367 カ ヤ ク グ リ

 全長140mm。♂♀同色。頭から背にかけて赤褐色で、背には黒い縦斑がある。腹部は灰黒色。夏は、亜高山帯から高山帯にかけてのシラビソ・コメツガ林、ハイマツなどの灌木林で繁殖する。冬期には低地に漂行し、暗い林床や薮に生息する。6〜8月にかけて、ハイマツなどの灌木の枝上に細い枝やコケ、羽毛、枯葉など用いて巣を作り、青色の卵を普通3卵産む。繁殖期には、♂は灌木の樹上で、チリリリ……という細く美しい声で囀るため、繁殖期は姿を見つけやすいが、それ以外の時期は暗い林内、薮にいることが多く、目立たない鳥である。密生した森林より、開けた灌木林、岩場などを好む。生息環境が限られているため、個体数はそれほど多くないと思われる。単独〜数羽でいることが多く、冬期でも1羽でいることが多い。

 今回の調査では、四国、本州の中国地方北部、紀伊半島以北および北海道にかけて12サブメッシュにおいて繁殖確認のデータが得られた。特に、本州中部の山岳地帯では記録が多く、飛騨山脈・白山・富士山・上越周辺の山地を中心に記録されている。東北では、月山、吾妻山、岩手山などを中心とした山地で繁殖の可能性ありと記録された。北海道では、中部の大雪山から日高山脈にかけての一帯の他、斜里岳周辺で記録された。いずれの地域も、ほぼ標高1,000メートル以上の山地帯である。本種は、亜高山帯で繁殖する代表的な鳥類の一つであり、今回の調査結果も、日本の亜高山帯の分布とよく一致している。本種の繁殖分布は、これまで兵庫県氷ノ山を除いては本州中部以北の亜高山以上の山地とされていたが、今回の調査結果のうち、四国、鳥取県および奈良県での記録は、新たな知見として注目される。これは、四国や中国地方にも、カヤクグリの繁殖可能な亜高山の要素をもつ山地が存在することを示している。山地性、特に亜高山性の鳥類のように、繁殖環境が非常に限られ分布域の狭い種では、広範囲の調査を行うことによって新たな確認が得られるものと考えられる。

 

Aランク

Bランク

Cランク

合 計

サブメッシュ数

12

78

3

93

構 成 比(%)

12.9

83.9

3.2

100.0

 

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