「緑の国勢調査」は、こうして進められました。


 「緑の国勢調査」は、正式には「自然環境保全基礎調査」といい、おおむね5年毎に行われています。調査の目的は、1日本の自然環境の現状を明らかにすること、2調査の積み重ねによって自然の経年変化を把握すること、3自然環境保全のための国や地方自治体のいろいろな施策のための基礎資料を提供することなどにあります。
植生自然度と貴重な動植物の分布が―第1回と第2回。
 第1回の調査は、昭和48年度に実施し、植生や貴重な動植物や地形などについて調べました。このときは20万分の1の全国の植生図を作りましたが、結果をわかりやすくするために「植生自然度」という考えを取り入れました。これによって、日本の自然の現状を、植生を通してはっきり数字で示すことができました。
 第2回調査は、昭和53、54年度に行いました。植生図の精度を高めて、5万分の1(今回使用したメッシュ地形図と同じ縮尺)の図面づくりに着手しました。また、貴重な植物群落や絶滅のおそれのある動物、そして河川、湖沼、海岸線の自然状況や干潟、藻場、サンゴ礁の分布も調べました。
そして、第3回。
 もうご存知の、昭和58年度から実施している今回の調査です。下の図がその全容です。景観調査が来年度に予定されている他は、すべて実施に移されています。海岸調査については結果がでました。全国の海岸線のうち、自然海岸として残っているのは57パーセントで、過去5年間に自然海岸の3パーセントにあたる565キロメートルが何らかの改変を受けたことなどがわかりました。
 今後、調査結果が続々とでますので、その都度公表していきます。


 ところで、あなたが参加した「身近な生きもの調査」はどのように進められたのでしょう。楽屋裏を回想してみました。

 メッシュ地形図、募集用パンフレットの印刷。対象種の選定などなど。メッシュ地形図は、全国で1,249種類で各500枚印刷。お送りしたように折りたたんだ形で積み上げると750m。庁舎内にはとても保管場所はないので、特別に倉庫を借り上げて保管。
 昭和59年1月3日、募集開始。準備万端整えたつもりが、設置した専用電話1台では殺倒する電話で回線がパンクするかも知れないことがわかって、御用納めの日、急きょ2台増設という一幕も。申込み者、全国の高等学校、自然保護団体にパンフレット発送。3月25日募集締切。
 発送が遅れ気味で、多数の問い合わせに「スミマセン」の連発。全国の地図の棚から参加者希望のものを取り出す手間が大変。中味の異なる郵便物を32,000件余。これはギネスブック級。送り間違えた地図の交換にミスを重ねて大目玉をもらったことも……。
 「調査のてびき」増刷。結局、印刷部数合計7万部。「みどりのたよりNo.1」発行。次から次への仕事で室長以下全員夏バテ気味。その頃、全国では20万の眼が自然を見つめる。
自然とのいろいろな出合い……。
 11月からポツリ、ポツリ。12月に入ると毎日の回収数を表にして心待ち。通信簿をもらう時のような気持ち…。27日、回収状況中間発表。どれだけ回収できるか不安の中の正月。年が明けて回収数急上昇。
 集められた調査票の1枚1枚を、記入もれをチェックしながらナンバーリング。調査票の一つひとつの○印にこめられたものを想像しながら、手は機械的に動かし数をこなす。コンピュータにデータ入力。
 入力した情報を集成。生きもの地図打出し。参加状況のデータ等と合わせて3月27日、速報版公表。4月、定例の人事異動。2名配置換。自然環境調査室総勢6名、結局これまでに4名(延べ5名)が入れ替った。元室員は、国立公園管理事務所に3名、本庁内他課に2名。

 

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