319 ア オ ゲ ラ

 上面は、頭部から背、肩羽、腰、上尾筒にかけては黄緑色、特に腰、上尾筒は黄色味が強い。♂では頭央の全面が赤色、♀では後頭部のみ赤色である。翼は、初列風切部は黒色で、白色の斑が横しま状にならんでいる。他は黄緑色。尾は、灰褐色でくさび型。また顔には、赤色と黒色の顎線があり、♀では小さく細い。下面は、胸から腹、脇、下腹、下尾筒は、淡黄緑をおびた灰色で、脇から下尾筒にかけての各羽には、黒色のV字型の斑が横しま状に多数ある。嘴は灰黒色で、下嘴の基部は黄色。脚は緑色をおびた灰色。♂♀は、頭部と顎線部以外はほぼ同色、同大。全長290mm。鳴き声は、キョッキョッという声で、繁殖期にはピョーピョーという口笛のような声で4音程鳴く。特にさえずりはなく、嘴で木の幹を連続的にたたくドラミングが、さえずりのかわりをする。

 本種は、留鳥として、本州から屋久島の山地の、おもに落葉広葉樹林や広葉樹の多い混交林に生息する。本州中部では、標高400m〜1,100mぐらいのブナ、ナラ、トチなどの落葉広葉樹やオオシラビソなどの針葉樹の森林に多い。通常、森林内に単独で行動することが多い。採餌はキツツキ類独特の方法で、堅い尾羽を利用し、樹幹に垂直に止まり、嘴で穴を開け、その中の昆虫類(アリ、ハチの幼虫、ゴミムシ、カメムシなど)を、長い舌で引き出し食べる。キツツキ類の中では、食性や行動が広く、比較的地上に降りることや、細い枝やつるに止まることが多く、地上では蟻塚などでアリを食べたり、枝先のハゼやウルシ、ガマズミなどの漿果を食べたりする。また、普通の鳥のような姿勢で、枝に止まるようなことも多い。営巣は、サクラやブナの広葉樹やマツなどの針葉樹の生木に、嘴を使って、直径4.5〜5.2cm、深さ29〜32cmぐらいの穴を掘り、巣とする。産卵期は、5〜6月ごろで、斑紋のない純白の卵を7〜8個産む。

 本種の繁殖分布は、本州から九州までで、北海道には生息していない。本州北部では、標高400〜1,100mぐらいの、ブナ、ナラ、トチなどの落葉広葉樹林や、オオシラビソなどの針葉樹林に生息している。中部以北での個体数は、キツツキ類の中では少ない方である。近畿以西でも同様の環境に生息し、四国、九州では山地の広葉樹林に普通に生息する。屋久島、種子島でも同じような環境に生息、繁殖しているが、個体数は多くない。今回、対馬でBランクの結果が得られたのは新しい知見で、今後の調査での繁殖確認が待たれる。

 

Aランク

Bランク

Cランク

合 計

サブメッシュ数

128

618

254

1,000

構 成 比(%)

12.8

61.8

25.4

100.0

 

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