353 サンショウクイ

 サンショウクイ科で唯一の日本で繁殖する種である。体は細く、尾が長いスタイルの良い鳥で、一見セキレイ類に似るが、体を垂直にしており、地上にはほとんど降りない樹上性の鳥である。体はスズメより大きく、ほぼセキレイ大である。体色は、背面が灰色で腹部から喉にかけて白く、頭部は黒色である。尾も黒く、両脇は白い。♀や幼鳥では全体に淡色である。飛翔中は翼の白帯が目立つ。♂♀とも同色である。鳴き声は、ヒリリッ・ヒリヒリッなどと聞こえ、飛翔中によく鳴く。囀りはないようである。日本には本州以南に夏鳥として渡来し、山地に主に生息するが、平野部でも見られる。高い木のある広葉樹林に多く、高空をよく飛ぶ。木の枝先で昆虫やクモなどを捕えて主食としている。5〜7月頃、普通は地上10メートル以上の樹上に営巣する。巣は、外側にウメノキゴケなどをクモの糸ではりつけた浅いコップ状で、一見木のコブのように見える。そこに4〜5卵を産み抱卵する。春は4月末頃渡来するが、秋の渡りは早く、8月下旬から9月上旬にはすでに渡って行く群を見ることができる。なお沖縄諸島産の亜種は、背面などの色が非常に黒っぽく、冬期にも生息している。サンショウクイは、日本などの東北アジアで繁殖し、冬は東南アジアヘ渡る。渡りの時期には、市街地でも見られる。

 調査結果は、北海道を除いて本州から西表島までの各地で生息が確認された。分布の北限にあたる青森県でも繁殖が確認されている。関東から中部地方、日本海側の北陸、山陰地方にかけては生息メッシュが極めて多い。しかし、房総半島や能登半島などの半島部や、平野部には少なく、山地部に多くみられる傾向がある。九州では長崎県や鹿児島県西部などの九州西部で生息が記録されなかった。しかし、九州北部の繁殖確認は今回の調査の新たな知見といえよう。九州以北の佐渡を除く島嶼部では、従来通り全くその生息が認められなかった。九州より南の島嶼では、ほぼ連続して生息する島が続く。すなわち、種子島、屋久島、奄美大島、徳之島、沖縄本島、石垣島、西表島で生息が記録され、西表島では繁殖が確認されている。

 

Aランク

Bランク

Cランク

合 計

サブメッシュ数

50

50

472

572

構 成 比(%)

8.7

8.7

82.5

100.0

 

繁殖分布地図索引へ