365 イ ワ ヒ バ リ

 体はスズメより大きく、ムクドリよりは小さい。体形は大型ツグミ類に似る。あまり特徴のない鳥で、頭部・胸などは灰色で、翼・腰・尾などは褐色である。翼には、2本の白線があるがあまり目立たない。チュイ・チュイなどと地鳴きし、チョッ・チョッ・チョロリロリと張りのある声で囀る。高山の鳥として、日本ではライチョウと並ぶ代表種で、森林限界を過ぎた岩場やお花畑などに生息している。昆虫や、登山者の残飯なども食べ、人をほとんど恐れず平気ですぐ近くまで寄って来る。山小屋にゴミをあさりに来ることもある。6〜8月に岩場のすき間や、ハイマツの根本に枯草などで粗雑な巣を作り、青色の卵を3〜4個産卵する。本州中部から北部のハイマツ帯より上部で見られるが、2,000m未満の割合低い山でも、岩場などがあると生息している場合がある。冬期は、やや低い山の岩場に小群を作り移動し、ハギマシコなどと混群を作る場合もある。しかし、低山や平地まで漂行することはない。日本の他、ヨーロッパからアジアにかけての高山に点々と分布し、台湾の高山にもみられる。北海道には生息していないが、大雪山での観察例もある(成田 1979)。

 今回の調査の結果では、生息メッシュはすべて本州の中部から北部のみであった。北限は岩手県の早池峰山(1,914m)で、Bランク記録である。その他、蔵王山(1,841m)、月山(1,980m)などで記録されている。また日本海沿いの新潟・山形県境の山地にBランク記録があるが、この地域は最高部でせいぜい1,000mほどの山であり、興味深い。本州中部では、南北両アルプスと富士山とで繁殖が確認され、他に三国山脈・妙高・白山などで生息が認められた。しかし、中央アルプス・八ケ岳などのメッシュでは記録されなかった。繁殖分布の西限は、白山とされてきたが、今回の調査ではさらに西の福井県と岐阜県との県境付近の能郷白山(1,617m)などの山地で、Bランクが記録され、繁殖の可能性が示唆された。

 イワヒバリのような厳しい自然環境に生息する種類の現地調査は気象条件などに影響されやすいため、地元の調査者を中心とする観察記録などの資料の蓄積が、今後の調査結果の充実に大きな助けとなる。

 

Aランク

Bランク

Cランク

合 計

サブメッシュ数

9

37

1

47

構 成 比(%)

19.1

78.7

2.1

100.0

 

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