4.ニシン目
カタクチイワシ科
○エツ Coilia nasus
今回は福岡、佐賀、熊本各県から報告があった。メッシュ図は分布の実状を示しているが、やや情報不足。わが国において本種は有明海湾奥部とそこに注ぐ河川の河口にすむ。5〜7月の増水時に主に2〜3歳群が筑後川に溯上、産卵し、その際に刺網で漁獲する(田北,1967;石田・塚原,1972;松井ほか,1986;石田,1990)。漁業者によれば、筑後大堰完成(昭和60年)の後、漁獲量は減少してきた。福岡県の矢部川河口や佐賀県六角川河口でも多少は産卵するらしい。環境庁(1991)は本種を希少種、六角川のエツ個体群を保護に留意すべき地域個体群としている。
(木村 清朗)
引 用 文 献
石田宏一. 1990. 有明海エツ(Coilia nasus Temminck et Schlegel)の成長について. 水産増殖, 38(2):135-145.
石田宏一・塚原博. 1972.有明海および筑後川下流域におけるエツの生態について. 九州大学農学部学芸雑誌, 26(1-4):217-221.
環境庁(編). 1991. 日本の絶滅のおそれのある野生生物−レッドデータブック−脊椎動物編. (財)日本野生生物研究センター. 東京. 331pp.
松井誠一・富重信一・塚原博. 1986. エツCoilia nasus Temminck et Schlegelの生態学的研究. I. 溯上群の生態に関する予報. 九州大学農学部学芸雑誌, 40(4):221-228.
田北徹. 1967. 有明海産エツCoilia sp.の産卵および初期生活史. 長崎大学水産学部研究報告, 23:107-122.