 5 | |
9 | 6 | 〃 | 青 谷 町 | 〃 | 2 | 11 | |
10 | 10 | 〃 | 〃 | 井 手 | 2 | 6 | |
11 | 10 | 〃 | 泊 村 | 小 浜 | 2 | 16 | |
12 | 10 | 〃 | 〃 | 泊 | 2 | 5 | |
13 | 10 | 〃 | 〃 | 宇 野 | 2 | 2 | |
14 | 10 | 〃 | 羽 合 町 | 〃 | 2 | 4 | |
15 | 13 | 〃 | 東 泊 町 | 逢 束 | 2 | 39 | |
16 | 13 | 〃 | 〃 | 八 橋 | 2 | 31 | |
17 | 13 | 〃 | 赤 崎 町 | 別 所 | 2 | 31 | |
18 | 13 | 〃 | 〃 | 赤 碕 | 2 | 176 | |
19 | 13 | 〃 | 中 山 町 | 御 崎 | 2 | 126 | |
20 | 13 | 〃 | 〃 | 塩 津 | 2 | 60 | |
21 | 13 | 〃 | 名 和 町 | 下 水 料 | 2 | ||
21 | 16 | 〃 | 〃 | 御 来 屋 | 2 | 310 | |
21 | 17 | 〃 | 〃 | 富 長 | 2 | ||
22 | 17 | 〃 | 大 山 町 | 平 田 | 2 | 80 | |
23 | 17 | 〃 | 淀 江 町 | 淀 江 | 2 | 15 | |
計 | 1,168 |