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 ずんぐりした体つきの割合に目立つ鳥で、特に大きな黄色い嘴と飛翔中の翼端近くの白斑は顕著である。日本列島に生息するアトリ科の鳥の中では最大種であり、ほぼツグミやムクドリなどと同大である。体色は全体に灰色で、頭部と翼、尾が藍黒色、また♂♀同色である。キョッ、キョッと地鳴きし、キーコーキーと特徴のある声で囀る。この囀りは繁殖期以外でも聞くことができる。植物の種子を主食とし、昆虫類も食べる。山地の広葉樹林に生息するが、あまり高い山には生息せず、低山帯に個体数が多いようである。5月から7月にかけて森林中の樹上に枯枝などを集めて巣を作り、黒褐色の斑点のある淡青色の卵を3〜4個産む。2週間ほどで雛がかえり、さらに2週間ほどで巣立ちをする。秋から冬にかけては、しばしば群を作り、繁殖期には生息しない平地近くや人里近くにも漂行するため、人間にも古くからなじみが深い。古くは斑鳥(イカルガ)の名で呼ばれた。日本など極東地方に限って生息している。

 生息メッシュの分布は、南西諸島を除くほとんど日本全国の平野部から山地にわたっており、ほぼ全国的にかなり普通の鳥である。ただし、生息するメッシュの分布にやや偏りが見られ、多い地方と少い地方との差がかなりあるようである。特に、北海道東部、北部、房総半島、紀伊半島南部、山口県西部、四国の南西部、九州の南西部では少く、ほとんどあるいは全く繁殖が確認されなかった。また東北地方も出現したメッシュ数がやや少なかった。全体的にBランク記録のメッシュがほとんどで、A・Cランクのメッシュは少ないが、これはイカルが頻繁に囀るため、囀りによって記録される場合が多いためである。本州中央部には空白のメッシュが割合に集中して多く現れているが、この理由には、イカルが低山帯を好んで生息していたため、あまり標高の高い険しい山地に生息しないことを示しているためと考えられる。従来九州での確実な繁殖は知られていなかったが、最近になり九州からの繁殖の報告も伝えられた。今回の調査では繁殖確認と多数のBランクが記録され、九州東部で繁殖の可能性がある地域の多いことが判明した。島嶼部では、筑前沖島のCランク、佐渡でBランクが記録されたのみである。両島共、従来繁殖の報告はない。

 

Aランク

Bランク

Cランク

合 計

サブメッシュ数

23

841

180

1,044

構 成 比(%)

2.2

80.6

17.2

100.0

 

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