2.第4回自然環境保全基礎調査動植物分布調査実施要綱

 

1.目的

本調査の目的は、専門研究者のみならず広く一般の自然愛好者の協力も得て、動植物の分布に関する知見を集大成することである。なお、本調査によって次のような成果を期待するものである。

 

(1)生物相に関する記録の収集と保存

人為的または自然的要因により変化するわが国の生物相を一定間隔で網羅的に記録することによって、生物地理学・生態学等の自然科学の基礎資料となる。

 

(2)動植物の保護管理のための科学的情報の提供

生物種ごとの分布のパターンや分布域拡大・縮小の傾向等を把握することにより、動植物の保護管理のための施設への客観的判断が可能となる。

 

(3)環境診断

人間をも含めた動植物の生活の場としての環境が正常に機能しているのかどうかを、特定の生物種を環境指標種として用いることにより、判定することが可能となる。

 

(4)各種調査データの蘇生

特定の目的に利用が限られていた各種の調査結果や、公開の機会が限られていた個人の観察記録などが、動植物の分布記録に関する体系的・汎用的な方法の提示により、有効な分布情報として蘇生される。

 

(5)環境教育への寄与

多くの人が身の回りの自然を注意深く観察し、自然の多様性、自然の仕組みなどに関心を寄せることになり、環境教育の新たな展開が図られる。

 

2.調査対象

本調査は、特定の分類群に属するすべての種についての分布状況を収集する全種調査および環境指標種として選定された種の分布情報を収集する環境指標種調査からなる。調査対象種は維管束植物、軟体動物、節足動物、脊椎動物の各群の中から、陸域、陸水域で生活史の一部または全部を過ごすものであって生物学的知見、特に分類学的知見が十分に蓄積されているものを選定する。なお、環境指標種については、多くの人が識別しやすいものから選定する。

 

3.調査体制及び方法

本調査では、同定能力を有するものの自発的参加を得、調査研究活動や観察活動の際に得られる分布に関する知見の提供を受けるものとする。

 

(1)調査の体制およびその役割は次のとおりとする。

ア.環境庁

環境庁は、自然環境保全基礎調査検討会の下に、分類群別に動植物分布調査のための専門家による分科会を設け、次の検討を行う。

(ア)調査の基盤となる分類目録の整備

(イ)調査対象種の選定

(ウ)分布情報の点検

(エ)情報の分析

(オ)情報の公開・管理基準の策定

(カ)その他、専門的見地からの各種検討、指導、現地調査等

イ.調査員

調査の主旨に賛同し、情報提供を行う者を調査員とする。

ただし、全種調査の調査員は専門的知見を有するものとする。環境指標種調査の調査員はー般公募による。

調査員は動植物の分布に関する必要な情報を調査票に記入し、環境庁に送付するものとする。

 

(2)調査は次の方法により実施するものとし、詳細は「調査の手引書」等による。

ア.分布情報の収集

調査員は直接野外観察または過去の観察記録に基づき、調査対象種の分布に関する情報についての必要事項を調査票に記入し、環境庁に送付する。

分布に関する情報は、調査員が直接または自ら採集した記録に基づくことを原則とするが、博物館、大学、個人等が所蔵している標本で必要な要件を備えている場合にはそれによることができる。

イ.情報の集成・管理

環境庁は調査員から送付された情報を集成し、すみやかに公開するものとする。また、継続的に提供される情報についても整備し、管理に努めるものとする。

 

目次へ