166 オ オ バ ン

 本種はバンより更に大きく、コガモより一回り大きいが、太っているので大きく見える。全身黒色で、嘴と額が真白である。幼鳥は褐色で下面は淡色である。バンよりも広い水面で生活し、泳いでいるのを見る場合が多い。又水にもぐって餌を探る場合もあり、飛び立つ時は水面を脚でけってバタバタしながら飛び立ち、かなりの高空を長距離飛ぶ事もある。その時は首を伸ばし、脚も伸ばして飛ぶが速度はあまり速くない。鳴声はクークー又はキュイッ、キュイッとくりかえして鳴く。アシ、マコモ、イ等の中に営巣し、巣は水面にあり、アシ、マコモ等の草類を高く積み上げて巣とするので、バンの巣より大きく、外から丸見えの場合が多い。産卵期は5〜7月にかけて6〜12個の卵を産む。卵は黄灰色で、暗褐色、灰青色の微小斑が全面にある。雛は全体的に黒く、頭上と頸の所は淡肉紅色である。餌は植物質が主で、エビモ、ヒルムシロ、草の若芽等を食べるが、動物質では昆虫類、小魚類等も食べる。

 バンの様にどこにでもいるわけでなく比較的限られた地域に生息している。本種は北海道、本州北部で繁殖し、千葉県新浜の丸浜養魚場が繁殖南限とされていたが、1967年に丸浜養魚場が埋立てられてからは生息場所を失ない、東京都が繁殖南限となっていた。今回の調査では更に南の大分県で繁殖が確認されたが、これは特記すべき事である。東北地方にはかなり繁殖しているものと考えられていたが、今回の調査ではむしろ北海道、東北地方に少なく関東地方に多かった。北海道では釧路と桧山でそれぞれ繁殖を確認したにとどまり、B、Cランクの記録も少なかった。東北地方では繁殖の確認が青森県、秋田県、宮城県で記録された他は、B、Cランクは北海道同様予想より少なかった。関東地方では千葉県、茨木県、東京都等で繁殖が確認された。Bランクの中でも神奈川県のものは、今後の調査が待たれる。以上を合計しても全国で34サブメッシュでしか繁殖確認されていない事になるが、冬期宮城県の伊豆沼で200羽程度の群れが観察されているので、もっと多くの繁殖地があっても良いものと思われる。

 

Aランク

Bランク

Cランク

合 計

サブメッシュ数

34

16

17

67

構 成 比(%)

50.7

23.9

25.4

100.0

 

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