407 メボソムシクイ

 スズメより小さく、メジロよりやや大きい。体は緑褐色で下面は淡色であるが、他のムシクイ類より普通黄色味が強い。クリーム色の眉斑を持ち、翼には1本の白い翼帯がある。♂♀ともに同色。囀りは特徴があり、リュ・リュなどと聞こえる地鳴を伴うチョリ・チョリ・チョリ・チョリという四拍子の美しい声で鳴く。「ゼニトリ・ゼニトリ」などと聞きなし、登山者に知られている。日本には夏鳥として渡来し、四国以北の高い山で繁殖する。森林性で、亜高山帯針葉樹林を好むが、谷川岳などの針葉樹林のない山にも普通に生息する。日本のムシクイ類の中で最も高い標高まで生息するが、樹木のなくなる高山帯では生息していない。主に樹上で昆虫類を捕えて食べる。6〜8月に亜高山帯の森林中の地上に、コケなどを集めて横に出入口のある球形の巣を作り、少量の斑点のついた白色の卵を4〜5個産卵する。ツツドリに托卵される場合がしばしばある。

 春と秋の渡りの時期には平地を通過するが、春の渡りは他の鳥に比べて遅く、本州中部を6月上旬頃に通過するものもまれでない。8月頃になると、山地の森林でカラ類の混群に入っているものを観察することがある。本種は、日本の他に広くユーラシア大陸の極北部からアラスカまで分布し、冬期は東南アジアに渡る。

 今回の調査の結果では、1,500m以上の山地での生息確認が多かった。北海道では、繁殖確認はなかったが、Bランクが各地の山地で記録された。本州以南に比べ、割合標高の低い山にも生息しているので、平地近くで繁殖する個体もあると思われる。本州と四国で繁殖が確認されたが、Aランクは全国合わせて16サブメッシュと少ない。下北半島でのAランクは、標高が低いので注目される。それ以外はすべて主要な山地に分布し、亜高山帯の鳥であることを示している。繁殖地域の南限にあたる西日本では、四国の剣山で繁殖が確認されている他、各地にBランクが分布している。九州の調査結果では、囀りの記録が数例あるが、春の渡りで通過中の個体の可能性があり、繁殖については何とも言えない。しかし、国見岳(1,738m)では繁殖期を通して囀りが記録され、従来繁殖記録のない九州での初のAランクが、今後の調査に期待される。

 

Aランク

Bランク

Cランク

合 計

サブメッシュ数

16

255

33

304

構 成 比(%)

5.3

83.9

10.9

100.0

 

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