2.2.10過去における鳥獣分布調査

 

●分布図の作成
 いくつかの地域から産物帳等による分布情報が得られており、過去と現代の鳥獣名称の
 読み替えに問題のない次の種類について1730年代の分布図を作成した。

○作成した分布図

<獣類>  ジャコウネズミ  
 ニホンザル      
 ウサギ(ノウサギ)     
 クマ(ツキノワグマ・ヒグマ)
 オオカミ       
 キツネ      
 テン       
 イタチ      
 カワウソ      
 アシカ    
 イノシシ       
 シカ          
 カモシカ
<鳥類>  コウノトリ
 ヘラサギ
 トキ
 ガン類
 マガン
 カリガネ
 ヒシクイ
 ハクガン
 ハクチョウ
 (オオハクチョウ・コハクチョウ)
 ワシ類
 ハヤブサ
 ツル類
 カラスバト
 アオバト
 力ッコウ
 カワセミ・アカショウビン
 キクイタダキ  

●過去と現代の分布の比較
 分布図を作成した種のうち、現在の分布と比較対照していくつかの知見が得られた種に
 ついて若干の考察を加えた。対象としたのは以下の18種及び種グループである。
1)現在とあまり分布の違いがない種
 シ力、カワセミ・アカショウビン
2)産物帳の時代は全国で広く見られていたが、現在絶滅したか又は絶滅の危機にある種
 オオカミ、カワウソ、アシカ、コウノトリ
3)現在の分布と産物帳の記載と比較して、地域的に絶滅した個体群があると考えられる
 種
 ニホンザル、クマ、キツネ、イノシシ、カモシカ、カラスバト
4)現在の渡来地と産物帳の時代の渡来地とが大きく異なると考えられる種
 (水辺環境の変化をうかがわせる)
 へラサギ、ガン類、ハクチョウ、ツル類
5)現在の分布と産物帳の記載を比較して興味ある変化を示している種
 ジャコウネズミ、イタチ
●産物帳等の文献の得られた地域を図2-2-29、30に、また作成した江戸時代の鳥獣分
 布図の例を図2-2-31、32、33に示す。