448 ク   ロ   ジ

 ♂は全身暗灰色で、スズメより少し大きい。頭上から背面にかけて黒褐色の縦斑がある。♀は背面が緑褐色で、黒褐色の縦斑がある。頭部は褐色で淡褐色の眉斑がある。下面は淡色で淡褐色の縦斑がある。北海道では夏鳥、本州北部では漂鳥または冬鳥として、本州南部以南では冬鳥として以下の地域に分布する。北海道、利尻島、本州、佐渡、四国、九州、対馬、壱岐、五島列島、屋久島、種子島、伊豆諸島(大島、新島、神津島、三宅島、八丈島)、奄美大島、沖縄島、久米島、宮古島。夏期は北海道、本州北部のササなどの下草が密生した針葉樹と落葉樹の混交林や、落葉広葉樹の疎林などに生息する。生息地は亜高山帯が主である。冬期は温暖な地方の低山帯またはそれ以下の雑木林、竹薮などに生息する。明るいところを好まず、薮のなかにいることが多いので目立ちにくい。繁殖期には番で生活するが、渡りのときには群生することもある。低山帯上部から亜高山帯下部にかけての灌木林中のササの枝上など、地上から1m以下の高さに営巣する。巣は枯草、樹皮、小枝などを主材とし、内部にリゾモルファーを敷く。産卵期は6月ごろで、1巣の卵数は5個前後である。卵は青みがかった灰白色の地に、黒褐色、灰青色の斑点が疎在する。

 これまでに知られている繁殖地は、秋田県八幡平、栃木県奥日光金精峠付近、山形県西置賜郡葉山などである。生息数が多くないなどのために、確認された繁殖記録は少ない。今回の調査によって繁殖が確認された地域は全国で5サブメッシュにすぎず、山形県西置賜郡葉山、福島県飯豊連峰、兵庫県氷ノ山で見られるだけである。山形県葉山では1968年6月に1巣が発見されて以来繁殖が確認されている。飯豊連峰では疣岩山下部の松平峠付近(標高1,200m)で、1977年8月7日に巣立ち直後の雛が成鳥から給餌を受けているのが観察されている(渡辺 1979)。また、地図上にAランクの記載はないが、北海道旭川市東旭川町瑞穂で北海道で初の営巣記録が得られている。これは、1976年7月8日にトドマツの幼木の地上90cmほどのところで4卵の巣が発見されたもので、7月21日には巣立っている(藤巻、桶川 1977)。繁殖の可能性がある地域を見ると、北海道では中央部の山地と知床半島から屈斜路湖にかけての地域に多く、亜高山帯下部の地域にかぎられている。本州では、東北西部から北陸にかけての地域に集中しており、とくに日光から白山にかけての地域には帯状にBランクが示されている。繁殖期本州では中部以北の日本海側に多く生息することを示すものである。

 

Aランク

Bランク

Cランク

合 計

サブメッシュ数

5

76

8

89

構 成 比(%)

5.6

85.4

9.0

100.0

 

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