420 コサメビタキ

 灰褐色の小型の地味な鳥。全体に淡色で、腹はサメビタキ類のなかでもっとも白い。日本には夏鳥として4月ごろ渡来し、多くは標高1,000m以下の落葉広葉樹林、雑木林、カラマツ林、スギ・ヒノキの人工林などに普通に生息する。単独あるいは番で生活し、主に樹梢にいて、飛来した昆虫を飛び上がって捕えては、またもとの枝にもどるという習性がある。5月から8月ごろにはさえずりを聞くことができるが、この後は幼鳥に警戒させるときのほかはほとんど鳴かない。低山帯・平地の林縁や人家付近の独立樹などに営巣する。巣はスギ、ヒノキ、カラマツ、マツ、ナラ、クリ、ケヤキなどの地上2.5〜8mぐらいの高さの葉のない水平な枝の上に造られる。多量の鮮類、樹皮、羽毛を主材とし、クモの糸で固定した上にウメノキゴケを付着させた巣で、一見木のこぶのように見える。産卵期は5月上旬から6月下旬までで、1巣の卵数は4〜5個である。卵は淡青色または淡褐色でほとんど無斑であるが、ときには不明瞭な斑紋があるものもある。雛は産卵後12日ぐらいで孵化し、更に12〜14日ぐらいで巣立つ。

 本種の繁殖地は全国に広がり、北海道、本州、四国、九州のほか、南千島(国後)、佐渡(1957年6月)、伊豆諸島(大島1935年5月、神津島1947年5月、八丈島1931年4月)、対馬での繁殖が記録されている。

 今回の調査では、北海道・本州・四国・九州の各地に広範に散らばった繁殖地の状況が明らかになった。このうち本州・四国・九州における繁殖地は一様に分散しており、注目すべき傾向は現われていない。北海道では中央部、特に大雪山北東地域にAランクが集中している。一方、海岸付近など平地での繁殖地は少なくなっている。温帯系の鳥である本種が、一般に気温の低い山地周辺で主に繁殖していることは興味深い。対馬での繁殖は以前より確認されており、今回の調査ではBランクとなっているが、ほぼ確実に繁殖しているものと思われる。これまで渡来の記録のみだった壱岐では、新たに繁殖の可能性があるとされた。利尻島・屋久島ではCランクが示され、明らかな繁殖の徴候は見られなかったものの繁殖期における生息が確認され、今後繁殖地に含まれる可能性がある。佐渡における繁殖について先に記録を掲げたが、今回の調査では繁殖が確認されなかった。

 

Aランク

Bランク

Cランク

合 計

サブメッシュ数

94

158

79

331

構 成 比(%)

28.4

47.7

23.9

100.0

 

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