2.2.9海域生物環境調査

 


 本調査により、日本列島沿岸における潮間帯生物の水平分布や鉛直分布の状況について、
量的な側面も含め、海域毎に把握するとともに、潮間帯生物のモニタリングとして、今後、
継続的にテータを蓄積し、環境の変動とのかかわりを見ていくための基盤を整備した。

1.水平分布

 植物、動物ともに砂泥浜では5地区以上、磯浜等では10地区以上の比較的高い出現頻度
を示した種について分布図を作成(分布図例、図2-2-24、25)。

<砂泥浜>
 ●植物
 砂泥浜の植物相は、貧弱であり、対象種となったのは17種で、5地区以上で出現したの
 は、アナアオサとオゴノリのわずか2種であった。これらの種類は内湾の砂泥浜に特有
 の種類である。
 ●動物
 対象となったのは259種であるが、5地区以上で出現したのは15種と少ない。
 これらのうち出現頻度の高い種は、アサリ、ヒメスナホリムシ、ハマダンゴムシ、ヒメ
 ハマトビムシなどである。

<磯浜等>
 ●植物
 対象となったのは281種であり、10地区以上で出現したのは32種である。
 出現頻度の高い種は、アナアオサ、ヒジキ、ウミトラノオ、マクサ、ピリヒバ、イバラ
 ノリ、オキツノリ、カイノリ、ツノマタなどである。
 ●動物
 対象となったのは360種であり、10地区以上で出現したのは54種である。
 出現頻度の高い種は、ヨロイイソギンチャク、ヒザラガイ、ベッコウガサガイ、ヨメガ
 カサガイ、ウノアシガイ、コウダカアオガイ、コガモガイ、イシダタミガイ、クボカイ、
 コシタカガンガラ、スガイ、アラレタマキビガイ、マキビガイ、オオヘビガイ、ピボニ
 シ、レイシガイ、ムラサキインコガイ、トマヤガイ、アサリ、カメノテ、イワフジツボ、
 クロフジツボなどである。

2.種類数

 地区毎の種類数は図2-2-26、27のとおりであり、海流の接岸状態、潮位差の相違、
地形タイプ等の環境条件を反映していると考えられる。
 植物については大きな相違は見られないが、動物については砂泥浜、磯浜等ともに日本
列島南部で多く、北部で少ない傾向を示している。

3.鉛直分布

 地区毎の生物の潮位帯別出現量を表す鉛直分布図を作成し、地区毎の生物群集の帯状構
造を把握するとともに、代表的な海域における調査地区の鉛直分布について、前回調査
(53年度)結果との比較を行った(図2-2-28)。
 調査条件の違い等により、今回の調査結果だけでは変化の実態が不明な点も多いが、東
京湾三枚州、三河湾竹島海岸等で多毛類やアナアオサが減少した一方、他の種の出現量が
増加しており、生息環境の良好化と考えられる事例も見られた。
 今後、生物の生息状況と環境変動とのかかわりについて、より精度の高い分析が可能と
なるよう、目的に応じた調査対象種の選定、調査地区の設定等を検討することが必要と言
える。