348 ビ ン ズ イ

 ほぼスズメと同大がやや大きい。地色は上面が緑褐色で、下面は白い。腹部を除いてほぼ全身に黒褐色の縦斑があり、胸の縦斑はよく目立つ。足・尾ともにやや長めで、波状飛翔を行う。尾の両側は白い。地鳴きはツィー・ツィーと力強く、飛翔中もよく鳴く。囀りは、ビリリリリ・ツィッ・ツィッツィッ・ツィッなどと複雑で、ヒバリの囀りにやや似ている。木の枝などから空中に飛び上っての囀り飛翔をよく行う。

 タヒバリの仲間では、日本で繁殖する唯一の種で、本州や四国の標高の高い山や北海道の平地や山地で普通に繁殖し、明るい林や岩場・草地などに生息し、高山帯の森林限界を過ぎたお花畑などにも多い。冬期は、本州以南の平野部まで漂行し、小群をなして松林などで普通に見られる。5〜7月頃、草地や林縁の地上に枯草やコケなどで巣を作り、褐色などの小斑のある卵を4〜5個産卵する。昆虫類やクモなどを主食とし、地上で採食することが多い。地上や木の上などをよく歩き、他のセキレイ同様に尾を上下に動かす動作をよくする。日本の他、シベリア・モンゴル・千島などで繁殖し、冬期はアジア南部に渡る。

 今回の調査の結果、四国以北で繁殖が確認された。北海道では数多くのメッシュで生息が確認され、標高の高い山地から海岸沿いの平野部まで分布しているが、大雪・日高などの山地の東側では多くの生息メッシュが認められたのに、西側では少なかった。本州以南では生息メッシュがほぼ山岳地帯に限定されたが、緯度が低くなるに従って、標高の高い山地に生息する傾向が見られる。これは、メボソムシクイやキクイタダキなどの他の亜高山帯に生息する種類と同じ傾向である。青森・岩手県などでは海岸に近い地域でもBランクの記録が見られる。東北地方では岩手県にやや分布が集中し、関東から中部地方にかけての山地ではかなり生息メッシュが集中している。しかし、これら以外にも当然生息していると考えられるメッシュが空白になっている地域がかなりある。西日本になると生息するメッシュが極端に少くなり、紀伊半島の大台ケ原と鳥取の大山でそれぞれ繁殖の可能性ありが記録されたにすぎない。四国では中央の山岳地帯での繁殖が確認され、今後の調査でその分布域を拡大する余地を残している。九州および礼文・利尻両島を除く島嶼部では、繁殖は全く報告されていない。

 

Aランク

Bランク

Cランク

合 計

サブメッシュ数

44

262

44

350

構 成 比(%)

12.6

74.9

12.6

100.0

 

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