13. 富山県

 

(1) 分布及び消滅状況の概要
 現存藻場
 富山湾は面積約2,100km2、最大深度1,250m、海岸線延長95kmの外洋性内湾である。富山湾の海藻相については大島(1952)や藤田・泉(1989)などの研究があり、300種近い種類が挙げられている。しかし、湾の沿岸は急深の場所が多く、砂浜海岸の占める割合が大きいために藻場の分布域(20m以浅)は湾全体の1%未満である。
 朝日町宮崎では県東部随一の岩礁地帯が発達しており、点在する離れ岩を中心にクロメ、アカモク、サナダグサ、カニノテ、無節サンゴモなどがそれぞれ群落を形成している。入善町各地先では砂地に点在する転石地帯にマクサとツルアラメの混成群落が発達しているが、所々「ヌケ」と呼ばれる磯焼け地帯となっている。また、入善町沿岸では県内で最も深くまで海藻が生えていると考えられており、今回初めて確認された黒部市沿岸の藻場と同様、今後詳細な調査が望まれる。
 魚津市から滑川市にかけての転石地帯ではマクサ、アナアオサ、ヘラヤハズ、ベニスナゴ、ホソユカリ、アヤニシキなどが混在して海中草原を成しているが、ワカメとアカモク以外の大形褐藻類は少なく、沖合には無節サンゴモ群落が点在している。
 高岡市及び氷見市沿岸にはガラモ場が発達し、阿尾から石川県境にかけてのガラモ場は湾内最大の藻場で、全体の40%以上に及んでいる。ここではノコギリモク、ヤツマタモクなど十数種のモク類が海中林を形成しており、周囲にはマクサ、アマモ及びツルアラメの各群落が点在する。特に、虻が島周辺は最も生物相の豊富な場所として古くから知られている。最近、初夏に泊から大境にかけての海底や海中林地帯がアオノリ類に覆われる傾向が見られる。
 なお、今回の調査には含めていないが、富山湾沿岸では現在300基余りの離岸堤が敷設されており、マクサ、ツノマタなどの海藻が多く付着している。
  
 消滅藻場
   前回の調査以降、消滅したのは新湊市放生津地先のテングサ群落で、富山新港の拡張工事のために埋め立てられたものである。なお、前回の調査で消滅したとされた藻場のうち、魚津市本新町、滑川市吉浦及び荒俣の藻場は現存している。

                     

現存・消滅藻場総括表

海 域 名

現 存 藻 場 消 滅 藻 場
調査区数 面 積(ha) 調査区数 面 積(ha)
富 山 湾 23 781 1 5
         
合   計 23 781 1 5

 

<調査実施方法> 

 藻場は平成2年9月8日撮影の海岸線航空写真に基づいて区分し、縁を透明板にトレースし、面積計(デジタルプラニメーターPLANIX7)を用いて面積を求めた。藻場の下限水深が航空写真で認めにくい場合は、現地でSCUBA潜水を行うか資料調査によって調べ、国土地理院発行の等深線入り地図(2万5千分の1)で沿岸からの距離とした。植生の粗密及び優占種は出来る限り現地SCUBA潜水調査によって確認し、ヒアリング調査で補った。経年変化は前回の調査資料が不明であるため、ヒアリング調査に基づいて判断した。 

 

ヒアリング調査で御協力いただいた方々及び機関は下記の通りである。 

 朝日町:宮崎漁業共同組合、加藤喜代治(漁業)

 入善町:横山漁業共同組合、吉原漁業共同組合、浜田征雄(潜水業)

 黒部市:下田喬士(潜水業)、塚田行人(潜水業)

 魚津市:道下漁業共同組合、塚田行人(潜水業)

 滑川市:滑川漁業協同組合、道下漁業共同組合

 高岡市:森川秀雄(漁業)

 氷見市:川辺春雄(漁業)、田口敏雄(漁業)

 

 

(2)現存、消滅藻場一覧表

現存・消滅藻場一覧表

 

調査区
番 号
地図
番号
海 域 名 市町村名 地    名 タイプ
番 号
面 積(ha)
現存藻場 消滅藻場
 1 1 富 山 湾 朝 日 町 宮   崎 4  43  
 2 1 入 善 町 春   日 4  3  
 3 1 横   山 4  4  
 4 1・2 田   中 6  96  
 5 2 木   根 6 143  
 6 2 黒 部 市 荒   俣 6  5  
 7 2 生   地 6  4  
 8 2・3 魚 津 市 青   島 6  80  
 9 3 三 ケ   6  9  
10 3 滑 川 市 荒   俣 6  19  
11 3 中 川 原 6  9  
12 4 新 湊 市 放 生 津 町 6   5
13 5 高 岡 市 岩   崎 6  13  
14 5 氷 見 市 唐   島 2  1  
15 5 栄   町 2  4  
16 5・6 阿   尾 2  40  
17 6 藪   田 2  51  
18 6 2  92  
19 6 小   境 2  18  
20 6 大   境 2  3  
21 6 姿 2  42  
22 6 虻 が 島 2  28  
23 6 灘   浦 2  68  
24 6 2  6  
          781 5

 

 

(3)現存、消滅藻場分布図

 

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