2.2.7河川調査

 

 

1.河川の改変状況

<水際線の改変状況>
●人工化された水際線(平水時に護岸等人工構造物と接している水際線)は、全国で
 2,441.5km、調査対象河川(区間)の21.4%であり、北海道の水系群や四国-太平洋
 (中・南)水系群では水際線の人工化率が低く、本州、四国の瀬戸内海へ注ぐ各水系群
 や九州-日本海水系群(1河川)、九州-東支那海水系群では水際線の人工化率が高い。
●第2回調査と比較すると、人工化された水際線は全国で249.3km(2.2%)増加してい
 る(表2-2-19)。

表2-2-19水際線の改変状況

実数:延長距離(km)     ( ):構成比(%)
調査年数
河川数
全体
自然の水際線
人工化された水際線
54年度
113
11,425.0
(100.0)
9,232.8
(80.8)
2,192.2
(19.2)
60年度
113
11,412.0
(100.0)
8,970.5
(78.6)
2,441.5
(21.4)
増減(△は減少)
△13.0
(0.0)
△262.3
(△2.2)
249.3
(2.2)

 

<河原の土地利用状況>
●対象となった河原の調査区間(河川区域内の陸部のうち幅100m以上の規模の向原をも
 つ区間)は、全国で5,055区間、調査対象河川(区間)全体の44.3%であり、土地利用
 状況別には、調査対象河川延長全体に対して自然地(33.3%)、農業地(7.6%)、未
 利用造成地(0.8%)、施設的利用地(2.6%)である。
●前回調査と比較すると、河原の調査区間は全国で134区間(1.2%)増加し、土地利用状
 況の変化は、自然地では28.5km(0.2%)減、農業地では93.0km(0.8%)増、施設的利
 用地では72.6km(0.6%)増であり、未利用造成地はほとんど変化がみられなかった(2
 -2-20)。

表2-2-20河原の土地利用状況

実数:延長距離(km)       ( ):構成比(%)
調査年度
構成
河原の土地利用
調査延長
河原の存在す
る区間延長
自然地
農業地
未利用造成地
施設的利用地
54年度
11425
4921(43.1)
3825.3(33.5)
774.3(6.8)
94.1(0.8)
227.3(2.0)
60年度
11412
5055(44.3)
3796.8(33.3)
867.3(7.6)
91.0(0.8)
299.9(2.6)
増減
(△は減少)
△13
134(1.2)

△28.5(0.2)
93.0(0.8)
△3.1(0.0)
72.6(0.6)
(注)構成比は調査延長全体に対する土地利用別の河原の延長の割合

<河畔の土地利用状況>
●河畔(河川の後背地で河川区域の外側100mの区域。なお、河畔は右、左岸からなるた
 め、集計にあたってはこれを合計して1つの値とした)の土地利用状況は、全国では、
 自然地36.9%、農業地47.0%、市街地、工業地16.1%である。
●前回調査と比較すると、全国では自然地の減少(576km、2.5%減)、農業地の増加
 (265km、1.2%増)、市街地・工業地の増加(285km、1.3%増)となった(表2-2-21)。

表2-2-21 河畔の土地利用状況

実数:延長距離(km)   ( ):構成比(%)
調査年度
調査延長
河畔の土地利用(右左岸の計)
自然地
農業地
市街地・工業地
54年度
22,850
9,004(39.4)
10,456(45.8)
3,390(14.8)
60年度
22,824
8,428(36.9)
10,721(47.0)
3,675(16.1)
増減
(△は減少)
△26
△576(△2.5)
265(1.2)
285(1.3)


<河川横断工作物>
 河川の物理的な改変であるとともに魚類の生息域を分断させる要素をもっという観点か
 ら河川横断工作物の存在状況を調査した。
●調査区間に河川横断工作物が存在しないのは、網走川、釧路川、浦内川の3河川である。
 また、工作物があっても魚道がうまく機能していることなどにより、調査区間に魚類の
 遡上を妨げる横断工作物が存在しない河川は、上記3河川を含め、全国で13河川である。
●上記の13河川のほかに、河口からの遡上可能区間割合が90%を越える河川は、四万十川、
 長良川等9河川である。これらの河川は調査区間の上流端までの魚類の遡上は不可能で
 あるが河川横断工作物の設置位置が上流側にあるため魚類の遡上への影響は少ないと思
  われる。
●河口からの遡上可能区間割合が10%に満たないのは芦田川、梯川等6河川で、このうち
 本州-瀬戸内海水系群が4河川を占める。
●遡上可能区間割合の平均は、全河川で58.9%であり、北海道の各水系群で高く、本州-
 瀬戸内海水系群、九州-日本海水系群、九州-瀬戸内海水系群で低い。
●河川横断工作物における魚道の設置割合は全河川で31%あり、それらの魚道のうち約12
 %はよく機能していない。
 また、魚類の遡上のために魚道が必要な工作物のうち、有効な魚道が設置され遡上可能
 となっているものは約40%、残りの約60%は魚道がないか、あるいは魚道があってもう
 まく機能しておらず、遡上不可能と判断された。

2.魚類の生息状況

●生息魚種類数が多いのは、信濃川、筑後川(63種)を最多として、ほとんどが本州の主
 要河川である。また、生息魚種類数の少ないのは北海道地方の河川(留萌川等)や、急
 流の河川(黒部川等)、流程の短い河川(天神川等)である(表2-2-22)。

表2-2-22 生息魚種類数の多い河川 (上位10河川)

河川名
調査延長(km)
生息魚種類数
信濃川
352
63
筑後川
122
63
長良川
147
62
淀川
76
62
高津川
82
60
紀の川
124
59
阿賀野川
205
54
雄物川
123
53
那珂川
154
52
木曽川
215
51

 

●全国の河川に広く分布する種は、アユ(97河川に生息)、オイカワ(同96河川)、ウグ
 イ(同92河川)などである。また分布の限られた種は、3河川以下にしか生息が見られ
 ない種でみると計41種であり、沙流川、淀川、筑後川、浦内川等がこれらの魚類の生息
 を支えている河川である。
●魚類相の変化をみると、オイカワ、アユ、コイ等主要魚種の生息河川数には大きな変化
 がみられなかったが、清水性のギギ類、トゲウオ類の一部では生息河川数の減少が見ら
 れた。
●外国産移入魚は第2回調査に比べ、オオクバス(ブラックバス)(25河川増)、ブルーギル
 (7河川増)タイリクバラタナゴ(6河川増)、カムルチー(4河川増)など、各地の
 河川で分布を拡大する傾向がみられ、交雑と生態的圧迫による在来種の減少が懸念され
 る(表2-2-23)。

表2-2-23増加した主な外来魚

魚種名 生息河川数
54年度 60年度
タイリクバラタナゴ 36 42
(ニッポンバラタナゴ)※ 9 4
カムルチー 39 43
オオクチバス
(ブラックバス)
8 33
ブルーギル 13 20
ティラピア 1 4

(注)ニッポンバラタナゴは移入魚ではないが
  タイリクバラタナゴとの比較のため、参
  考に記載した。

●放流が行われている河川は90河川である。放流量の最も多い河川は、稚魚放流(尾数表
 示)では天塩川(ワカサギが主体)、卵放流では江の川(アユが主体)である。また、
 放流量の多い魚種はアユ、サケ、コイ(稚魚放流)等である。
●漁獲の多い河川は、利根川、阿賀野川、球磨川をはじめとする河川であり、漁獲の多い
 魚種はアユ、ウグイ、コイ、サケ等である。アユは放流量、漁獲量ともにその量におい
 て抜きでている。

3.原生流域

●原生流域は、全国で100流域、211,879haであった(表2-2-24)。
●原生流域は北海道地方(37流域)、東北地方(31流域)に集中して存在し、西南日本で
 は離島(屋久島・西表島)に存在するのみである。
●改変により第2回調査以降原生流域に該当しなくなったのは、計11流域、17,386haであ
 る。原生流域のうち保全地域(自然公園・自然環境保全地域)の指定にかかわるのは計
 79流域であり、前回調査以降、保全地域の指定がなされたのは日高山脈襟裳国定公園の
 19流域をはじめとして計23流域である。

表2-2-24 生流域の変化

道県名
箇所数
面積(ha)

要件不備となった原生流域名
                (面積)

要因

面積の減少した原生流域名
            (減少面積)

要因 新規に選定された原生流域名
                (面積)
54年度
60年度
54年度
60年度
北海道
39
37
86,371
84,630
忠別川上流二見沢・アイシポップ沢
ポンクワウンナイ川流域
右股川上流部
大鴨津川上流部    (計5670ha)
森林伐採

森林伐採
林道

豊似川上流部

              (511ha)

道路

須賀川上流部
利別川上流部
             (計4440ha)

青森
8
3
10,082
10,082





岩手
5
4
9,753
6,631
本内川上流部(和賀川の支流)
               (1551ha)
治山施設
森林伐採
林道
和賀川上流部
              (1571ha)
潜水施設
道路
森林伐採

秋田
9
8
19,517
17,829
ノロ川上流部       (1688ha)
森林伐採



山形
12
11
21,351
19,352
朝日川上流部       (1929ha)
林道
根子川上流部      (70ha) 林道
福島
5
5
10,826
10,826





栃木
4
3
5,046
3,280
鬼怒川上流部馬板沢   (1671ha)
森林伐採
林道
鬼怒川上流部      (95ha) 冶山施設
群馬
4
4







新潟
9
9
20,206
20,206





富山
1
2
2,578
5,469




黒部川上流部     (2891ha)
石川
6
5
9,021
7,899
雄谷上流部         (1122ha)
わさび田
管理宿舎



長野
3
3
5,783
5,733





岐阜
3
3
3,491
3,491





静岡
2
1
2,905
1,232
逆河内上流部       (1673ha)
森林伐採
林道



鹿児島
2
1
3,427
1,345
小揚子川上流部      (2082ha)
森林伐採
林道



沖縄
1
1
4,129
4,129





(計)
108
100
224,181
21,1879
11流域          (17.386ha)

4流域          (2247ha)
3流域          (7331ha)

 

4.その他

 上記集計のほか、河川にかかわる保全地域の指定状況、河川の利用状況及び不快要因に
ついて集計した。以下はその概要である。

●河川にかかわる保全地域の指定状況をみると2,180区間、19.1%が保全地域に該当し、
 内訳では都道府県立自然公園の割合が高い。
●河川はアメニティ要素を多く備えた貴重な空間であり、風景探勝、ボートをはじめさま
 ざまなレクリエーションに利用されている。また、荒川、多摩川、淀川等大都市を控え
 た河川では、身近な自然として各種の利用が増加する傾向を見せている。
●河川の不快事項として多くあげられているのは水のにごり、ゴミ、砂利採取等であり、
 前回調査と比べて北海道-日本海水系群、本州-日本海水系群、九州-日本海水系群で
 は河川の不快事項に関する報告が減少しているのに対し、本州-瀬戸内海水系群(特に
 淀川、大和川)、本州-太平洋(中・南)水系群では各種不快事項の報告が増加してい
 ることが目立つ。