4 近年における迷チョウの土着

 約20年ほど前から迷チョウによる土着(帰化)と思われる現象が南西諸島で目立つようになった。発見以後現在まで連続的に発生を続け、完全に土着したと認められるのは、ベニモンアゲハ(1968年以降)、タイワンキマダラ(1973年以降)、バナナセセリ(1971年以降)、テツイロビロウドセセリ(1974年以降)、クロボシセセリ(1973年以降)の5種である。以上のうち沖縄本島に土着したバナナセセリは人為的な移入にほぼ間違いがなく、恐らくはこれは米軍の輸送機によってベトナムから持ち込まれたものである。他の4種は恐らく南方からの迷チョウの定着であろうと推定されるが、わずか数年の間に(大きく見ればほぼ同時期に)どうしてこういう現象が起こったのか、その理由は明らかでない。

 そのほかウラベニヒョウモン(ウラベニヒョウモンモドキ)は1964年に石垣島・西表島で発見され、同地域では1980年代のはじめまでほぼ連続的に発生が認められているが、定着するに至らなかったものと思われる。沖縄本島では1973年に多数発生したが、その年限りで消滅した。

 以上の迷チョウによると思われる国外種の定着とその後の分布拡大については筆者がまとめたものがあるので(白水.1985)、ここでは省略する。

(白水 隆)

引 用 文 献

白水 隆. 1985. 白水隆著作集T. x+816pp.白水隆先生退官記念事務会, 福岡.

 

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