T−2 情報処理方法
今回行われた第2回自然環境保全基礎調査(哺乳類)は,調査対象者総数44,853名,情報数20万に及ぶ莫大なものであった。この種の調査としては世界でも有数のものであり,今後のわが国の自然関連情報の基礎データーとして極めて重要な位置を占めることになると思われる。
したがって昭和54年度は昭和53年度実施された調査の原データーをもとにその処理作業を中心に行った。
情報処理作業の概要は図2に示すとおりである。
すなわち都道府県より得られた聞きとり調査票,哺乳類分布原図(1/5万地形図に記載)および県別分布メッシュ図をもとにした全国哺乳類分布メッシュ図(1/250万)の作成および調査票内容のチェック検討,磁気テープ入力作業の2作業を中心に行った。
(1)磁気テープ入力作業
今回の調査は情報数が多くまたその内容も聞きとり調査票と分布原図の2つにわかれているため,集計・解析にあたっては両者の照合が必要であり手計算ではほぼ不可能であること,また情報の保存も調査票そのものの長期保存が物理的に困難であること等の理由により,情報内容の磁気テープ入力化を行った。
磁気テープに入力された情報内容が今回の調査の原データーの役割を果すことになるだけに入力作業にあたっては調査票内容,分布原図記載の記入地点を可能な限り忠実に入力することを目ざした。特に分布原図に記載された地点を入力するに際しては地点を出来るだけ小さい単位で入力すること,後の集計・解析にあたって他の関連情報とのすり合せが可能であること等を考慮して基準メッシュ(三次メッシュ)を単位として入力することとした。分布原図に記載された地点はこの基準メッシュによるコード化に十分耐えうる精度があると判断された。
各県より集められた調査票及び分布原図の情報を磁気テープに入力するまでの作業工程は図3に示すとおりである。
1.地 図 処 理
全国47都道府県で作成された分布原図から調査票の情報に対応する生息地域を読みとり,それらの地点を8桁メッシュコード化するにあたっては,昭和44年12月に行政管理庁に答申された基準メッシュシステムを用いた。
i)基準メッシュシステム
1 メッシュの1区画は1/5万地形図の縦横をそれぞれ20等分した1辺約1km,(緯度30″×経度45″)面積約1km2の区画とする。
2 各区画に8桁のコード番号をつける。番号のつけ方は,以下のとおりである。
第1次地域区画は,全国を1/20万地勢図1枚に該当する経緯度に囲まれた地域(緯度40′経度1゜ごとに区切られた方形画)である(図4−1)。第1次地域区画のコード番号は,区画の下端緯度を1.5倍した2桁の数字と,左端経度の下2桁を順にならべてできた4桁の数字である(図4−2)。
第2次地域区画は1/2.5万地形図1枚に相当する区画であり,これは第1次地域区画を縦横にそれぞれ8等分したものである。第2次地域区画のコード番号には下から上へ,緯線方向に0から7の数を付し,左から右へ,経線方向に0から7の数を付す。ある区画のコード番号は,これらの数字を緯線,経線方向の順にならべた2桁の数字である(図4−3)。
第3次地域区画は,第2次地域区画を縦横それぞれ10等分した区画(基準メッシュ)である。この区画のコード番号のつけ方は下から上へ緯線方向に0から9の数を付し,左から右へ経線方向に0から9の数を付した。第3次地域区画のある区画のコード番号は,これらの数字を緯線方向,経線方向の順にならべた2桁の数字である(図4−4)。
以上,第1次,2次,3次区画のコード番号を順にならべた8桁の数字が基準メッシュの基準コードとなる。
ii)読みとり用基準メッシュフィルム
分布原図は,国土地理院発行の1/5万地形図に記されており,地形図および基準メッシュは,経緯度にもとづいているので形は等脚台形であり,緯度によって縦横の比が変化する(高緯度地帯では横が短く,低緯度では横が長くなる)。
このため分布原図の生息地点がどの基準メッシュに属するかを判読するため,基準メッシュポリエステルフィルムを第1次地域区画の緯度40分ごとについてそれぞれ作った。
iii)地点読みとり作業の実施要領
生息地点の読みとりは分布原図に基準メッシュポリエステルフィルムを重ねて8桁のメッシュコードを読みとった。
読みとり手順は図5に示すとおりである。
1 調査票に地名が明確に記入されている場合
○分布原図上に地点記入が×印で付けられている場合は該当8桁メッシュコードを読みとる。
○分布原図上に生息地域がくくり線によって示されている場合は原則として囲まれた地域の中心のメッシュコードを読みとる。
○分布原図上に×印もくくり線も記入されていない場合は分布原図上から調査票に記入された地名に該当する場所をさがし,その地点に調査票のアンケート番号を記入し,その地点のメッシュコードを読みとる。この場合,調査票に記入された地名が広範囲でかつ分布原図の1/4(1/2.5万地形図に対応)の範囲を越えない場合は,8桁メッシュコードのうち上6桁を読みとる。また該当する地名が分布原図上に全く見当たらない場合は,不明として上4桁のみを読みとる。
2 調査票に地名が明確に記入されていない場合(「〜村全域」「〜山脈一帯」「〜川流域」「県境部分」など)
○分布原図上に×印またはくくり線によって地点,地域が示されている場合は該当するメッシュコードを読みとる。
○分布原図上に地点,地域が記入されていない場合,そのデータは不採用とする。
3 調査票に地名が記入されていない場合
○分布原図上に地点,地域が記入されている場合は該当メッシュコードを読みとる。
○分布原図上に地点,地域が記入されていない場合はそのデーターは不採用とする。
iv)データーシート作成
1 コーディング・フォーマット
データーシート作成のためのコーディング・フォーマットは図6のとおりである。
○都道府県コード……北海道から沖縄県までの47都道府県を2桁の数値で表示(01〜47)
○地図番号,調査区画番号……調査要綱にもとづく
○回答者番号……調査票に記入されている番号をそのまま記入し,2桁になる場合はアルファベットを併用(1〜9,A〜 )
○調査年……西暦年の下2桁(78,79)
○調査月……そのままの数値を記入(01〜12)
○緯度・経度……分布原図の左下角の度数を実数で記入
○哺乳類コード……ニホンザル 001
シ カ 002
ツキノワグマ 003
ヒグマ 004
イノシシ 005
キツネ 006
タヌキ 007
アナグマ 008
○内容コード……生息情報の「見た」「聞いた」および絶滅情報を記入(1〜3)
○地点コード……地図読みとり作業実施要領にもとづき読みとった8桁メッシュコードを記入
○群の有無,群数および季節……ニホンザルについては群の有無および群数,シカ,ツキノワグマ,ヒグマについては見かけた季節を記入
キツネ,タヌキ,アナグマについてはブランク
○頭数……3桁までの実数で記入
○子に関する情報……ニホンザル,シカ,ツキノワグマ,ヒグマおよびイノシシについては「子連れ」の有無,キツネ,タヌキ,アナグマについては,「春,夏に子を見かけるか否か」の情報を記入
○年代……出現年代,絶滅年代についての情報を記入
2 データシート記入上の留意点
○調査票の調査年月
調査票の調査年月に記入がない場合,前後の調査票を参考にして,調査年のみ記入した。
○内容コード
「見た」「聞いた」の両方に印がある場合「見た」を採用した。
「見た」の中に,鳴き声,痕跡(足跡,糞食痕他)に関する情報も含めた。
○頭 数
生息頭数が「5〜10頭」のような記入の場合,その平均値(四捨五入して実数値のみ記入)をとった。
「数頭」「数十頭」「十数頭」のような具体的な頭数が記入されていない場合,不確実な情報として不採用とした。
1,000頭以上のように3ケタを越える場合,別データーとして頭数を分割した(他の記入内容は同じ)
○出現,絶滅年代
2つ以上の年代に印がある場合,出現年代では古い方を,絶滅年代では新しい方を採用した。
年代に記入があり,更に「不明」にも記入がある場合や全ての年代に記入がある場合,不確実な情報として「不明」とした。
年代の欄に全く記入がない場合も「不明」とした。
生息年代と絶滅年代両方に記入がある場合,備考を参考にして片方を削除した。
備考で判断の不可能な場合,絶滅年代がより新しい場合は絶滅情報を採用,出現年代がより新しい場合は生息情報を採用した。
更に,出現と絶滅が同年代の場合,両方の情報を採用した。
○逃亡した飼育動物
備考に逃亡した飼育動物であると明記されたものについては,その情報を不採用とした。
2.磁気テープ入力様式
磁気テープ入力様式は以下に示すとおりである。
1.記録密度 1600 BPi
2.MTの形式 Standard LABEL
VOL通番 NMR000
ファイル名 HONYU
3.ファイルの形式
レコード長 80バイト
ブロック長 8000バイト(ブロッキングファクター=100)
4.レコードの形式
カラム タイプ 内 容
1−2 数字 県番号
3−5 数字 地図番号
6−7 数字 調査区画番号
8 数字,文字 解答者番号
9−12 数字 年月
13−16 数字 緯度分
17−21 数字 経度分
22−24 数字 哺乳類種番号
カラム タイプ ……… 数字 | 内容 | ||
25 | 43 | 61 | 1 |
26 − 33 | 44 − 51 | 62 − 69 | 2 |
34 − 37 | 52 − 55 | 70 − 73 | 3 |
38 − 40 | 56 − 58 | 74 − 76 | 4 |
41 | 59 | 77 | 5 |
42 | 60 | 78 | 6 |
1・・・・・・内容コード
2・・・・・・メッシュコード
3・・・・・・郡,季節
4・・・・・・頭数
5・・・・・・子に関する情報
6・・・・・・年代
(2)全国分布メッシュ図の作成と読みとり
1.全国分布メッシュ図の作成
5万分の1地形図にマッピングされている情報の表示にあたっては,数量的処理が容易になるメッシュ方式を採用した。メッシュの大きさは,国土地理院発行5万分の1地形図を16等分したものである。
生息状況の表示にあたっては,表4のような生息状況区分によった。
また,生息状況の判定はつぎのように行った。
i)メッシュ内の生息状況の判定は,表5のように行った。つまり,生息状況に情報Aと情報Bがある場合,判定欄の生息状況とした。
ii)調査が都府県単位で行われたため,メッシュが県境で二分され,情報が異なる場合が生じる。その際,一方が未調査地域であれば,他方の生息状況にしたがった。
iii)都府県報告書の推測生息地域については,未調査地域とした。
これらの手順をとうして得られた生息状況は,表6のように記号によって表示した。
2.全国分布メッシュ図の読みとり
8種について生息区画数と絶滅区画数を地域別,都府県別に算出した。その際,海岸線,島しょのメッシュは1区画とし,県境のメッシュは0.5区画として読みとった。
また,生息区画数については,ニホンザル・ニホンジカ・ヒグマ・ツキノワグマの4種の場合,以下のようにわけて算出した。
ニホンザル――群れ生息区画数と群れでない生息区画数
ニホンジカ――周年生息区画数(生息状況区分で1年中生息している地域をいう)と季節的出現区画数(生息状況区分で季節によっては生息している地域をいう)
ヒグマ・ツキノワグマ――繁殖区画数と出没区画数
生息区画数と絶滅区画数を算出した後,以下の項目について読みとりを行った。
i)生息区画数の地域別比較
ii)生息区画率(全区画数に対する生息区画数)の地域別比較
iii)絶滅区画数の地域別比較
iv)絶滅区画率(全区画数に対する絶滅区画数)の地域別比較
v)群れ生息区画率(生息区画数に対する群れ生息区画数)――ニホンザルの場合――の地域別比較
vi)周年生息区画率(生息区画数に対する3周年生息区画数)――ニホンジカの場合――の地域別比較
vii)繁殖生息区画率(生息区画数に対する繁殖区画数)――ヒグマ・ツキノワグマの場合――の地域別比較
viii)生息区画率と絶滅――生息区画率からみた類別
ix)生息区画率と群れ――生息区画率からみた類別――ニホンザルの場合――
x)生息区画率と周年――生息区画率からみた類別――ニホンジカの場合――
xi)生息区画率と繁殖――生息区画率からみた類別――ヒグマ・ツキノワグマの場合――
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