396 ヤ ブ サ メ

 全長105mmの小型のウグイス科の鳥。尾は短かい。体の上面は、オリーブ色を帯びた濃褐色で、黒褐色の過眼線とクリーム色の明瞭な眉斑を持つ。体の下面は汚白色である。日本には夏鳥として渡来する。平地から低山にかけての山林に生息し、特に下草の茂みなどを好み、姿を見せることはあまりない。落葉広葉樹林や下草の茂る林に多い。5〜7月、樹の根元や崖のくぼみなどに営巣する。巣は枯葉、根、蘚類を用い、産座にはリゾモルファー、獣毛などを敷く。白地に赤褐色の斑がある卵を5〜7個産卵する。餌はほとんどが動物質で、昆虫が主である。繁殖期、虫の声によく似たシシシシ……と聞こえる声で囀る。低山に普通の種である。

 今回の調査では、屋久島から北海道にかけての広い地域で記録された。非常に広範囲に分布し、林の鳥として、市街地、水田地帯、草原、亜高山〜高山帯などを除く地域にわたって分布が見られる。九州では、主に山地帯に分布している。島嶼部では、屋久島、種子島、五島列島、対馬の各島でBランクの記録があった。屋久島を除いては従来繁殖が知られていない為、今後の調査結果が注目される。四国では、分布にかたよりが見られ、高知県一帯の太平洋側では記録が非常に少ないのに対し、愛媛・香川・徳島県側では全域にわたって広く分布している。中でも、東部の徳島・香川県一帯ではAランクの記録が多く得られた。紀伊半島でも、四国と同様の傾向が見られ、和歌山県一帯の記録が少ない。本州では、関東平野の市街地や、水田地帯、高山帯等を除き広く記録されている。北海道では、釧路、根室地方、北部の日本海側及び石狩平野で記録が少ない。これは、これらの地域は草原が主体であり、本種の生息に適する薮のある林が少ないためと考えられる。

 本種の繁殖確認例は、Bランクの記録と比べると少ない。これは薮中に生息し営巣の確認がしにくいが、独特の噂りにより存在を容易に知ることができるためであろう。

 

Aランク

Bランク

Cランク

合 計

サブメッシュ数

68

1,213

112

1,393

構 成 比(%)

4.9

87.1

8.0

100.0

 

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