369 ア カ ヒ ゲ

 背は赤褐色で、のどから胸にかけて黒色であり、腹は白く、♀はのどから胸にかけて灰色と白のまだらをしたスズメ大の小型ツグミである。日本特産種であって分布は極めて局限され、男女群島、屋久島、種子島、奄美大島、徳之島、沖縄本島、慶良間列島、石垣島、西表島、与那国島のみで生息が確認されている。留鳥として生息するが、このうち男女群島は1969年に生息が初めて確認されたものであり、一方石垣島、与那国島、屋久島、種子島では生息個体数は著しく少ない。山地の渓谷沿いに発達するヘゴノキ、モクタチバナ、マサキ、アオキ、タブ、アコウやシダ類などからなる湿潤なうっそうと茂った亜熱帯性常緑広葉樹林に生息し、特に渓流沿いの薮に多い。屋久島では、200〜600mの森林地域でみられる(白井 1956)。渓谷の薮中の地上や低い樹枝の間を活発に行動しながら採餌し、繁殖期には顕著なテリトリーを持ち、♂は大きな声でさえずる。渓谷沿いに茂った樹林中のシイ、タブなど大木の樹洞、渓谷の崖のくぼみ、ヘゴの樹頂のくぼみなどに、落葉、ササの葉、蘚苔類を主材とした椀型の粗雑な巣をつくる。産卵期は4月下旬〜6月であって、奄美大島では5〜6月上旬であるという(山階 1941)。1腹の卵数は3〜5卵であり、4卵が多い。本種の生態はほとんど不明であり、詳しい調査が必要であろう。

 本調査では、琉球列島北部の2サブメッシュで繁殖が確認されたほか、奄美諸島、琉球列島中部において繁殖の可能性が示唆され、また生息の確認されたのは3サブメッシュであった。琉球列島北・中部ではかなり広い繁殖分布を示しているといえる。しかし、本種の生息環境が深い森林であって、かつハブの危険性もあることと、生息地に渡島の困難な島嶼もあり、調査が充分に行なえなかったことから、実際の繁殖分布よりは狭い繁殖分布を表現していると考えられる。なお、生息個体数は男女群島では30〜100羽であろうと推定されている(北九州野鳥の会 1970)。

 

Aランク

Bランク

Cランク

合 計

サブメッシュ数

2

14

3

19

構 成 比(%)

10.5

73.7

15.8

100.0

 

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