802−812 外 国 産 鳥 類

 飼鳥として外国から輸入された鳥が何らかの理由で野生化し、いわゆる「かご抜け」と呼ばれて、日本各地で観察される例が近年増えてきた。それらの一部には野外において繁殖するものもでてきて、今回の繁殖地図調査においても、次にあげる10種類が記録された。(811 キンカチョウはA〜Cランクで記録されなかったため、地図は省略した。)

 原産地がインド、東南アジア方面の鳥。ハタオリドリ科―ベニスズメ、ブンチョク、ギンパラ、ヘキチョウ。カラス科―ヤマムスメ。オウム科―ワカケホンセイインコ。

 原産地が南アメリカ。アトリ科―コウカンチョウ。オウム科―オキナインコ。

 原産地がアフリカ。ハタオリドリ科―キンランチョウ。

 原産地がオーストラリア。オウム科―セキセイインコ。

 各種の特徴は以下の通り。

 ベニスズメ メジロより小さい、全身オリーブ褐色で白斑が散在、繁殖期の♂は暗赤色で美しい、美声で囀る。

 ブンチョウ ほぼスズメ大、頭部黒く頬に白斑、体は灰色、嘴はピンク、白色個体あり。

 ギンパラ ほぼメジロ大、頭部黒く、体は茶色、胸からわきは白色、下腹部黒い。亜種のキンパラは白色部も茶色。

 ヘキチョウ ギンパラ大、頭部白色で体は茶色。

 ワカケホンセイインコ ムクドリ大で尾が極めて長く、体身黄緑色、顔に黒い線。

 コウカンチョウ ムクドリ大、上面灰色、下面白く、頭部赤く冠毛がある。

 オキナインコ ムクドリ大、全身黄緑色、顔から胸にかけて白色。

 キンランチョウ メジロ大、体は黒く、胸から上面にかけ赤、頭頂黒。

 セキセイインコ ほぼスズメ大で尾が長い。体色は、黄、緑、青、白など様々だが本来の色彩は、上面黄、下面緑で上面に貝がら状の黒斑が並ぶ。

 以上は飼い鳥として飼育される種であるがヤマムスメは台湾特産の珍しい種で、一般に飼育されることは少く、かご抜けとしても特殊な種である。

 このような外来種は、ヤマムスメを除いて穀物を主食としており、飼育される場合も、アワ、ヒエなどを与えられている。日本で見られる環境は、川原のアシ原などが多いが、ワカケホンセイインコは住宅地の雑木林などに生息する。

 ブンチョウとセキセイインコとはかごの中での繁殖が容易であるため、飼育される個体数では他より圧倒的に多い。手乗りなどにして飼育される場合も多いため、野外へ逃げ出す例は数多いと思われるが、日本の野外環境では定着することが困難なようで、記録されたメッシュは少い。外来種の中で最も注目される鳥はベニスズメとギンパラの2種で、生息、繁殖が確認されたメッシュは、他の種に比較してかなり多く、定着の度合いが高いと考えられる。この2種はアシ原や農耕地に生息し、イネ科植物の種子などを主食としていると思われるが、ベニスズメは小昆虫なども割合食べる。繁殖期は秋である。両種ともに温暖な地方に認められ、北限は山形県、宮城県である。両種とも分布は似ているが、ベニスズメの方が繁殖、生息のメッシュ数が多い。関東地方と近畿地方に分布がやや集中している。ギンパラについては、沖縄本島で生息メッシュがかなり多く、定着の度合いの高さを示している。台湾には野生種が生息するが、緯度的に近い沖縄本島は農耕地も多くギンパラの本来の生息環境に近い条件が与えられているためであろう。

 他の鳥種は生息、繁殖が確認されたメッシュが少なく、1メッシュから3〜4メッシュ程度である。セキセイインコなどはたまたま逃げ出して間もない個体を観察した可能性もある。いずれにせよ前記の2種以外は日本への定着の度合いが低く、繁殖している地域でも継続して繁殖を続けることは不可能と考えられる。

 外来種の出現したメッシュはすべて本州以南の温暖な地方であるが、これらの種の原産地はすべて亜熱帯から熱帯にかけての地方であることを考えると、寒冷な地方では野外で種を維持することは食物があっても困難なのであろう。一方、温暖な地方では外来種が野外において繁殖することにより、在来種の生息などにどのような影響があるのかは、不明な点が多く、今後の調査・研究にまたねばならない。

 

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