2.2.5 自然景観資源調査

 


1.資源数とその分布状況
 
  ●今回の調査により抽出された自然景観資源数は全国で15,468件である。最も多いのは
    滝(2,488ヵ所)であ   り、ついで火山(1,158ヵ所)、峡谷・渓谷(996ヵ所)非火山
    性孤蜂(993ヵ所)、湖沼(872ヵ所)、海食崖(734ヵ所)、砂浜・磯浜(632ヵ所)
    の順で、これら7資源で全体のほぼ半数の50.9%を占めている。
 
  ●資源の分布状況は、件数で見ると日本アルプスを抱える中部地方が全体の22.9%、つ
    いで東北の21.4%、九州14.2%、関東10.5%の順に多い(図2-2-12) 。
 
  ●資源の種類別の分布状況を見ると、火山景観、山地景観とも中部地方に最も多く、石
   灰岩景観は中国地方に多く分布している。一方、水景の方は河川景観が中部、湖沼景
   観は東北、北海道地方に多く、海岸景観は九州地方が豊富となっている(図2-2-13)。
 
  ●資源別の分布図例を図2-2-14、15、16に示す。
 
  ●図2-2-17は、2次メッシュ単位(約10km×10km)で確認された自然景観資源の種
   類数をランク別に表示したものである。中部地方の山岳部をはじめ、自然景観の多様
   な地域の分布状況が示されている。

2.資源の眺望性
 
  ●資源の見られ方は近景として望む資源が43.7%と最も多く、ついで中景の34.0%、遠
   景22.4%である。
 
  ●資源毎の見られ方は大地形である火山群、火山や山脈・山地・高地などは遠景と中景
   が大半を占めており、微地形に属する熔岩トンネル・風穴、構造土、鍾乳洞、滝、天
   然橋・岩門・石門等は、近景が代表的な見られ方である。
 
  ●資源を眺める視点の種類は、広域の不特定の地点からの資源が全体の32.4%と最も多
   く、ついで限定的な歩道からのものが26.0%となっている。

3.資源の利用状況
 
  ●利用者数の回答が得られた資源は全体の13.3%であり、これらの年間利用者数は1〜
    5万人の範囲の資源が全体の43.8%と最も多い。
 
  ●自然景観資源と地域とのかかわりについては、「生活レベルでの利用」が全体の40.1
    %、「地域のシンボル的」な資源が37.1%であり、残りの22.8%が「学習の場」とし
   ての利用である。
  ●利用形態では「レクリエーション利用」37.3%、「一般観光」34.5%、「自然学
   習・自然探勝」が28.1%である。

4.資源の保護の現状

  ●自然公園、自然環境保全地域、天然記念物等、何らかの保護制度下にある資源は全体
   の57.8%である。国立公園内には全体の23.2%、国定公園内には14.6%、都道府県立
   自然公園内には11.1%が分布しており、それらを合わせた自然公園全体には、全体の
   48.9%と半数近くが分布している(図2-2-17)。

  ●保護制度下にない(不明を含む)資源数が保護制度下にある資源数を上回っているも
   のは、非火山性孤峰、鍾乳洞、河成段丘などである。

  ●総資源数のうち36.8%は、当該資源に対する格段のインパクトは存在しない。しかし、
   全体の3分の2近くは何らかの開発行為あるいは当該開発行為の二次的影響を受けて
   いる。インパクトの種類として最も多いものは、人の立ち入り(15.8%)で、ついで
   農林業開発(10.0%)、観光開発( 9.5%)の順である。

5.今後の課題

  ●自然景観資源に関する体系的、網羅的な全国調査は初めてのものであるため、地域に
    よっては確認できなかった資源があること、また、資源の抽出基準に関しての調査者
    の判断の差があることなどの問題もあり、今後の本調査の実施の際の課題と言える。