436 コ ジ ュ リ ン

 極東地域にのみ生息する種。モソゴル東部、中国東北部、ウスリー地方、南千島、日本に分布し、中国、南朝鮮、日本で越冬するホオジロ属の小鳥で、♂の夏羽は頭部と喉が黒い。我国においては、青森、秋田、宮城、茨城、千葉、静岡、山梨、長野の本州中北部の各県と九州の熊本県において繁殖が知られ、北海道と東京、兵庫、大阪の各都府県でも記録があり、本州中部以南で越冬する。繁殖場所は、太平洋岸の海岸、湖、大きな河川に近い広い湿原や草原と、本州中部と九州の山地草原である。繁殖地域には5月頃から出現し、♂は灌木の梢やヨシなどで盛んに囀る。巣は、草本のヤブの中の地上近くにある茎の間や地上につくる。イネ科植物の茎や葉を主材として、産座に細根や獣毛などを敷いた小型の椀型の巣である。繁殖期は6〜8月であって、1腹の卵数は3〜5個で4卵のものが多く、抱卵期間は12〜14日である。本種は繁殖期の個体群密度は地域によって著しく異なることが明らかにされている。茨城県霞ケ浦では766.7羽/km2(7.67羽/ha)であり、長野県霧ケ峰の44.4羽/km2(0.44羽/ha)の17倍という高密度である(中村 1968、中村他 1970)。しかも、長野県では、各番が各々の行動圏内で全生活をしているのに比べ、茨城県では繁殖地ではルーズコロニーを形成し、共同採餌地を有している。共同採餌地はコロニーに隣接する広大な水田地帯内の農道の草地であり、個体によっては一定地域に採餌に行き、番のメンバーや繁殖場所とは関係がないといわれる。また、コロニーのなわばりは2〜3番の共同防衛地となっている(中村他 1970)。このような2つの個体群のあり方がみられることは注目すべきであるが、現在のところこの2地域しか明らかにされておらず、他の繁殖地のものがどのような繁殖形態をとっているかは不明である。なお、非繁殖期には本州中部以西のヨシ原、田圃、草原などに生息する。

 今回の調査では、北海道から九州までの18サブメッシュで記録されたが、大きく3地域に集中している。東北地方北部、関東地方東部、及び九州の北東部でそれぞれ繁殖が確認された。繁殖地は極めて局限されているといえよう。なお、北海道北部(6月)と北陸地方南部(4月)でも各1例生息が確認されたが、繁殖に関する判断材料は得られなかった。ちなみに、両地域とも従来の繁殖記録もない。

 

Aランク

Bランク

Cランク

合 計

サブメッシュ数

11

4

3

18

構 成 比(%)

61.1

22.2

16.7

100.0

 

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