368 コ  マ  ド  リ

 全長約140mm。頭から背、尾にかけては赤褐色。顔から胸は鮮やかな橙褐色で腹部は白色。♂の胸部と腹部の境は黒色の帯があるが、♀はこの黒色がなく全体に淡色である。夏鳥として全国に渡来する。多くは山地の森林に生息する。森林内でも、ササや下草のよく茂った暗所を好む。冬期にも南日本に留まり越冬する個体があると言われている。

 6〜7月、森林中の崖のくぼみ、樹洞などに、枯葉などを使った椀形の巣を作り、コルリに似た緑青色の卵を3〜5個産卵する。繁殖期には、♂はよく響く声でヒンカララララ……と鳴くが、薮に生息し、姿はあまり見られない。

 今回の調査では、九州屋久島から北海道礼文島にかけ分布が確認された。記録の多くは繁殖の可能性ありで、確実な繁殖記録は全国で6サブメッシュであった。山地を中心に分布が認められた。九州では、中央の山地帯(標高1,500メートル前後)に分布し、四国でも、中央の四国山地を中心とした地域(標高1,500メートル前後)に分布している。中国地方では、記録が兵庫県のみであるが、これは標高1,500メートル以上の高い山が少いためと思われる。中部山岳地帯には広く分布する。北に行くに従い、標高の低い山地でも分布するようになり、東北北部ではごく低い山地でも記録されている。北海道は、主な山地帯に分布する他、釧路東部の海岸沿、及び稚内周辺の平地でも記録されている。これは海岸沿いに発達した森林に生息しているものである(釧路東部の海岸沿いの森林は、霧の発生により夏でも気温が低く、本種に適した生息環境となっているのであろう)。これらのことから、本種の分布は、標高(気温)の影響を受けるとともに、森林の分布にもよるものと推測される。コマドリの生息環境としては、深い森林で、しかもササなどの林床植物がある暗い場所を好むことが知られており、そのような森林の存在によってある程度分布が限られていると考えられる。今回の結果に現われていない記録としては、伊豆諸島に多数繁殖するものが挙げられる。本種は森林中に潜むため、姿を確認することは難かしいが、その特徴的な囀りによって容易に存在を知ることが出来る。記録中にAランクが少なくBランクが多いのも、このような性質によるものであろう。

 

Aランク

Bランク

Cランク

合 計

サブメッシュ数

6

272

17

295

構 成 比(%)

2.0

92.2

5.8

100.0

 

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