●調査の目的
わが国の河川の自然性の現況及び利用の状況を把握する目的で、河川の改変状況、魚類
の生息状況、原生流域の状況等を調査したもの。
●調査実施者
調査は都道府県に委託して実施した。
●調査対象地域
前回調査(第2回自然環境保全基礎調査・昭和54年度実施)で調査した全国の一級河川
の幹川等で、全国109の一級河川の幹川、一級河川の主要な3支川及び沖縄県の浦内川
(計113河川)(表2-1-5)。
調査区間数は計11,412区間(1区間は約1km)である。
●調査実施期間
昭和60年度。
●調査内容
1.河川改変状況調査
調査対象河川の各種改変状況等を明らかにするために各々の延長が約1kmとなるよう河
口より順次設定された調査区間毎に次の項目について調査し、主に前回調査以降の変化
を把握した。
調査結果から「河川改変状況調査票」、調査区間、魚類調査実施地点等を記入した「河
川調査図」を作成した。
○水際線の改変状況
(水際線における護岸の設置割合を求めるもの)
○河原の土地利用状況
(河原を「自然地」「農業地」「未利用造成地」「施設的土地利用地」に区分するも
の)
○河畔の土地利用状況
(河畔を「自然地」「農業地」「市街地・工業地・その他」に区分するもの)
○河川横断工作物の設置状況
(魚類の遡上可能性を把握するもの)
○取水施設の有無
○河川の利用状況
(主にレクリエーション利用の内容を把握するもの)
○河川環境における不快要因
(水のにこり、水面上のアワ、悪臭等不快感を感じさせる要因の状況を把握するもの)
■用語の定義
1)この調査で「河川区域」とは、河川法の規定による「河川区域」とする。
(注)河川区域の境界は、建設省地方建設局の工事事務所(管理が都道府県または市町村
に委任されている場合は、都道府県または市町村の担当課)が保管している河川現
況台帳の付属図面(通常、縮尺1/2,500または1/5,000)に表示されている。
2)「水際線」とは、平水位における水面が陸地と接する部分をいう。
3)「河原」とは、河川区域内の陸部のうち、比較的平坦な部分をいう。
4)「河畔」とは、河川区域の外側幅100mの区域をいう。
5)「右岸」「左岸」とは、それぞれ上流から下流に向った呼称である。
6)河原の土地利用において「自然地」とは、砂礫地または荒原地、背丈の低い草地、背
丈の高い草地(アシ、オギ、ススキ等)、樹林地をいう。
7)河原の土地利用において「農業地」とは、水田、畑、果樹園等をいう。
8)河原の土地利用において「未利用造成地」とは、河川改修等に伴い高水敷が造成され
ているが、施設的土地利用、農業的土地利用はなされていない土地をいう。
9)河原の土地利用において「施設的土地利用地」とは、自動車教習場、ゴルフ場、クラ
ンド、公園、広場等の施設的な土地利用がなされている士地をいう。宅地等も含む。
10)河畔の土地利用において「自然地」とは、樹林地、自然草地、湿地等自然が人工によ
って著しく改変されていないで自然の状態を保持している土地をいう。
11)河畔の土地利用において「農業地」とは、水田、畑、放牧地、果樹園等の農業的な利
用が行われている土地をいう。
12)河畔の土地利用において「市街地・工業地・その他」とは、住宅地、業務地、工場、
廃棄物処理場、遊園地等都市的な利用が行われている土地をいう。
2.魚類調査
次の項目について調査し、その結果から「魚類調査票」及び「魚類調査総括表」を作成
した。
なお本調査では北海道の湧別川、網走川、石狩川、尻別川、鵡川、釧路川を除く107河
川の約950地点(概ね10Kmに1地点の割合)で漁獲試験を実施した。
○生息する魚種名
○漁獲量(過去5ヶ年の年平均漁獲量)
○放流量(過去5ヶ年の年平均放流量)
○天然、繁殖の有無
○魚類相に関する記録
3.原生流域調査
前回調査で摘出された原生流域(面積1,000ha以上にわたり、人工構造物の存在や森林
伐採等人為の影響のみられない流域)についてその改変状況を調査し、「原生流域調査
票」及び「原生流域図」を作成した。
●調査方法
1.河川改変状況調査
資料調査並びに現地確認調査によった。
なお、調査区間は河口から約lkmごとに設定した。
2.魚類調査
投網等による漁獲試験を実施するとともに漁獲試験の結果を既存資料及び魚協からの
聞き取りによって補完した。
3.原生流域調査
既存の資料、空中写真等により改変状況を調査した。
●全国集計(とりまとめ)の概要
上記「調査内容」のそれぞれの項目について全国レベルでの集計を行い、調査対象河川
の現況及び前回調査以降の変化傾向を把握した。
個々の河川単位のほか、主要島興と流入海域を組み合わせて命名した水系群という単位
でも集計を行い、河川の地域特性の把握に努めた。
以上の結果は『河川調査報告書(全国版)』としてとりまとめた。