V.考 察

 

 第4回調査に於けるトンボ数は、邦産種総数203件のトンボ種を扱った。この数のうち17件は亜種を代表するもので、正確にいえば、今回扱った邦産全部としては186種17亜種というべきである。

 本調査の主体となる分布図についての主要な問題点は、分布図に掲載したコメントの通りであるが、そのうちほぼ十分な情報によって分布パターンが十分に示されたと思われるものが106件(種・亜種)あり、全体の過半数を僅かにこえたことになったが、この中には多数の希少種及び重要種が含まれている。

 次のやや情報量の不足のものは41件(種・亜種)あり、これを今後充実させるには大きな困難はないと思われる。一方情報不足とせざるを得ないものが56件(種・亜種)あって、その理由としては、第1には情報量が極めて多いために収録に際して脱落したもの、又は情報源が分散しており、且つそれらが参照に容易でない地域的な文献、或は普通種であるが故に文献上に取り上げられていないケースも多々あることによると思う。これらの欠落を今後も逐次埋めてゆかねばならないが* 重要種については今回概ねとり入れられた感のあることは満足すべきことであると思う。

 今後の本調査を容易にする一案としては、蜻蛉数の特性を考慮して次のような扱いを加えることも好ましいと考える。

 

1.全体のほぼ半数に当たる貴重種、重要種については、従来の方法によって、採集地点又は棲息地点をプロットする。

 

2.残りのうち広範分布種、特に移動性種(例:ウスバキトンボ、ハネビロトンボ、ギンヤンマ、オオギンヤンマ、シオカラトンボ、アキアカネ等)については、それらの採捕させた地点を正確に指示しても生態的には意味ない場合が多いので、一案としてはその発見地の府県別程度に於て、単に「+」印で所在を示すにとどめる程度のこととする。当然これらの広範普通種は予め指定しておく必要があると思う。

(朝比奈 正二郎)

* 既に第5回調査の資料として準備している。

 

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