263 コ ア ジ サ シ

 本州以南に夏鳥として渡来し、海岸、河口、川の中流等の乾いた河原、砂浜、埋立地等で繁殖する。アジサシ類中本州で繁殖する唯一の種類であり数も多い。春は4月中旬頃から渡来し、10月初旬頃までに渡去する。冬期はマレー諸島、ニューギニア、オーストラリア等に渡って越冬するが先島諸島の石垣島等では越冬するものがある。アジサシの仲間では小型である。夏羽では額から目の上までが白く、頭は黒い、下面及び尾は白く、尾は長く切れ込みも深い。嘴は燈黄色で先端は黒く、脚はオレンジ色である。♂♀同色。澄んだ高いキリッ、キリッ又はクリィ、クリィと聞こえる声で鳴き、水の上を細長い翼をゆっくりはばたいて軽々と飛び、餌をさがす。時々停空飛翔をしてから水面に垂直に急降下し、水中に飛び込んで小魚等をとる。干潟、杭等にも良くとまる。繁殖期になると2羽で追いかけあいをしたり、♀へ小魚のプレゼントをする習性がある。コロニー内に人、犬、他の野鳥が進入するとキイッ、キイッ、キイッ、キリ、キリ、キリリと鋭い声で鳴きたてて付近を飛び回り、頭上をめがけて急降下したり、フンをかける事もある。営巣場所は海岸、河口、河畔、湖畔、河州の砂地又は砂礫地に集団又は単独で営巣する。巣は地上にくぼみを作って直接産卵する場合と貝がら等を少し敷いたものとがある。卵の数は2〜3個で♂♀共に抱卵する。卵の色は青灰色で、黒褐色や暗紫色の斑点が散在する。産卵期は5月から7月ごろまでである。餌は動物食で主に小魚等を食べる。

 従来から本州以南で繁殖する事が知られていたが、今回の調査でも本州、四国、九州、沖縄諸島、先島諸島で繁殖が確認された。本州では関東以西に多く東北地方では少なく秋田県が繁殖の最北端となっている。青森県では従来から夏期少数が観察されているが、繁殖の確認はなく、今回の調査でも生息を確認したが、繁殖については何とも言えないCランクが1ケ所あった。長野県では従来から局地的に繁殖が確認されていたが、今回の調査では繁殖が確認されなかった。繁殖を確認した場所のほとんどが海岸近くとなっているが、内陸に入っている繁殖地としては関東では利根川上流付近、山形県では最上川上流付近があげられる。本種はかなり個体数が多い上にどこでも目に付く鳥なので、もっと繁殖している場所は多いものと予想していたが、結果はかなり少ないものとなった。

 

Aランク

Bランク

Cランク

合 計

サブメッシュ数

75

23

65

163

構 成 比(%)

46.0

14.1

39.9

100.0

 

繁殖分布地図索引へ