1.湖沼概要調査
●調査対象湖沼の湖沼面積の合計は2,380.08kuで、国土面積の0.63%にあたっている。
また、湖沼の分布は北海道及び東北日本に著しく偏っている。
●調査対象湖沼を成因別にみると、断層湖16、カルデラ湖16、火山湖59、堰止湖180、海
跡湖104、その他56、不明52である。
また、湖沼型別にみると、富栄養湖159、中栄養湖93、貧栄養湖128(以上は栄養塩の
調和した調和湖沼)、酸栄養湖21、鉄栄養湖1、腐植栄養湖66(以上、非調和型湖沼)
及び不明15である。
●調査対象湖沼全体の平均標高は494.27mである。平均標高を成因別にみると、火山湖が
1,309.14mと高く、海跡湖は3.04mと低い。この2つの成因タイプが他の成因の湖沼の
平均値と大きく離れている。
●平均標高を湖沼型別にみると、酸栄養湖、貧栄養湖、鉄栄養湖は高く、富栄養湖、腐植
栄養湖は低い。
●調査対象湖沼全体の平均面積は5.00kuである。平均面積を成因別にみると、断層湖(琵
琶湖等)、カルデラ湖(屈斜路湖等)の値が大きく、火山湖が小さい。
●平均面積を湖沼型別にみると、中栄養湖、酸栄養湖、富栄養湖、貧栄養湖、腐植栄養湖、
不明、鉄栄養湖の順に大きい。
●湖沼の形態で最大値を示すのは次に示す湖沼である。
標 高 二の池(長野) 2,905.0m
面 積 琵琶湖(滋賀) 669.20ku
最 大 水 深 田沢湖(秋田) 423.0m
平 均 水 深 田沢湖(秋田) 280.0m
容 積 琵琶湖(滋賀) 27.57km3
湖岸線延長 琵琶湖(滋賀) 231.4km
●今回の調査対象湖沼(483湖沼)のうち北海道の3湖沼(ポン沼、安藤沼、ミクル沼)
については、土砂の流入や植物の侵入等により、また新潟県の上堰潟では干拓により、
ほとんど湖の形状を留めなくなっていることが確認された。
これに噴火により埋没した東京都の新澪池を加えると、前回調査(54年度)以降、5湖
沼が自然的あるいは人為的要因により消滅した。
2.透明度調査
●透明度の全湖沼平均値は3.0mである。透明度の高い湖沼は摩周湖(25.0m)、然別湖
(19.5m)、倶多楽湖(19.0m)の順となっている(表2-2-14)。透明度の高い湖
沼の成因をみると、堰止湖、カルデラ湖が多く、湖沼型をみると貧栄養湖、酸栄養湖が
多い。
また、透明度の高さで上位の湖沼(20位まで)は、すべて国立公園または国定公園に指
定されている。
表2-2-14透明度の高い湖沼(上位20湖沼)
順位
|
湖沼名
|
透明度(m)
|
成因
|
湖沼型
|
自然公園
|
都道府県名
|
1
|
摩周湖
|
25
|
カルデラ
|
貧
|
国立
|
北海道
|
2
|
シカリベツコ
然別湖 |
19.5
|
堰止
|
貧
|
〃
|
北海道
|
3
|
クッタラコ
倶多楽湖
|
19
|
カルデラ
|
貧
|
〃
|
北海道
|
4
|
支笏湖
|
18
|
カルデラ
|
貧
|
〃
|
北海道
|
5
|
赤沼
|
16.5
|
堰止
|
貧
|
〃
|
青森
|
6
|
パンケ湖
|
15.9
|
堰止
|
貧
|
〃
|
北海道
|
7
|
中禅寺湖
|
13.5
|
堰止
|
貧
|
〃
|
栃木
|
8
|
洞爺湖
|
13
|
カルデラ
|
貧
|
〃
|
北海道
|
9
|
本栖湖
|
12.7
|
堰止
|
貧
|
〃
|
山梨
|
10
|
十和田湖
|
12.5
|
カルデラ
|
貧
|
〃
|
青森・秋田
|
11
|
大沼他
|
12
|
堰止
|
酸
|
〃
|
長野
|
12
|
オオハタイケ
大幡池
|
11
|
火山
|
貧
|
〃
|
宮崎
|
13
|
猪苗代湖
|
10.5
|
断層
|
酸
|
〃
|
福島
|
14
|
瑠璃沼
|
10.0*
|
その他
|
酸
|
〃
|
福島
|
14
|
丸沼
|
10
|
堰止
|
中
|
〃
|
群馬
|
16
|
大鳥池
|
9.8
|
堰止
|
貧
|
〃
|
山形
|
17
|
菅沼
|
9.6
|
堰止
|
貧
|
〃
|
群馬
|
18
|
オンネトー
|
9.5*
|
堰止
|
酸
|
〃
|
北海道
|
18
|
五色沼
|
9.5*
|
火山
|
酸
|
〃
|
福島
|
18
|
日向湖
|
9.5
|
海跡
|
貧
|
国定
|
福井
|
|
|
|
|
|
|
|
(注1)*印は全透。
(注2)透明度は、今回の調査で測定された値のうち最も高い値てある。
●透明度は測定時の条件によって値の左右されやすい指標ではあるが、長時間の時系列的
なデータから明らかに透明度が低下した湖沼(田沢湖)や水質の向上によって透明度が
高くなった湖沼(木崎湖)のような例も見られる。
●水温の全湖沼平均値は20.5℃である。火山湖の大湯沼は、湧出する温水の影響によって
50.0゜Cと全湖沼の最高値を示した。
●pHの全湖沼平均値は7.2である。最大は深見池(長野)の9.9、最小は湯釜(群馬)の
1.2である。
●DOの全湖沼平均値は8.2mg/1である。最大は手賀沼(千葉)の15.7mg/1、最小は上江
津湖(熊本)の1.0mg/1である。
3.湖沼改変状況調査
●湖沼全体(湖沼の改変状況が調査されている480湖沼)の湖岸改変状況は、自然湖岸
58.7%、半自然湖岸11.8%、人工湖岸28.7%、水面0.8%である(表2-2-15)。
表2-2-15湖岸の改変状況
実数:湖岸線延長(km)( ):構成比(%)
調査年度
|
湖沼数
|
全体
|
自然湖岸
|
半自然湖岸
|
人工湖岸
|
水面
|
54年度
|
479
|
3150.5
(100.0)
|
1899.6
(60.3)
|
326.7
(10.4)
|
903.4
(28.6)
|
20.8
(0.7)
|
60年度
|
479
|
3165.1 (100.0)
|
1858.8
(58.7)
|
373.3
(11.8)
|
908.6
(28.7)
|
24.4
(0.8)
|
増減
(△は減少)
|
|
14.6
(0.0)
|
△40.8
(△1.6)
|
46.6
(1.4)
|
5.2
(0.1)
|
3.6
(0.1)
|
|
|
|
|
|
|
|
(注1)比較の対象湖沼は、54年度、60年度とも湖岸の改変状況を調査している479湖沼である。
(注2)調査湖沼全体の湖岸線延長の54年度と60年度の差は、再測によるものである。
●成因、湖沼型別に集計した自然湖岸の構成比に着目すると、自然湖岸率の高いグループ
(成因別では、火山湖、カルデラ湖、湖沼型別では鉄栄養湖、不明、腐植栄養湖、酸栄
養湖、貧栄養湖)と低いグループに2分されることがわかった。
●前回調査と比較すると、湖沼全体では自然湖岸率が減少(1.6%減)し、半自然湖岸率が
増加(1.4%増)した。人工湖岸率はほとんど変化がみられなかった(0.1%増)。
●湖沼全体の湖岸土地利用状況は、自然地57.6%、農業地23.5%、市街地・工業地18.1%、
水面0.8%である(表2-2-16)。
表2-2-16湖岸の土地利用状況
実数:km( ):%
調査年度
|
湖沼数
|
全体
|
自然地
|
農業地
|
市街地・工業地
|
水面
|
54年度
|
479
|
3150.5
(100.0)
|
1821.4
(57.8)
|
761.8
(24.2)
|
545.0
(17.3)
|
22.3
(0.7)
|
60年度
|
479
|
3165.1
(100.0)
|
1823.4
(57.6)
|
744.4
(23.5)
|
573.0
(18.1)
|
24.3
(0.8)
|
増減
(△は減少)
|
|
14.6
(0.0)
|
2.0
(△0.2)
|
△17.4
(△0.7)
|
28.0
(0.8)
|
2.0
(0.1)
|
|
|
|
|
|
|
|
(注1)比較の対象湖沼は、54年度、60年度とも湖岸の土地利用状況を調査している479湖沼
である。
(注2)調査湖沼全体の湖岸線延長の54年度と60年度の差は、再測によるものである。
●湖岸土地利用状況でも成因、湖沼型が自然地率の高いグループと、その他のグループに
大きく2分され、湖岸改変状況と同じ構成である。
●前回調査と比較すると、湖岸の土地利用は、湖沼全体では、農業地率の減少(0.7%減)、
市街地・工業地の増加(0.8%増)となった(自然地率、水面率はほとんど変化せず、
それぞれ0.2%減、0.1%増であった)。
●「非改変湖沼」(自然湖岸率100%かつ自然地率100%の湖沼)は全国に218湖沼存在
しており、堰止湖(90湖沼)、火山湖(43湖沼)が多い。
●前回調査で非改変湖沼であった湖沼のうち非改変湖沼でなくなった湖沼は、14湖沼であ
る。
●「改変の進んだ湖沼」(人工湖岸率50%以上かつ市街地・工業地率30%以上の湖沼)に
該当するのは全国で27湖沼である。成因別では海跡湖、湖沼型別では富栄養湖に多く見
られる。
●「改変の進んだ湖沼」は、前回調査に比較し8湖沼増加しており、それらはいずれも海
跡湖、もしくは富栄養湖のタイプの湖沼である。
●1945年以降これまでに何らかの干拓・埋立が行われたのは57湖沼、面積は約344kuであ
る。これは、1945年以降、湖沼面積の約13%が干拓・埋立により縮小したことになる。
●1945年以上これまでの干拓・埋立の規模が大きかったのは八郎潟(166.57ku)、琵琶湖
(28.75ku)、雁沼(24.30ku)等である。
●前回調査以降、新しく干拓・埋立がなされたのは上堰潟(新潟県0.06ku)、また干拓・
埋立面積が増加したのは中海(157ku増)である。
●調査対象湖沼のうち保全地域(自然公園・自然環境保全地域)にかかわるものは計295
湖沼(全湖沼のうち61.5%)であり、内訳は国立公園148湖沼、国定公園85湖沼、都道
府県立自然公園53湖沼、都道府県自然環境保全地域9湖沼である。
●保全地域における湖岸改変状況は保全地域の区分ごとに異なっており、国立公園では自
然湖岸の構成比(82.6%)が調査湖沼全体の構成比(58.7%)を大きく上回るが、都道
府県自然環境保全地域では30.0%と大きく下回る。
●保全地域別の湖岸土地利用状況でも自然地の構成比について湖岸改変状況と同様の傾向
が見られる。
表2-2-17生息魚種類数の多い湖沼(上位10湖沼)
湖沼名
|
成因
|
湖沼型
|
面積(km2)
|
生息魚種類数
|
宍道弧
|
海跡
|
汽・冨
|
78.89
|
59
|
涸沼
|
海跡
|
汽・冨
|
9.35
|
52
|
琵琶湖
|
断層
|
淡・中
|
669.29
|
52
|
佐鳴湖
|
海跡
|
汽・冨
|
1.21
|
50
|
霞ヶ浦
|
海跡
|
淡・富
|
168.18
|
49
|
十三湖
|
海跡
|
汽・中
|
18.07
|
47
|
河北潟
|
海跡
|
汽・冨
|
8.17
|
47
|
柴山潟
|
海跡
|
淡・富
|
1.17
|
46
|
三方湖
|
断層
|
淡・富
|
3.58
|
41
|
北浦
|
海跡
|
淡・富
|
34.39
|
41
|
|
|
|
|
|
|
表2-2-18増加した主な外来魚
魚種名
|
生息湖沼数
|
54年度
|
60年度
|
ソウギョ
|
8
|
14
|
ハクレン
|
7
|
14
|
カムルチー
|
11
|
15
|
オオクチバス
(ブラックバス)
|
12
|
20
|
ブルーギル
|
5
|
8
|
|
|
|
●特定湖沼に広く分布しているのはワカサギ、コイ、ウグイ、ウナギ等の魚種である。
●生息域の限定された魚種が多く分布するのは汽水魚の侵入する浜名湖、移入魚の定着し
た霞ヶ浦、古い歴史をもちビワコオオナマズ、イサザ等の特産種の生息する琵琶湖等で
ある。
●放流量の最も多い湖沼は、稚魚放流(重さ記載)では琵琶湖、稚魚放流(尾数記載)で
は中禅寺湖、卵放流では諏訪湖である。
●漁獲量の多い湖沼は、霞ヶ浦、琵琶湖をはじめとする規模の大きな湖沼で、成因別では
海跡湖、断層湖、湖沼型別では富栄養湖、中栄養湖の漁獲量が多い。
●天然繁殖魚種類数の多い湖沼、清水性魚種の多く生息する湖沼を取り上げその湖沼特性
をみると、天然繁殖魚種類数の多い湖沼は、断層湖、海跡湖のうち栄養状態の良い湖沼
や環境容量の大きな湖沼に多く、清水性の魚種の多い湖沼は自然の状態をよくとどめた
貧・中栄養湖に多くみられた。
5.その他
●利水は136湖沼で行われており、農業用水としての利用が最も多い。
●湖沼の利用が見られるのは328湖沼であり、生産的な利用では漁業が108湖沼、養殖が78
湖沼で行われている。また、レクリエーション的な利用では、魚釣り(208湖沼)や船
遊び(107湖沼)等の形態の利用が多い。また、ウインドサーフィンのような新しい利
用形態も出現し、天然湖沼の利用の多様化が認められる。
●調査対象湖沼のうち不快事項があげられているのは92湖沼であり、湖沼全体からみると
一部の湖沼に偏っている。不快要因の内訳をみると、汚濁やアオコの発生等水質にかか
わるもの(63件)、ゴミの堆積・打ち上げ等景観にかかわるもの(59件)が多い。
|